国会審議・番外編

「殺人」「触らないで」と物騒な発言も続出 衆院予算委でアメとムチを使い分けた安倍首相の真意とは…

大島委員長が“被害”

枝野氏は終盤、「雇用数が増えていない」と政策論争に話題を切り替えたが、もはや首相はまともに応じる気はない。数分にわたり答弁を朗読した。

これに今度は枝野氏が切れた。

「政策論争を深めたいのに質問していないことをだらだらと話し、質問時間を減らそうとしているとしか思えない。いい加減にやめていただきたい」

さらに勢いづく与党のやじにブチ切れ、矛先を大島理森委員長に向けた。

「委員長、与党のやじが激しくないか。ご注意していただけないか」

大島氏は素っ気なく一言。「総理に質問してください」。

この対応が次なる火種となった。

民主党の細野豪志元幹事長の持ち時間では、質問を聞く政府側の態度に不満を感じた野党理事が、抗議の意を示そうと委員長席周辺に殺到した。この際、民主党筆頭理事の前原誠司元外相の手が大島氏に当たった。

「触らないで。 静かにしなさい!」

大島氏は鬼の形相でまくし立て、険悪な空気が第1委員室に広がった。

午後は政策論争に

民主党の質問は午前で終了。午後になり、維新の党など他の野党の持ち時間になると、委員会の雰囲気は一変した。

首相は一転して穏やかな表情となり、答弁も別人のように丁寧になった。

維新の党の松野頼久国会議員団会長が、国会議員の文書通信交通滞在費の使途公開を義務付ける法案をアピールすると、首相は「御党の身を切る改革に向けての努力に対して敬意を表する次第だ」と持ち上げた。

続いて次世代の党の石原慎太郎最高顧問が憲法前文の助詞のおかしさを指摘すると、賛同の意をこう表した。

「文学者である石原先生らしい指摘だ。私も中学生だったか、国語の授業で丸暗記した。当時は先生から美しい文章だといわれたが、子供ながらにも何となく腹が立ったことを思い出している…」

民主党と他の野党で露骨にアメとムチを使い分けた首相。民主党には第1次安倍政権のころから散々煮え湯を飲まされただけに感情的になった面もあるだろうが、その裏にはこんな計算もあるようだ。

首相がもっとも恐れるのは、民主党と他の野党が共闘することだ。特に民主党と維新は次期衆院選での選挙協力に向けて協議を進めており、これが深化すれば新党構想につながりかねない。民主党を敵意むき出しで攻撃する一方で、他の野党に秋波を送るのは「常に野党を分断しておきたい」という思いの表れだといえる。

ということは、念頭にあるのは衆院解散・総選挙なのか。首相は維新の木下智彦氏の質問に「(衆院解散は)全く考えていない」と断言したが、秋の深まりとともに永田町にはかすかに解散風が吹き始めている。

ならばなおさら、国会での誹謗中傷合戦は控えた方がよい。アベノミクス効果はじわじわと勢いを失っている。そんな中で国民生活に直結する真面目な政策論議が影を潜め、無益な泥仕合を繰り広げていては、「政治不信」という荒波が突如として与野党に襲いかかることも十分にあり得るからだ。(政治部 内藤慎二)

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