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年間30社買収するアクセンチュアの内部から見たPMIのいろは【アイデミー PMI Day100 ブログ】

1.はじめに、このブログの狙い

こんにちは!株式会社アイデミー代表の石川です。株式会社アイデミー(以下アイデミー)は2023年6月に上場した東大発のAIスタートアップですが、アクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)によるTOBが成立し、2025年11月10日に100%子会社化されました。私も、2025年11月アクセンチュアに転籍し、PMI(Post Merger Integration;買収後の統合活動)に従事しており、2/17には100%ジョインしてDay100を迎えました。

M&AやPMIは、どうしても「成功事例」か「失敗事例」か、極端な形で語られがちだと感じています。実際にはその間に、もっと地味で、試行錯誤に満ちた“リアル”があります。さらに、アクセンチュアはグローバルで毎年約20-40社を買収しているだけでなく、PMIも含んだM&Aに関するコンサルティングを提供しており、M&A/PMIに関するノウハウが社内に結集しています。スタートアップでも連続的な買収を行うロールアップが戦略の一つとして注目されており、かつグロース100億円の話もあり、今後企業同士の合従連衡も加速していくと考えています。買収・被買収企業にとって、少しでも参考になればと思い、PMI Day100を迎えた当事者として見えてきたプロセスと、予想通りだったこと・予想外だったことをnoteにまとめます。
狙いは大きく2つです。

  • M&Aのリアルを発信することで、スタートアップエコシステムに少しでも貢献したい

  • 今後、買収する側・される側の両方を検討する人にとって、判断材料の一つになってほしい

あくまで一事例として、「中ではこう見えていた」という視点を共有し、買収や被買収を検討されている方の参考材料を提供できればと思います。

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アイデミーグループ全体で、統合に向けたプロジェクトが進んでいます

2.年間30社買収するアクセンチュアPMIのいろは

2-1. アクセンチュアの買収の位置付け

アクセンチュアは、世界52カ国200都市以上で事業を展開する世界最大級の総合コンサルティング企業で、戦略立案から業務改革、テクノロジー導入、デジタル・クラウド・データ・生成AIの活用から運用までを一気通貫で支援する点が特徴です。コンサルティングに加え、エンジニアリングやデザイン/顧客体験、マネージドサービスも含む実行力の高いビジネスモデルを持ち、企業変革を継続的に支えるパートナーとして多くの企業から信頼を得ており、グローバル社員数は784,000人(2025年11月現在)で、日本でも約30,000人を擁する組織として日本全国のイノベーション創出に貢献しています。

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非連続的な成長の一環としてアクセンチュア自身のM&Aも積極的に取り組んでおり、社内ではV&A(Ventures & Acquisition)と呼ばれています。 Merger ではなく、Venturesという言葉を使う意味としては、アクセンチュア自身のベンチャー(新事業創造)の一環として企業買収に取り組んでいるということを示しており、単なる人の獲得のための買収はせず、アクセンチュアが新たなケイパビリティを獲得し、そのインオーガニックな取り組みを梃子として、アクセンチュア自身のオーガニックな成長すらも加速していくという想いを表現しています。
 
この10年、グローバルで20-40件/年ほどのV&Aに取り組んでおり、2025年の日本のV&A案件としては、ゆめみ社、SI&C社、そしてアイデミー社の3社がアクセンチュアにグループジョインすることになりました。(ゆめみ社は2025年12月にアクセンチュアに合併済み)

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FY24には46社のV&Aが実行されました

2-2. 組織とPMIプロジェクト体制図

アクセンチュアの組織は、クロスファンクショナルな組織体制になっていますが、多くの従業員が縦軸となるサービスグループに所属しています。V&Aする会社とシナジーが強い事業ごとにスポンサーとなる部門が選定されます。アイデミー社は主に経営戦略の立案を担うビジネス コンサルティング本部(Strategy & Consulting)がスポンサーとなっています。その中でも、主に組織の変革を担うチームである人材・組織プラクティス(Talent & Organization)がPMIの中心になっており、私も同組織のリーダーシップの一員として所属しています。(なお、ゆめみ社はソング、SI&C社はテクノロジーがスポンサー部門になっています。)

