「がまんは美徳」と腹痛を耐え死にかけた男の結末――「たかが」と侮ってはいけない命に関わる腹イタの正体。昔と今では違う“治療の新常識”
しかし、翌日も腹痛は続く。しかも、痛みは前日よりひどくなっていた。だが、おなかは痛くても、朝食も昼食も普段どおり食べられた。 悲劇はその後に起こった。 ■気絶しそうな痛み 「昼食後、腹痛が加速度的に激しくなっていったんです。例えるなら、内臓をギュッと手で握り潰されているかのような痛み。3時ごろには脂汗が出るほどの激痛で、とうとう立てなくなりました」 さすがにこれはおかしいと思った樋口さん、インターネットで症状を調べると、虫垂炎の症状にぴったり当てはまっていた。虫垂炎とは、大腸の右下のあたりにある虫垂という部分に炎症が起こる病気だ。一般的には「盲腸」と呼ばれている。
折り悪く両親は外出中で、実家には樋口さん1人だけだった。 「電話でタクシーを呼び、おなかがめちゃくちゃ痛いので近くの大きな病院に行ってほしいと頼みました。そうして、たどり着いた病院で、運転手に肩を貸してもらって受付を済ませて待合室へ。このときには、もう気絶しそうなくらいの痛みでした」 血液検査や画像検査を受けた結果は想像どおりだったが、“たかが虫垂炎”とはいかなかった。 「急性虫垂炎で腹膜炎の一歩手前」で、このまま放置していれば命にも関わっていたかもしれないとのことだった。
「医師からは、虫垂がいつ破裂してもおかしくない状態なので、緊急手術が必要だと言われました。『こんなになるまでよくがまんできましたね。すごく痛かったでしょう』と言われた記憶があります」(樋口さん) そして、すぐに診察室の隣の処置室で看護師にアンダーヘアを剃られた樋口さん。「まだ20代だったので、一瞬、腹膜炎の痛みを忘れるほど恥ずかしかった」と言う。こうして手術室へと運ばれた。 虫垂炎の治療では、おなかに穴を開けて行う腹腔鏡下手術を行うことが多い。ただ、樋口さんの場合は炎症が強く、その範囲も広かったため、開腹手術となった。手術にかかったのは1時間程度だが、右下腹部に10センチほどの傷が残った。