カルデアのママこと英霊エミヤの朝は早い
前日の夜に仕込んだ物を調理し、次々やってくる腹ペコが集まる食堂を仕切ることから始まる
選べる3つの定食なのだが、隈の酷い職員や貧血気味な者などを見付けると、それとなく小鉢やフルーツなどおまけを付け足して職員の栄養管理までしていた
「エミヤさん!おはよー」
「おはようマスター、マシュ。今日は何にするかね?レイシフトに行くから唐揚げ定食にするか?」
「流っ石ー分かってる!」
「マシュ、君はどうする?」
「私も唐揚げ定食をお願いします」
「了解した」
注文を受け付けると既に予め火を通していた唐揚げを再度高温の油に入れ暖め直しと衣をカラッと仕上げ、その合間にサラダ、ひじきの煮物、味噌汁、漬物、白米と盆に乗せ仕上げにカラッと揚がった唐揚げをのせて完成だ
「お待たせした。これはサービスだ。怪我をせずに帰って来るんだぞ」
そう言うと真っ赤に熟れたイチゴを3つ二人の盆にのせフッと目元を和らげた
「ありがとうママ!!」
「はいはい、全く未だにこんなむくつけき男をママと呼ぶ者達の気が知れない」
「ママはママでママだからママなの!何かエミヤさんって男の人って見れば分かるんだけど、性別を感じないというか、、、ママ以外にならないんだよね」
「何だねその意味の分からない持論は」
「私だけじゃないですー!ね、マシュ」
「え!あ、あの、私は、、その」
「マスター、マシュを困らせるな。ほら、遅刻するぞ、早く席について食べたまえ」
朝のキッチンを纏めると、次は洗濯である
英霊にそんなこと!と恐縮する職員もいたが、今ではすっかりエミヤの仕事の一部となっている
先ずは脱衣場にあるタオル類や出されたシーツを洗濯にかけ、次は言っても出さない見知った英霊の自室に入り込みシーツを取り替えまた洗濯
他にも職員の衣服等も洗濯をし、出来上がったものから畳んでもとの位置に戻していく
「ドクター君の分だ」
「いつもすみません」
「何、今日はレイシフトもなく家事日和だからな」
「エミヤさんは仕事人間、仕事英霊?ですよねぇ」
「じっとしているのが性に合わないだけだがな。気にしてくれなくていい」
アイロンまでキチンとかけられた白衣等を配り歩き、それが終わると掃除の時間だ
今日は隅々まで大浴場を洗う予定となっている
シャワー室は個々の部屋に備え付けられているが、ここカルデアには大浴場もある
使用するのは日本由来のサーヴァントや、マスター、それにサーヴァントと共に入るのはと恐縮しながらも職員も使用し憩いの場となっている
先ずは男性浴場だ
清掃中の札を立てて洗面台、鏡、椅子や桶を磨いてから床やお湯を抜いた浴槽を洗っていく
洗い終わるとお湯を溜め直しながら脱衣場を掃除していく
エミヤの手際に掛かれば一人でもさほどの時間は掛からない
テキパキと男性浴場を終わらせると、次は女性浴場だ
きっとレイシフトで疲れたマスターが入りたがるだろうから、それまでには終わらせたいところである
同じ様に清掃中の立て札を立てるとお湯を抜きながら洗面台等を磨き、お湯を入れながら脱衣場の掃除に向かう
「ふむ、間に合いそうだな」
満足げに口角を上げると籠を一つひとつ丁寧に素早く拭き、床を磨き、マットを取り替えてから浴室に戻ると、ちょうど良くお湯が溜まっていた
そこでひとつ息を吐いた時だった
ドタバタと元気のいい足音と声が聞こえた
「ジャック!まだ清掃中って出てるから!!」
「大丈夫だよお母さん。アステリオスも早く綺麗にしないと」
「ぼ、ぼく一人でも、、お風呂、入れる」
「何をしているのだね、マスター、ジャック、アステリオス」
賑やかな脱衣場に向かうと、泥だらけのアステリオスを脱がそうとする普段から布面積の少ないジャックがいた
そしてそこ後ろにはマスターまでもが泥だらけで立っていた
「何故二人してそんな泥だらけなのだね、、、」
「ママ!!あのね、お母さんを抱っこしてたアステリオスがお母さんと一緒に泥沼で転んだの」
「成る程。お湯はもう溜まっているから早く洗い流すといい。アステリオスは男の子だ、一緒には入れないから隣に行こう」
「なんで駄目なの?あ、ママも一緒にお風呂入ろう!ママも汗かいてるよ」
無邪気なジャックの発言に米神を無意識に押さえながら、マスターを見ればいつの間にか服を脱ぎ出していた
「マスター?!」
「もういいじゃない。エミヤさんも入ってアステリオス洗って上げて。私のせいで泥だらけなっちゃったんだけど、私だと上手く髪の毛洗って上げる自信ないから」
「いや、私は、、、」
「ちゃんとタオルくらいは巻いて入るからお願い。それにエミヤさんなら大丈夫だし」
「何が大丈夫なのかじっくり問い質したいところだが、こらジャック、アステリオスは一人でも服を脱げるからせめてタオルを巻きなさい」
「なんで?お湯にタオル浸けたら駄目なんでしょ?」
エミヤの言葉にパパッと自分の服を脱ぐと、全裸で浴室に駆け込んでいくジャック
そしてその後に続くタオルを巻いたマスター
エミヤの心は既に無の境地
異性としてみられていない
いや、別に意識されたい訳でも無いがこれはどうなのだろうか
普段からママとは呼ばれているが、此れが常になってしまえば他のサーヴァントにも悪影響が、、、と脳内をグルグルさせていると、アステリオスのおずおずとした声がかかった
「ぼ、ぼく隣に行くね」
「いや、此処で隣に行ったら行ったで面倒だ。アステリオスはこれを着るといい」
即座に投影した水着をアステリオスに渡し、準備が整うのをみてから浴室をノックした
「入っても大丈夫かね?」
「どーぞー」
「ママ遅いー」
それぞれが洗面台で頭を洗っていたので、少し離れたところにアステリオスを座らせその白い髪に付いた泥を丁寧に洗い流していく
そしてシャンプーでもくもくと泡立てていると、手を引かれた
「ん?」
「なんでママは服着たままなの?」
「私はアステリオスを洗ったら出ていくから、後はゆっくりするといい」
「なんでママお風呂入らないの?ママと入りたい」
純真ななんで攻撃に再度マスターに目を向けると、完全にだらけきった体制で目をつむっている
「いーじゃん、エミヤさんはママなんだから今更気にしなくても。私も気にしないし」
「、、、地獄に堕ちろマスター」
思わず出た台詞に自分で溜め息を吐きジャックに向き合った
「分かった、アステリオスの髪を流したら着替えてくる」
「やったー!ママとお風呂♪」
「だからジャックは先にお湯に浸かりなさい。体が冷えるぞ」
「はーい!」
元気よく変事をしてお湯に浸かったのを確認してから、手早くアステリオスの髪を流し、トリートメントまで施してから離れる
「アステリオスも冷えないように暖まってなさい」
「うん、ありがとう、ママ」
そして一度脱衣場に戻ると投影した水着に着替えて浴室に戻るはめになった