りんごの形のアップルパイ
エミヤママとアステリオスとジャックとナーサリーがほのぼのアップルパイを食べる話、考えていた話がジャンヌサンタでまさにの形で実装されたので一気に書き上げましたw/エミヤ総愛され風味/タグなど本当にありがとうございます!!なにこれかわいいは密かな目標だったのでとても嬉しいです…!!
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夕食が終わり、レイシフトで大量に採れたりんごをアップルパイにしていたエミヤは、作り始めてからパイを入れて数回目のオーブンを覗いて焼き上がりを確認する。オーブンを開けて天板を取り出してみると、その上に乗ったずっしりと重いパイの上々の出来に小さく微笑みバットの上に置く。
これで仕込んだ残りのパイは終わった、後はブーディカが切り分けてこれから遅れて夕食を取る者達へ振る舞うだろう。
エプロンを畳んだエミヤはもう1つ稼働していたオーブンの方へ顔を向け、タイマーが後少しなのを見て皿を用意した。
「3人とも、待たせたな」
カバーを被せた皿を持ってエミヤが向かった先は、食堂からほど近いフリースペースの部屋。そこには事前に呼び出していたジャック・ザ・リッパー、ナーサリー・ライム、そしてアステリオスがカードゲームをしながら待っていた。
「大丈夫だよ、おかあさん」
「どうしたの?」
「う、てつだう」
入ってきたエミヤに顔を上げ、わらわらと寄ってくる3人は夕食の時エミヤから直接ここで待っていてくれと頼まれた面々だった。デザートのアップルパイに後ろ髪引かれながら素直に待っていてくれた3人に微笑んだエミヤは、ジャックとナーサリーに席へ腰掛けるよう促し、アステリオスがもう片方の手に持っていたティーセットを載せた盆を持ってくれたことに小さくありがとうと言う。
席についたところでそれぞれのカップに紅茶を入れたエミヤは、何があるんだろうというそわそわわくわくとした空気に笑みを浮かべ、皿につけたカバーを取った。
「みんなには内緒だぞ?」
人差し指を唇に当ていたずらっぽく囁いたエミヤの持ってきた皿の上には、パイで出来たりんごが乗っている。
一瞬見慣れない姿にきょとんとした3人だが、その形にすぐ正体を見抜くとパァっと顔を輝かせて思わず椅子から身を乗り出した。
それはパイ生地をりんごにつけて焼いた通常とは異なる形のアップルパイ、葉っぱや茎もパイで作られておりなんとも夢をそそるとても可愛らしい形をしている。
「わぁぁぁ!!!りんごだ!!りんごの形をしたアップルパイだ!」
「とってもかわいいわ!」
「すごい!わぁ!!」
3人からの惜しみない喜びの声に苦労が報われ、作ってよかったという喜びにじん…と震えたエミヤは、それぞれの前へ皿を置くと笑顔を見せた。
「3人だけの特別仕様だ。仲良く食べるんだぞ」
「はーい!!」
「ジャック!早く切り分けましょ!」
「うん!解体するよ!」
椅子の上で飛び跳ねんばかりのジャックとナーサリーがわくわくとアップルパイにナイフを入れ、中から上がる甘酸っぱい香りの湯気にさらに歓声を上げる。はしゃぐ2人に和んでいると、肩をつんつんと指でつつかれる感触にエミヤは顔を上げる。
それは立派な体格をほこるエミヤよりもさらに大きなアステリオス、いっしょになってアップルパイに喜んでいたはずの彼がもじもじと体を縮めていた。
「エミヤ…」
「ん?どうした、アステリオス」
雄々しい体に反して内面は幼いアステリオスが、ためらいがちに口を開くのをエミヤは急かさず優しい瞳で待つ。
「あの…ぼく、も?」
「そうだよ、君も一緒に食べよう」
「でも、ぼく、たべたら、ふたりの、なくなっちゃう…」
言わんとすることは想像がついていたエミヤは、不器用で心優しいアステリオスの肩を優しく撫でると賑やかにアップルパイを切り分けている2人の方へ背中を押す。
「それが分け合うということだ。足りなければいくらでも作ってあげるから君も参加しなさい」
「!わかった!」
エミヤに元気づけられ大きな体を堪えていた喜びでわくわくと揺らす後ろ姿に頬が緩む、アステリオスを待っていた2人が切り分けたパイを差し出すと、その大きさにアステリオスはきょんと目を丸くさせた。