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各サービス・グループごとに様々な特徴・強みがあります

 アクセンチュアのPMI活動は6ヶ月程度を集中的な期間としてプロジェクトを設けるケースが多いようです。PMI活動はざっくりいうと以下のような組織体制で、アクセンチュアのメンバーと、アイデミーのメンバーが同じチームに関わりながら、より良い事業運営になるように議論を重ねています。PMIのプロジェクト体制図のイメージは以下の通りで、各分科会に分かれて活動しています。

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PMI活動のプロジェクト体制図のイメージ

GTMはGo To Marketの略で、顧客に対して「どう売るか」「どう価値を届けるか」を担う領域です。アクセンチュアの膨大なアカウント・サービスとの接続や、既存顧客への価値提案の再定義どのユースケースで、誰と、どう勝ちにいくのかの整理をしています。具体的には、顧客向けの付加価値をどのように向上させていくのかの議論やコンテンツ作成の計画を作ったり、アイデミーの持っているプロダクト(Aidemy Businessなど)や、アクセンチュアで持っているプロダクト(Learn Vantageなど)をどうように統合し、プラットフォームをエンハウスしていくかの策定などをしています。
 
VATIは V&A Talent Integrationの略で、人・制度・カルチャーに関わる領域です。評価・グレード・報酬体系の理解とすり合わせや、人材育成やキャリアの考え方の共有などを行いながら、アクセンチュアグループジョインに係る不安を払拭していきます。「1人も辞めることなく、できる限りアクセンチュアの中で活躍する場を見つけていきたい」というメッセージを受け取っており、スポンサー部門を超えた配属の可能性なども模索しています。具体的には、部門ごとの個別説明会や社員の交流会を毎週のように企画し、対話を重ねていくことでアクセンチュアの理解を促したり、人事制度を棚卸しし、アクセンチュアの制度とどう組み合わせるのか検討しています。
 
CFはCorporate Functionの略で、コーポレート(本社機能)に関する領域です。特にIT/Security周りについてはアクセンチュアのグローバル主導で遵守すべき事項の多数あり、粛々と対応しています。コーポレートについては英語の打ち合わせが多いですが、英語が担当なアクセンチュアの日本法人の方を頼ったり、通訳をアサインいただいたりしています。
 
PMOはProject Management Officeの略で、プロジェクト全体を横断的に管理・支援する機能です。部門全体を横断する進捗や課題の管理を行っています。アイデミー視点でのアラート・リスクシェアを早めに共有したり、アイデミーの事業を伸ばすために、アクセンチュアの原則やルールを変えるべき点があれば、まずは分科会で検討しながら、どうしても難しそうであればPMOを中心に検討をしています。
 
こうしたプロジェクト運営そのものは、アクセンチュアの得意としている領域だと思いますが、全体の抜け漏れがないように二重、三重のチェックを入れながら進め、テールリスクであっても、まずはそのリスクを検知することに務め、できるだけ排除していく姿勢にはたくさんの学びがありました。

2-3. PMIの工夫やノウハウ伝承

PMI活動を通じ、本当にたくさんの方々に関わっていただいており、おおよそアクセンチュアのコンサルタントは(フルアサイン〜パートアサインまで関わり方は様々ですが、)50〜100名近くの方が実際の組織図に名前がリストされています。我々アイデミーも役員中心に20名程度がPMIの体制図に名を連ね、実際のアクションアイテムはアイデミー全社で協力しながら進めています。
 
もちろん、会社のカルチャーやルールの違いがあるので、conflictしないことはなく、毎日喧喧諤諤の議論を続けています。一方、「親会社のルールに従え」と一方的に言われることはなく、事業の観点では「どうやったらアイデミーの持ち味を活かせていくのか?」という視点から議論することができています。この点は、ステアリングコミッティの場などで「アイデミーの強さを無くさず、アクセンチュアはアイデミーから学べ」というV&Aの意義を江川会長から口酸っぱくお話しいただいているお陰で、「アクセンチュアのルールに則りながら、どうビジネスを拡大していくのか」という考え方を出発点にしながらも、「親会社のルールや原則を変えてでも、アイデミーの良さや特徴を取り入れる」という統合方針は、アイデミーから見ても寄り添っていただけていると感じ、大変学びになるリーダーシップスタイルです。
 
