ミルクの魅力を発信する動きが活発になっている。ミルクを〝主役〟に据えたカフェができたり、関連の書籍が出版されたり、NPO法人が立ち上がったり。酪農家を応援しようという思いも込められている。そんなミルクの奥深さに迫った。
ミルクを前面に押し出したカフェが昨年12月、東京・吉祥寺にオープンした。「Shiroノmono(しろのもの)」という店名が、ミルクの色を想起させる。
運営するのはオハヨー乳業(岡山市)で、主に岡山県産のミルクを提供する。豆乳やアーモンドミルクなど植物性のものは使わない。店長の中島悠介さん(40)は「ミルクを味わうというのがコンセプトなので、コーヒーもミルクの引き立て役となります。ミルクの質感を楽しんでもらいたいんです」と思いを語る。
看板メニューは「しろぶりゅー」。冷たいミルクに焙煎(ばいせん)したコーヒー豆を漬け込み、一晩寝かせて作るドリンクだ。ベースのミルクは、なめらかな口当たりの爽やかなミルクか、やや乳脂肪分が高めのミルクの2種類から選択できる。
さっそく乳脂肪分が高めのミルクで作られた、しろぶりゅーを飲むと、とろりとした口当たりを実感。濃厚なミルクの優しい甘さが舌の上でジワジワと存在感を増し、その甘さを、ほのかなコーヒーの苦みが引き立てていた。
ほかに紅茶や抹茶で割ったラテもある。いずれもしっかりとミルクの味を感じられるように、ホットは熱すぎない約60度で提供し、アイスは濃度が薄まらないようにと氷を使わず、7~8度で提供するという。もちろん、ミルクだけでも味わえる。ドリンクの価格は300~850円だ。
伝えたい「本来のおいしさ」
カフェ出店には社会問題も絡む。オハヨー乳業の広報担当、野崎雅徳さん(48)は「カフェで本来のミルクのおいしさを伝えたいと考えました。学校の給食で定着したイメージからちょっと離れ、さまざまな味わい方を知ってもらいたい。ひいては牛のエサ代の高騰などに悩む酪農家も支えられれば」と語った。
中央酪農会議(東京都千代田区)によると、近年、酪農家の戸数は減少の一途をたどっている。
指定団体を通じて生乳を出荷している酪農家の戸数は平成31年4月に1万3384戸だったが、令和7年12月には9331戸となった。また、6年に行った調査では酪農家の約6割が赤字で、約8割が経営環境の悪さを感じていたという。要因として約9割が「円安」を挙げ、栄養価の高い濃厚飼料費などの費用がかさんでいる実態が浮き彫りになった。
育てられた「恩返しを」
一方で、ご当地ミルクにはファンもついている。日本各地で600種類以上のミルクを飲んだ経験があるというミルクマイスター高砂さん(42)が昨年、『ミルクの本』(自由国民社)を出版した。ミルクの基礎知識やご当地ミルク、関連のレシピや、おすすめの店の紹介などを盛り込んでいる。「酪農家の戸数減少という報道を見て、ミルクの魅力を伝えなければという使命感に駆られたのが活動の原点」だという。
高砂さんは昨年、酪農をはじめとする地域の食の魅力を伝えるNPO法人「酪農乳業ネットワーク協会うしミル」も立ち上げた。その理事長として小学校やイベントでミルクの奥深さを語り継ぐ。「ミルクの生産量が増加傾向になるのは春。これからの季節に余らせないようにするためにもミルクの栄養素などをどんどんアピールしたい」。タンパク質やカルシウムなどミルクの豊富な栄養素に育てられたという高砂さん。酪農への「恩返しを」と支援の輪を広げている。(竹中文)