それはりんごの半分で、残りを2等分したジャックとナーサリーより明らかに大きなパイへきょろきょろと視線を往復させる。
「ぼくのぶん、おっきい?」
「アステリオスおっきいもん、わたしたちといっしょだとふこーへーでしょ?」
「でも、でも…」
「いっしょに食べましょう?アステリオス!」
戸惑いながらおろおろとするアステリオスに当たり前というようにジャックが胸を張る。さらにナーサリーが手を取ってにっこりと笑えば、もうアステリオスを躊躇わせるものは無くなり、代わりに頬を紅潮させて勢いよく頷いた。
「うん!」
そのやり取りを見ていたエミヤは促さずともよかったかと、自分のお節介を笑うと邪魔にならないようにさりげなくテーブルの上をを片付け始めた。
3人で仲良くアップルパイにフォークを入れて中のほわほわにとろけつつ瑞々しいりんごの甘酸っぱさとパイのサクサクとした食感に、きゃあきゃあとはしゃぐ姿へついニコニコと笑ってしまうエミヤは、簡単な整理整頓を終えると1歩離れた席に腰掛けてその光景を眺めていた。
すると半分を味わい終わったアステリオスがエミヤの方に顔を向けると、慣れないフォークに苦労しながら一口分のアップルパイを刺すと不意にエミヤへ差し出す。
「エミヤ、も」
「私か?いや、私のことは気にしなくていい。好きに食べなさい」
「ふこーへー!わけ、あう、でしょ?」
「む…では、1口だけ…」
驚きながらエミヤは手を振って断ろうとしたが、すかさず先ほど教えた言葉を復唱されてはぐぅの音も出ない。
仕方なく1口だけ拝借しようと身を乗り出して口を開けようとしたエミヤは、目の前に2つのアップルパイを載せたフォークが増えたことで額を押さえる。
それはやり取りに気づいたジャックとナーサリーで、椅子に膝をついて体を乗り出した2人は参戦したフォークを振って声を上げた。
「あー!ずるい!アステリオス!!わたしもおかあさんにあげる!」
「ずるいわ!ずるいわ!私もする!」
「う、ずる、い…?でも!ぼく!ぼくがやったんだよ!」
ずるいずるい!と言われて一瞬面食らったアステリオスも負けじと言い返して、一気にテーブルはわぁわぁと騒がしくなってしまった。
本当に自分には構わずただ3人に喜んでもらうはずだったエミヤは思わぬ方向に転んでいくテーブルへ頭を押さえ、どんどん言い合いがヒートアップしていくのを手をかざして止めた。
「こらこら、ケンカはいけない。別に誰からでもいいのだが…では公正にじゃんけんはどうかな?」
ほんの思いつきで提案してみたら、途端に3人はフォークを置いてウォーミングアップに手を振ってから握った拳を出す。
ぴりっと張り詰めた空気はまさに戦いのそれで、エミヤへアップルパイをあげる役目をかけた3人の意気込みにエミヤは思わず口の端をひくっと上げる。
「うらみっこなしだよ!」
「ええ!」
「じゃん、けん!」
アステリオスが切った火蓋に3人がそれぞれの手を出し、そして…
「負けちゃった…」
「う…」
結果、ジャックとアステリオスが負けてナーサリーの1人勝ちで終わった。なんとなく覚えのある光景に苦笑してしまうエミヤは勝者のナーサリーの方へ体を向け、さっさと終わらせてしまおうとしたが。
「おじ様…」
見事勝利を得たナーサリーは、他の2人のへこみように眉を下げて悲しい顔をしている。困ったように見上げられたエミヤは小さくため息をつくと、安心させるようにナーサリーの頭を撫でて沈んだ2人に聞こえるようわざとらしく口を開いた。
「…私もお腹が減ってしまったな。やっぱりみんなから1口ずつもらおうとしよう」
途端にガバッと顔を上げた2人に微笑みかけるとエミヤは、すぐに両手をそれぞれジャックとナーサリーに取られて椅子に座らされた。
「いっしょに食べよう!おかあさんは私の隣ね!」
「はいはい」
「私も隣!」
「いいよ」
「あ、ぼくは…エミヤ、ひざのうえ、のる?」
「…お邪魔しようかな」
1歩遅れたアステリオスがおろおろとした後、おずおずと手を広げる姿にふっと表情を緩めたエミヤが手招きする。
後ろにアステリオス、隣にジャックとナーサリーに固められたエミヤはさっきよりも賑やかにアップルパイをつつくようになった3人に、しかたないなと笑うのであった。
しあわせの極地