アーチャーエミヤが私のママになりました
カルデアでエンジニアとして働いていたら急に職場が崩壊(物理)した。
崩壊した世界、急激に減少した人員、急増したやたら難しい仕事、消えない目の下のクマ・・・
お日様に干したふかふかのお布団をください。
絶対ママにしたい社畜VS困惑するエミヤ・・・ファイッ
※この主人公はまだ睡眠が足りていません。だって4徹だもの。
※多分エミヤさんもちょっと疲れてる。
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「ん・・・」
ふかふかの枕とお布団がぬくい。
久しぶりのぬくもりと安心感で頭がふわふわして何も考えられない。
ぐりぐりと頭を枕に擦り付けてそのふかふかの感触を堪能する。ふかふかの綿最高・・・
「こらこら、そんなに擦り付けると髪の毛が絡まるぞ。」
低い声とともに誰かが頬に掛かった髪の毛を優しく払ってくれた感触がしてゆっくりと意識が浮上する。
だんだんと覚醒してきた頭に伴って嗅覚が何かいい匂いを捉える。
お出汁のいい匂いがする・・・なんだか急に空腹感も復活してきた。
ごはん、いつ食べたのが最後だっけ・・・?
「・・・おなか、すいた」
「お、目が覚めたな。おはよう。ゆっくり休めたか?」
「え・・・?」
そう、低い声が聞こえるって私さっき思ってたなあ!?え、だれだれだれだれ!?
霞掛かった起き抜けの頭で現状を把握するのはなかなか難しい。
声が聞こえた先に目を向けるとそこには赤い服を着た褐色の肌のイケメンがいた。
髪の毛は白いが、加齢によるアレではなく地毛であろうことはなんとなく分かる。
そしてその唇からはやたらいい声が発せられる。何か話しかけてきた気がするがいい声すぎてちょっともうよく理解できません。
「おーい。聞こえてるか?・・・もしかしてまだ寝てるのか?」
「あ、あの、どちらさ、まで・・・?」
私の口から思いのほかかっすかすの声が出た。
「よかった起きてたか。結構寝てたしとりあえず水飲もうな。」
「あ、ありがとうございます。」
流れるように差し出されたコップを手に取りそのまま口をつける。冷たくておいしい。
そのまま飲み干したコップはスッと自然な動作で彼の手に渡りサイドテーブルに置かれた。
えっ、今いつ私の手からコップが消えたの・・・
「俺はエミヤだ。よろしくな、シン。」
「えっ、あ、よろしくおねがいしま・・・す?なぜその呼び名を・・・?」
「ああ、皆がそう呼んでいたから使わせてもらったがまずかったか?」
「い、いえそれで大丈夫です!」
イケメンが眉を下げて困り顔してはいけないと思うの。
「あの、エミヤさん?は何故ここに?」
と聞いた瞬間私のお腹がぐうと情けない音を立てた。
エミヤさんはふっと穏やかに笑うと私にお椀を差し出した。
ひえ、まぶしい。
「そうだな、とりあえずここに温かいおかゆがあるんだが、冷めないうちにどうだ?」
「・・・いただきます。」
エミヤさんから渡されたおかゆをもぐもぐと咀嚼する。
鰹と昆布の合わせ出汁がとてもいい匂いを立てている。味はシンプルに塩だけで整えられているみたい。
多分ここ数日まともに食事をとっていない私の胃を考えて作ってくれたみたいだ。
昔風邪を引いたときにお母さんが作ってくれたおかゆも塩味のシンプルなやつだったな・・・
優しさが染みて涙出そう、ありがとう作ってくれた人・・・
そんな感じでおかゆの作者に感謝しながらもぐもぐしている私だが、何故かにこやかなエミヤさんにめちゃくちゃ見られている。それも無言で。
「あ、あのエミヤさん?私何か付いてますか・・・?」
「ん?」
「さっきからずっと見られているのでちょっと食べにくい、です。」
まっすぐに目を合わせてくるエミヤさんからちょっとだけ目線をずらす。
コミュ障気味なんで目合わせられると気まずいよね。
「ああ、悪いな。あまりにおいしそうに食べてくれるからつい、な。」
「その点については間違いないですね。このおかゆすごく優しい味がしてお腹に染みるっていうか、お母さんの味っていうか・・・」
「お母さんの味?」
「はい。昔風邪を引いたときにお母さんが作ってくれたおかゆが似たような味で、なんかこう、じんわりしました。」
感想を言いながらもう一口ぱくつく。
やっぱりおいしいよなあ。このおかゆ作った人絶対ママだわ。子供3人くらいいそう。
「とてもおいしいので、ぜひ作ってくれた人にお礼が言いたいんですがエミヤさん分かります?」
「・・・あー、うん、なんだ、その、それ作ったの俺なんだよなあ」
「え、エミヤさんがママ・・・」
面と向かって褒められると恥ずかしいなあって顔を押さえているエミヤさんは実にかわいらしいが、それ以上に3人の子持ちだと思ってたママがエミヤさんだった衝撃の方が大きい。え?ま?
