なぜ「Amazon会員」限定? マイナ保険証の機器購入補助に国が条件 医療関係者が抱いた疑問の数々

2026年2月21日 06時00分 有料会員限定記事
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 マイナ保険証読み取り機の関連機器の購入を巡り、国の補助の条件が通販大手「Amazon(アマゾン)」の会員になることなのは、おかしいのではないか。そんな声が東京都内の精神科クリニックから届いた。根底には「データに基づく、より良い医療」をうたってマイナ保険証の利用拡大を急ぐ国の対応に対する疑問がある。精神疾患の当事者らは問う。「情報共有=善」と単純に言えますか。(福岡範行、山田雄之)

◆「業者の宣伝みたい」にわかに信じられず

 「Amazonビジネスのアカウントをお持ちでない方は、本日中にアカウントの作成をお願いします」
 1月下旬、厚生労働省側から医療機関に届いたメールに、赤字でそう書かれていた。スマートフォンに搭載したマイナ保険証を使う際、スマホからデータを読み取る「汎用(はんよう)カードリーダー」購入に関する国の補助期限が月末に迫っていたからだ。早めに会員登録しないと補助を受けられない恐れがあった。

マイナ保険証の顔認証付きカードリーダー(左)とスマートフォン用の汎用カードリーダー。手にするのはスマホ=東京都内で(一部画像処理)

 「何か、業者の宣伝みたい」
 都内のクリニックに勤める精神保健福祉士、木村朋子さん(68)は、アマゾン限定を、にわかには信じられなかった。同僚と別の方法がないかを調べた。だが、クリニックで使う顔認証付きカードリーダーの業者から「実は、ないんです」と告げられた。
 スマホに搭載したマイナ保険証を使う仕組みは昨年9月に始まった。このクリニックで使う人は少ない。だが、スマホ対応のリーダーがないと、スマホのマイナ保険証しか持たない人には、健康保険の情報が載ったウェブページを見せてもらう必要がある。「受付が混んでいると、困っちゃう」。患者の利便性を考え、クリニックでは購入補助を使わずに、汎用リーダーを買った。

◆「スピーディーかつ簡便に手続きする仕組み」と言うけれど…

 木村さんの声を受け、「こちら特報部」は厚労省に取材した。補助の仕組みは、こうだ。
 医療機関や薬局は、Amazonのビジネス会員に登録した後、専用ページで汎用リーダーなどを選び、「クーポンコード」を使って割引価格で買う。この割引分が、購入補助に当たる部分だ。7000円を上限として、購入費用の半額が割り引かれる。厚労省側は今年3月までに、Amazonに割引分のみを支払う。
 厚労省の担当者は「医療機関などになるべくスピーディーかつ簡便に手続きしてもらう仕組みだ」と説明する。購入後に領収書を提出する補助申請の手続きが不要になるからだ。

クリニック受付のカードリーダー=2024年、東京都内で(一部画像処理)

 また、補助対象が病院は3点まで、クリニックと薬局は1点という個数制限もあるので、販売サイトを1カ所にした方が管理しやすい事情もあった。担当者は「注文を受け、在庫を抱え、配送までする一連の業務を担えるところが、他になかった」とも語った。
 木村さんは「それなりの理由があったと分かりましたが、釈然としない」と顔をしかめた。特定の企業に頼る手法ばかりになれば、「税金を使う緊張感がなくなっていくんじゃないか」と心配する。

◆現行のカードリーダーほぼスマホ対応できず

 そもそも、汎用リーダーの追加購入が必要になったのは、現行のカードリーダーのほとんどがスマホに対応できないからだ。今夏までに発売される次期カードリーダーは全機種スマホ対応になるので、買い替えを間近に控える医療機関などは、汎用リーダー購入が二度手間になる。これまでにスマホ対応を終えた医療機関・薬局は、約5割だ。
 木村さんには政府の普及策が強引に映る。精神疾患の患者たちに日々、接しているからなおさらだ。「『こんなに強い薬飲んでるの』と言われてショックを受けた人もいます」と、医療情報の共有の課題を語る。

◆マイナ保険証で「自己情報のコントロール権が形骸化」

 マイナ保険証の主な利点は、自身の医療情報の閲覧や共有がしやすくなることだ。患者が同意すれば、過去に処方された薬の履歴や手術歴などが医療機関や薬局に提供される。厚労省は「過去のお薬・診療データに基づく、より良い医療が受けられる」とアピールする。

精神医療の場でのマイナ保険証による情報共有についての懸念を語る精神保健福祉士の木村朋子さん=東京都内で

 だが、精神疾患で現在も受診するシステムエンジニアの黒岩堅さん(55)は、「内科など別の科を受診しようと予約した際、精神疾患を伝えたら、受診を断られたことがあった」と明かす。
 「偏見や敬遠する受け止めが社会に存在する中で、マイ...

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    みんなのコメント2件

  • ユーザー
    水晶山脈 2月21日10時30分

    前の話ですが、情報システム(一応政府系)を整備する段階でクラウドを使おうとすると、当初はアマゾンのクラウドサービス一択だった。これはおかしい・やばいと感じ、自分たちのシステム構築にあたってはオンプレミスでやるべきと考えた。当時、整備を担当していた後輩も同様の考えだったのでとりあえず安心したことがあった。今後、AIを使おうなどと考えたら、クリティカルな情報も全て米に流れてしまうだろう。デジタル庁を作り各省庁の情報システム系の予算を全て把握・管理しようとしたのもこのためだと思った。

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  • ユーザー
    Саша 2月21日8時25分

    政府がマイナ保険証カードリーダーの補助金対象をAmazonのビジネスアカウントを持っている医療期間限定としたのは、マイナンバーと紐付けられた個人情報や地方公共団体が持っている住民基本台帳の情報などを運用するためにデジタル庁が整備しているガバメントクラウドの委託先の一つにアマゾンウェブサービスジャパン合同会社があることと関係があるのではと思う。
    日本国民と日本の在留資格のある外国人の情報が米国のサーバーに保存され、米国政府がその企業に情報開示を求めると応じる義務があるため、マイナンバーと紐付けた情報などが米国政府に渡ってしまうこと自体が大問題であるが、政府はマイナンバーカードのごり押しをするだけで都合の悪い情報は周知しない。
    国民らに加入の義務がある健康保険制度の運用に関することで、特定の企業にアカウント登録しないと政府の補助金を受けられないのは政府と特定企業の癒着であり、決して許されることではない。
    欧州で米国の巨大テック企業への規制を強化する動きがあるのに、日本は逆行している。
    こんな状態でデジタル化推進、AIの活用と言われても個人情報保護できるとは思っていない。

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