時の琥珀 柊通信社Ⅰ
アキ
序
序
ふい、と深淵の端を切り取って
そんな存在だった。
それは、ビルディングの
「──動いている」
そっと、風に紛らわせ散らすように、つぶやく声。
「動いている。が、まだだ。まだこの街を壊すには──程遠い」
それは、若い男の姿をしていた。まだ二十歳に届かないであろう、少年の面影を残した美貌。深夜の風に吹かれ、漆黒の衣を
「壊れてしまえ──いや、壊してしまうには惜しい──ならばいっそ、今、壊してしまえ……」
守られた眠りを見つめる目は、闇を
「いや……」
ひょおう、風が鳴る。
しばし、それは沈黙する。
二重回しの外套がはためく。夜は深くなる。
やがて、それはふと息をつく。
「……いや」
ふと、闇の濃い気配が薄れる。
どれだけの沈黙が続いただろうか。風の音だけが、
「兄上……」
つぶやきは風に打ち消され、発した者の耳にすら届かなかった。
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