「ママってなあ。まあ喜んでくれて何よりだな。お、全部食べ終わったか?」
お椀とスプーンがカツンと立てた音に気づいたのかエミヤさんはまたもやスッと私の手からお椀とスプーンをさらっていく。
い、いつの間に?あと放心中の頭でももぐもぐとおかゆを食べてた私すごい。いやおかゆがすごい。
「あの、エミヤさん、ごちそうさまでした。」
「ああ、きれいに食べてくれてありがとう。」
そう言いながらポンポンと頭をなでる。
エミヤさんは大変機嫌がよさそうだ。ママって言っちゃったけど気にしてないみたいでよかった。
ポンポンと頭を撫でていた手がそっと肩を押してベッドに横になるように促してくる。
そしてそのまま布団を肩まで掛けられた。
え、やっぱりママじゃん・・・
「そういえばさっき何で俺がここにいるのかって聞いてたよな?」
「あ、はい。」
「シンはこの部屋で目が覚める前の記憶のどこまで覚えてる?」
「そうですね・・・4徹目でロマニ・アーキマン代理司令官が仕事休めって言ってきて、その後、基本的なシステムの復旧作業を1時間でなんとか終えて、誰かの声が聞こえて・・・その後の記憶は、って・・・ん?」
そうだ、あのイケボってもしかして。
「もしかして、エンジニアルームに来たのってエミヤさん・・・?」
「もしかしてと思ったがやっぱり気づいてなかったか。」
「エンジニアルームにからこの部屋に運んでくれたり、そのまま起きるまで待っててくれたり・・・?」
「正解。おかゆを作るのに少し席を外したが、起きたときに説明する奴がいた方がいいかと思ってな。」
「うわ、え、申し訳ない・・・」
「いや、ちょうどよかったよ。俺みたいなサーヴァントにやれる仕事が無くて暇だったしな。」
え、サーヴァント?サーヴァントって言ったこの人??
「興味の無いことには適当」と先輩に言われたこの私でもその言葉の意味くらい知ってるぞ。
英霊でしょ???なんかすごい人な訳だよね???
「初対面の英霊にお世話させるとかどこに謝ったらいいのか分からない・・・!」
「あーそれなんだがな。シンと俺今日が初対面じゃないぞ。」
「え?は・・・?」
「そうだな、2日前、いやシンが1日寝てたから3日前か?そこから毎日会ってるんだよなあ。」
「うえ?1日寝て?いや、え?」
1日寝てたことも驚きだが、え?2徹目くらいから会ってるってこと?
「エンジニアルームで飯も食わずにモニターに向かってるゾンビが2体いるって泣きつかれてな。ちょうど暇だったし簡単に食べれるやつ作って持っていってたんだよ。」
「あ、あのおにぎりって夢じゃなかったんだ・・・」
「夢だと思ってたってお前な・・・ちなみにデスクに置いておいたら全然食べなかったから俺が口元まで持って食べさせてたの気づいて・・・」
「ふぁっ!?!?」
「なかったか・・・手がずっとキーボード叩いてたし目線もモニターだからまさかと思ってたが、まあ気にするなよ。」
「ほんとにすみませんでした!!!!」
誰か私に穴掘ってくれ・・・埋まりたい。すぐ埋まりたい。
いや待て、私エミヤさんにおはようからおやすみまでお世話されてたってこと?
寝かしつけられて?ご飯食べさせてもらって?おはようまで待ってもらって?で?現に今も寝かしつけられそうになってる訳ですけど?
私に対するムーブがもはやママなんだわ。それも3歳児くらいに対するやつな。
「もうこれはエミヤさん、私のママになるしかないですよ。」
「え?」
「今日からエミヤさんは私のママ。」
「ちょっと落ち着こうか?」
「エミヤさんがママみが強いのが悪い。私悪くない。今日からママって呼ぶ。」
そう言って布団を頭まで引き上げる。言ったもん勝ちだと思うので。
エミヤママの深いため息が布団越しに聞こえてきた。
そのあとに優しく布団をぽんぽんと叩く音がする。
「分かった分かった。とりあえずシンはまだ睡眠が必要なことが分かった。早く寝なさい。」
「ママ・・・」
「あーもうそれでいいから早く寝ろよ。」
「おかゆとおにぎり、おいしかったからまた作ってね、ママ。」
ちらっと布団から見上げる。
エミヤママはおかゆの感想を言ったときみたいにまた顔を覆って俯いている。
ママって呼ばれるの嫌すぎて泣いてる・・・?
「・・・起きたらまた作ってやるから早く寝ろ。」
布団の上から目を押さえつけられた。解せぬ。
ベッドからはすーすーと寝息が聞こえてくる。
「はあ・・・ずいぶん大きな子供ができたもんだな。」
エンジニアルームでおにぎりを食べさせてたときからなんとなく世話を焼いてやりたくなる奴だなとは思ってたけどまさか母性(?)が刺激されるとは・・・
ママって呼ばれるのも意外と嫌だと思っていない自分がいることが恐ろしい。母性ってなんだ母性って。
「・・・エンジニアルームで抱えたときに聞こえたのやっぱり「ママ」で合ってたのか。」
対応がエミヤというより士郎やんけ!