PMI集中期間が終わるごとに振り返りを行い、次以降のPMIに活かすような体制を整えているようです。また、アイデミーの全従業員を対象に、パルスサーベイと呼ばれている定期アンケートを取り、過去の取り組みと比較しながら変化をトラックしています。過去の案件と比べてスコアを比較し、定量基準からも行うべきアクションを適切に判断できるのは連続的な買収を行っているアクセンチュアの強みだと思います。
 
数々のレポートで連続的にM&Aを行う企業(Serial Acquirers)は単発・大型買収を行う企業や、M&Aを行わない企業に比べて株主総利回り(TSR)が一貫して高いと示されていたり、年に複数回の買収を継続的に行う企業は財務リターン・成長率の両面でアウトパフォームすると言われています。アクセンチュアでは、こうした過去のV&Aの知見を溜め、先人たちの知見のヒアリング結果やプロセスの型化、サーベイデータの等を通じ、成功体験を再現し、改善すべき点は改善しています。
 
もちろん、全てのノウハウ・ナレッジが定型化されている訳ではありません。非定型な知見については、過去のV&A案件に携わった方にヒアリングしたり、PMIチームにジョインいただくことで吸収されているのも印象的でした。例えば、Strategy & Consulting がスポンサーとなった過去の案件の一つにALBERT社のV&Aがあり、そのPMIに関わった方もチームにジョインいただき、知見が生かされています。このように社内の人と人とのつながり・ネットワークも駆使しながら、ワンチームで共にPMIを成功に導くような泥臭さ・人間らしさが印象的でした。

3.予想通りだったこと

さて、ここからは石川の視点で予想通り「強かったこと」や「大変だったこと」をまとめていきます。

3-1. 組織力の強さ

日本だけで3万人もいる大きな会社でありながらも、成長中企業だからこそ、スタートアップにも負けない熱量感があります。日本を代表する大企業や世界の主要企業とのアカウントが開設されており、顧客に匹敵するほど情熱的なアカウント担当者がいます。更に、アカウント担当、サービス担当、さまざまなリードなど、クロスファンクショナルな組織図を活かし、様々な方が様々な角度で責任を持ちながら事業を推進する組織構築手法がその強みをさらに強化しています。
 
もちろん、関わる人が増えるほど、コミュニケーションの設計難易度が増え、社内の打ち合わせの調整も難航しますが、組織の壁をほとんど感じることなく、アクセンチュアの一員ということで、みなさん腹を割って色々なことをお話できるのは素敵なカルチャーだと思いました。

3-2. 顧客との信頼関係の強さ

顧客からの「アクセンチュアならやり切ってくれる」という信頼は、想像以上に強固だと感じました。特に、AIをはじめとするデジタル技術に強みを持ち、グループ全社の総合力で、突発的な課題に対しても真摯に対応する姿勢についてもすぐに真似できるものではありません。
 
アクセンチュアの様々なコンサルタントとお話していても「お客さんのためになるか」という視点は共通言語として浸透しています。過去の先人たちが、お客さんのために提案を考え抜き、良いソリューションを提供するために真摯にデリバリーしたことで気づき上げられた信用残高の高さを感じる場面が多々ありました。

3-3. 管理システムとルールの煩雑さ

この点は予想通り複雑で、3ヶ月たっても全体像の1割未満しか把握できていない自信があります(笑)。また、厳格なものからガイダンスに近いものまで多数のルールがあり、どんな取り決めがあるのかは蓋を開けてみないとわからない(アクセンチュアに長いメンバーであっても、V&Aが絡む特殊なケースについてはグローバルに問い合わせないとわからない)ケースも多く、想像通り煩雑でした。
 
一方、こうしたルールは顧客に対するサプライズを無くすため、テールリスクを排除するために作られていることの裏返しでもあります。スタートアップの視点では「細かすぎる」と感じることも多々理ますが、細かすぎる点についても丁寧に検討を重ねて積み上げていく姿勢が強みの源泉の一つだと受け取っています。

