大学3年から4年になる春休みで普通部時代からの仲良い同級生と旅行に行ったんだよ
そのうちの一人が鳥井家の御曹司でさ、アメリカの大学に留学に行くからその壮行会としてサントリーが持ってる保養施設にね
周りが「この人はうちの町の工務店の親方だからさ!」みたいな感じで持ち上げる
本人もすごい苦労話をする訳よ
それを俺らは「へーすごいですね!大変でしたね!」って聞いてた
気分良くしたおじさんが語り出すわけ
「『辛抱』は辛いを抱く!『辛』に1本棒を足せば『幸』になる。幸せになるには辛抱しなきゃな!」とか「人生には困難がいっぱいあるだろ?それを乗り越えていくためにご先祖様たちは『有り難う』って言葉を作ったんだ!」とか言うわけよ
俺らはもう失笑よ
だってそれ、少年院で社会のクズ相手に講演して小銭稼ぎしてる芸人がよく言ってるやつじゃんって
周りのおじさんとか居酒屋のマスターと女将さんまで「〇〇ちゃんは違うねー!」「〇〇ちゃんの言うことは深いねー!」って煽てる
このおじさんってどんなもんなんだろうと思ってさ
ちょうど店のテレビでドミニカのニュースが流れてたから俺はおじさんに指差して言ったわけよ
そしたらおじさん笑いながら言うわけよ
ああそうか
この人はドミニカがカリブ海にあって、カリブ海がどこにあって、なぜカリブ海の島に黒人がいるのかということを理解してないんだ
俺はもうなんか悲しくなっちゃった
この人たちはこんなに美味しいものを食べて育ってるけど、この世界のことを何も知らずに自分たちが馬鹿にされてることも死ぬんだなって
あのおじさんたちは今も元気にしてるだろうか