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1億度超の人工太陽をつくる、記録更新した実験核融合炉の中を見学

ナショナル ジオグラフィック

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清潔な白い防護服に身を包み、白い靴と白い手袋もはめ、ナショナル ジオグラフィックの写真家でエクスプローラー(探求者)のパオロ・ベルゾーネ氏は横になって自分と同じほどの幅しかない開口部に体を滑り込ませた。まるで「星の中に入っていくようでした」と氏は言う。

少なくとも地球上でそれに一番近い体験をできるとすれば、この場所だろう。ベルゾーネ氏は、ドイツのグライフスバルトにあるマックス・プランクプラズマ物理学研究所に設置された実験核融合炉「ヴェンデルシュタイン7-X」の内部をメンテナンス中に独占的に見学し、撮影することを許された。めったに許可されない特別な措置だ。

ヴェンデルシュタイン7-Xが稼働すると、ベルゾーネ氏が立っているドーナツ状のチェンバー(反応容器)はプラズマという高温ガスで満たされる。ヴェンデルシュタイン7-Xでは、ここでプラズマをセ氏1億度以上に熱し、絶対零度に近い同マイナス269度まで冷却した超電導磁石を使って磁場で閉じ込める。

つまり、ヴェンデルシュタイン7-Xが稼働中であれば、ここは一時的に太陽系で最も高温で最も低温な場所になる。この両極端な温度が核融合を可能にする。

核融合とは水素のような軽い原子核どうしが高温高圧下で融合し、より重い原子核に変化することだ。そしてその過程で膨大なクリーンエネルギーが生まれる。太陽が熱と光を生み出しているのと同じ方法だ。

将来、核融合炉によって、ほぼ無限で排出物をほとんど出さないエネルギーが電力網に供給されるようになることが期待されている。

核融合炉にはいくつかの型がある。ヴェンデルシュタイン7-Xはステラレータ(ヘリカル型)と呼ばれるもので、核融合物理学者が取り組む問題に対して、核融合炉のいわば「形」の工夫で解決を目指している。

おもちゃの車とレーストラックを思い浮かべてほしいと、実験に携わる物理学者ジョセフィン・プロール氏は言う。車は核融合炉の中のプラズマ粒子だ。

核融合が起こるには2つのことが必要になる。まず高速で移動すること、そして軌道から外れないことだ(軌道を外れた場合、粒子は制御不能となり実験炉の壁面に衝突してしまう)。そこで「おもちゃのレーストラックと同じように、カーブには緩やかな傾斜をつけ、車がコースアウトしないようにする必要があるのです」と、プロール氏は言う。

フランスで進められているITERプロジェクトの巨大なトカマク型核融合実験炉では、プラズマに電流を発生させてカーブを実現している。

一方、ステラレータではチェンバーを取り囲む磁場コイルでこれを行う。この方式のおかげでヴェンデルシュタイン7-Xは最近、画期的な進歩を遂げた。トカマク型の記録を破り、超高温のプラズマを43秒間維持することに成功したのだ。

またステラレータの内部は1つの工学的作品ともいえる美しさがある。おおよそ8000枚のグラファイトのタイルと水冷式の鋼板がらせん状の壁を覆い、実験炉を過熱から守っている。

ベルゾーネ氏にとって実験炉の舞台裏の見学はスピリチュアルともいえる体験だった。

「大聖堂の地下聖堂に入ったようでした」とも氏は言う。めったに人が訪れることのない、崇高な思考に浸れる神聖な場所だ。「もしアインシュタインがここを訪れていたら涙を流していたでしょうね」

ヴェンデルシュタイン7-Xは実用的なレベルの核融合エネルギーを出力するには至っていない。これまで行われた実験は主にプラズマシステムの設計や安定性を検証するためのものだった。

しかしたとえ安定的な核融合反応を実現し、投入するエネルギーを上回る量のエネルギーを発生できるようになったとしても、技術的な問題は残る。プラズマ内のエネルギーをどう取り出し電力網に供給するかは、その1つだ(科学者たちはこれについても研究中だ)。

道のりは長いが、私たちが生きている間に核融合は必ず実現できるとプロール氏は楽観的だ。「この10年で画期的な進歩がありました。その勢いはさらに増していると思います」

文=Brian Resnick/写真=Paolo Verzone/訳=三好由美子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2026年1月20日公開)

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