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高市首相と李大統領は脆弱な日韓関係をコントロールできるのか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
高市首相と李大統領(首相官邸HPと大統領室HPから筆者キャプチャー)

 マレーシアで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議には高市早苗首相と李在明(イ・ジェミョン)大統領が揃って出席し、滞在中に初対面するようだが、本格的な首脳会談は舞台を移し、韓国の古都、慶州で開かれるAPEC(アジア太平洋首脳会議)の場で行われる。

 高市早苗首相は1961年生まれの御年64歳である。李大統領は1964年生まれの61歳である。李大統領は高市首相よりも3つ年下である。李政権発足時のパートナーだった石破茂前首相も7歳年上だったことから李大統領は石破前首相同様に目上の高市首相にもそれなりの礼節を持って対応するものと予想されるが、問題は民心、即ち世論である。

 世論調査を見ると、今月21日に発足した高市政権の国内での支持率は最高で75.4%(産経新聞とFNNの合同調査)で、最低でも65%(毎日新聞)もある。2001年の小泉政権(78%)に次ぐ、高い支持率らしい。

 李在明政権の支持率も政権発足時の世論調査機関「リアルメーター」の調査(6月4-5日)では58.2%と、前任者の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領(52.7%)の時よりも約6ポイントも高かった。

 それが、4か月過ぎた現在の支持率は「リアルメーター」の調査(10月20-24日)では51.2%に落ち込んでいる。不動産価格の安定を目指した不動産政策の実効性が乏しいことや貸出規制を強化したことや公職者による未公開株投資疑惑が支持率低下の原因となっている。

 それでも政権発足中盤から40%前半に下降し、最後は20%台まで下落した尹錫悦前大統領に比べれば、51.2%は遥かに高い支持率である。

 高市首相の支持層は保守である。その逆に李大統領の支持層は進歩層である。日本的に例えるならば、高市首相の支持基盤は右寄りで、李政権の支持層は左寄りである。

 高市首相は政権発足後の記者会見で「日韓関係の重要性は一段と高まっている」として「日韓関係を未来志向的に安定的に発展させたい」と発言し、李大統領もまた、SNSで高市首相に「かつてないほど国際情勢の不確実性が高まる中、韓日関係の重要性も一段と増している」として「このような重要な時期に総理と共に両国間、そして両国国民の間で、未来志向の共生の協力を一層強化していくことを期待している」とのメッセージを伝えていた。

 日韓関係に関する基本姿勢は両首脳とも共通の思いで、双方とも岸田政権下で正常化した首脳同士が相互訪問する「シャトル外交」を継続する意向を表明しているが、果たして事は首脳の願望通りに進むのだろうか。

 残念なことにすでに暗雲が垂れ込めている。

 韓国の与野党は10月25日の「独島の日」に一斉に談話を発表し、「独島は我が領土」と連呼し、「竹島は国際法的にも歴史的に日本国領土」と主張する日本に反発していた。

 また、この日、市民団体などは李在明大統領が「共に民主党」代表の時に約束した「独島の日を法的記念日に指定する改正案」を早期に提出するよう求めていた。李大統領は与党代表だった2023年3月21日に領土の主権を強固にするために独島の持続可能な利用に関する法の一部改定案を発議していたのである。仮に李大統領が公約を果たせば、日本の反発は必至である。

 一方、高市首相は2月22日の「竹島の日」の島根県主催の行事に閣僚を出席させるべきとの持論の持ち主である。自民党総裁選直前にも「最近も顔色をうかがう必要はなく、政務官ではなく、閣僚を派遣すべき」と言い放っていたことは記憶に新しい。当然、これを実行すれば、韓国からの反発は避けられない。

 竹島を巡る両首脳の対応はこれまでと同様に「水と油」で100%溶け合わない。一体どうやって調和するのか?気がかりな点である。

 高市首相は安倍晋三元首相の言わば、「門下生」である。一方の李在明大統領は同じ弁護士出身の文在寅(ムン・ジェイン)元大統領のDNAを受け継いでいる。安倍元首相と文元大統領は「犬猿の仲」で、両人が在任中の日韓関係は「史上最悪の日韓関係」と言われている。

 トップ外交や政治判断で懸案や紛争を鎮静化できるほど日韓関係は強固ではない。まだまだ脆弱である。世論、民心の動向次第では火山のように噴火する恐れがある。

 そうした事態を予防するためにも両首脳は支持率アップのため、あるいは選挙戦略の一環として世論を煽り、相手国を刺激するような動きを自制しなければならない。

 ちなみに韓国は来年6月に全国地方自治体選挙がある。李政権の与党は前回、ソウル市と釜山市長選挙で敗北するなど完敗している。日本でも国民の信を問うため衆議院議員選挙があるかもしれない。自民党もまた、少数与党から脱却するため勝利を収めなければならない。

 高市ー李政権下の日韓関係は今年、ソフトランディングしたとしても来年、一つの山場を迎えるであろう。

 

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ありがとうございます。
ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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