4.予想外だったこと

さて、ここからは予想外に「嬉しかったこと」や「驚いたこと」をまとめます。

4-1. 「染め上げる」よりも「学ぶ」V&Aの方針

最も意外だったのは、「アクセンチュアのルールに合わせること」が出発点ではなく、「アイデミーから何を学べるのか徹底的に考えよ」という問いが、V&AのPMIステアリングコミッティなどの場で江川会長などから繰り返し投げかけられました。
アクセンチュアの過去のV&A案件は、基本的にV&Aした会社を吸収合併しています。こうした姿勢から「アクセンチュアはスタートアップを自分色(アクセンチュアカラー)に染めるのが得意なのかな」と感じていました。一方、実態としては真逆で、スタートアップの力でアクセンチュア自体を変えることを期待されていたからこその吸収合併でした。
江川会長から、「アイデミーの石川さんに、アクセンチュア社を課題を見つけてもらい、どう良さに変えていくのかコンサルティングしてもらうんだ」とのコメントをいただいた時にはビビりましたが(笑)、「スタートアップの力で、アクセンチュア自身を変革してほしい。アイデミーには、まずは人材・組織プラクティス(T&O)チームの改善すべきところを改善し、その結果を他部門やグローバルを展開してほしい」というメッセージは、雷を打たれたような感覚で、背筋が伸びる思いでした。
確かに、会社というエンティティが違うと、被買収企業(子会社)の文化や良さが保たれる良さはありますが、買収企業(親会社)を変えることはできません。シナジーを作るための活動も、どこか会社ごとの最適化を考えてしまうことで、十分に生まれないようにも感じます。「学ぶ」姿勢の上で吸収合併していくという考え方については、アクセンチュアのカラーが現れている独特の考え方だと思いましたし、冒頭お伝えしたV&Aの「インオーガニックな取り組みを梃子として、アクセンチュア自身のオーガニックな成長すらも加速していく」という戦略との強い一貫性がありました。

4-2. AI/デジタルへの積極的な投資

「旧来からアクセンチュアは、テクノロジーをベースとしたコンサルティングで一貫している点が他社との大きな違いだ」と立花副社長から伺いましたが、想像以上にこうしたテクノロジーへの投資を続けながら、アクセンチュア自身の変革をし続けていることが分かりました。
我々のスポンサー部門のT&Oで手がけるコンサルティングメニューとしても、伝統的な組織コンサルティングテーマもありますが、それ以上に生成AI/AI/データの活用を組み合わせた、新たなテクノロジーを駆使するからこそできるテーマが主流であり、良い意味で「イメージしていたコンサルティングファーム」ではありませんでした。
社内の会話も、「どのように生成AIやAIを組み合わせていくのか」という話がほとんどで、ビジネスモデルも伝統的なコンサルティングファームの形から脱却しようと取り組みが複数進んでおり、業績好調の現時点に甘んじることなく、危機感を持って自分自身のビジネスモデル変革に取り組むリーダーシップの強さを感じました。

4-3. 強烈なフィードバック文化

プロフェッショナルファームという印象から、「冷徹に放置する」イメージがあったのですが、実態は真逆で、提案やデリバリーの方向性について経験豊かな先輩が熱心に話し、さらに手足も動かす強烈なフィードバック文化がありました。提案や進め方の方向性について、誰かが放置されることはなく、チームで仕事をし、より良いものを作るためにお互いの知見を凝縮させる様子を肌身で感じられました。
役職者がジュニアなメンバーにフィードバックすることも多々ありますが、その逆もありますし、事業部門を超えたフィードバックも数多くあります。同じプロジェクトや顧客に相対すれば同じ仲間であり、年齢・役職関係なく思ったこと言う「Think Straight, Talk Straight」の文化は根強いと感じました。(もちろん、組織運営を円滑にするための忖度や事前合意はゼロではありませんが、想像していたものより遥かに少ないと感じられています。) 

5.最後に

以上がアクセンチュアのPMIの取り組み、そして企業カルチャーでした。顧客はもちろん、V&Aの取り組みに対して真摯だからこそ見えてきた凄みが他にもたくさんの驚きや気づきがあるのですが、未公表事項に引っかかってしまうようです。順次、公開されるところもあると思うので、引き続きスタートアップの視点で、学び・知見を共有できることはまとめていこうと思います。
 
最後に宣伝です!アクセンチュアではマイノリティ出資や完全買収も含めてV&Aの取り組みを加速しています。もしスタートアップの皆様でアクセンチュアとの提携にご興味あれば、私のFacebookやLinkedinにご連絡いただければ、提携を検討する窓口になれますので、ご連絡ください。
また、アイデミーのチームも事業拡大のために積極的に採用しています。アクセンチュアのリソースを生かしてさらに拡大していく面白いフェーズなので、こちらもご転職にご興味がある方は、同様にお気軽にメッセージください!

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