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俺は全てを【パリイ】する 〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜  作者: 鍋敷
第三章 商業自治区編

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139 時忘れの都 3

「ちっ、雌の獣人だと? どこの酔狂な物好きがあんなの持ち込みやがった……? ここは上級選民用の区画だぞ」

「ああ……せっかくの水浴着が汚れてしまったわ……! 特注(オーダーメイド)するのに幾らしたと思っているの!? こんなの、賠償モノよ! あれの飼い主を訴えてやるっ!!」


 リーンとシレーヌは水に浮いたまま、辺りの様子をうかがっている。

 自分達に集まる視線と声が落ち着くのを待っている様子だったが、周囲の罵声は止まなかった。


「……すみません。この騒ぎ、私がご一緒してるせいみたいですね。私、すぐに戻って人のいないところで待機してようと思います」

「いえ、待ってください、シレーヌさん。私が少し、あの人たちと話をしてきます」

「大丈夫ですよ、リンネブルグ様。私だけ外に出ていれば済む話ですから……すみません。こういうことがあるかもしれないって、わかってたんですけど、浮かれて油断してました。ご迷惑をおかけしました。外で待っていますから、お気になさらないでください」

「シレーヌさん」


 シレーヌは割り切った様子で水から上がり、背中に罵声を受けながら元きた場所から外に出て行こうとした。

 でも、そんなシレーヌの腕を、座ったままのロロが掴んだ。


「シレーヌさん。リーンが言う通り、出て行く必要はないと思うよ」

「……ロロ?」

「少し、そこで待っててもらえないかな? たぶん、なんとかなるから」


 シレーヌを引き止めたロロはゆっくりと立ち上がり、罵声を浴びせている人々をじっと見渡した。


「ここの人たちは、獣人が嫌いみたいだね。でも、ここにもっと嫌われてる『魔族』もいるんだよね。背が小さいから、見えてないのかな?」


 そう呟くとロロは四角い湖のすぐそばまで歩いていき、水の中を覗き込んだ。


「……寛いでるところ、ごめん。悪いけど、ちょっとだけ力を貸してね」


 そうしてロロは水面に向かって何かを囁いた。

 それからしばらく、何も起こらなかった。

 でも少し時間をおいて、水の底から大量の黒い影が水面に押し寄せてくるのが見えた。


「なんだ……?」


 それは魚の群れだった。

 皆が異変に気がつき、騒がしくなった。


「ヒッ!?」

「な、何が起こってるの……!?」


 皆が戸惑う中、魚の群れは湖の水を一気に押し上げて巨大な水柱を立てた。

 水面から飛び上がった魚の数はおよそ、数百か千ぐらい。

 それを見た人々から、また悲鳴が上がる。

 大小さまざま、珍しい色をした面白い模様の魚が水飛沫と共に陽の光を浴びてキラキラと輝く様は壮観だった。

 ずっと見ていたいような光景だったが、魚たちは、ひとしきり空中で太陽の光を浴びてその美しい鱗を輝かせると、また激しい音を立てて豪快な水飛沫(しぶき)と共に元来た水の中へと戻っていった。


 皆、驚くような光景に目が釘付けになり、あまりの出来事に言葉を失って静まり返った。

 魚たちはただ水面の上に跳んで、また水に戻っただけだったのだが。それだけでもう、大迫力だった。

 そんな中、ロロは一人で静かに湖の脇に立ち、どういうわけか皆に大きく手を振っていた。


「お〜〜〜い! こっち、こっち」


 ロロは跳んだり跳ねたり手を振ったりで、必死に自分のことをアピールしていた。

 そして自分に人々の視線が集まった頃合いを見て、彼らに向かって大きく手を振り、遠くまで聞こえるような通る声で言った。


「ここに、魔族がいるぞ〜〜!」


 最初、皆はロロが何を言っているのか、よくわかっていない様子だった。

 俺も彼が何をしたいのかわからない。

 でも、だんだんとロロが言っていることを理解したらしい人々は、小さく悲鳴を上げた。


「ま、魔族……?」

「ま、まさか、本物……!?」

「そんなわけないじゃない」

「だ、だが……!? 今のは……!?」


 一瞬は鎮まった、さっきよりも更にざわついた。

 何人かが逃げるようにして水の中から上がり、湖のある大部屋を出て行ったが、多くの人はその場に留まり、固唾を呑んでロロの次の行動を見守っている。

 そんな中、ロロは彼らに小さくともよく通る声でこういった。


「初めまして……ボクはロロと言います。ここにいるひと、みんな知ってるかもれないけど……『魔族』って人の心の中を、覗くことができるんだ。だから、あなた達が心の中に抱えている秘密(・・)も多分、ボクが近くに行ったら、わかってしまう。もちろん、ボクは他の人に言うつもりはないけれど……多分、みんな嫌だよね? あなた達、人に言えない秘密が多そうだし」


 ロロが静かにそう言うと、騒がしかった辺りが一層静まった。

 そして、ロロを中心にして人々が遠のいていくのが見えた。


「あ、あの髪。あの眼の色。間違いない……あ、あれは本物だぞ!」

「ほ、本物の魔族だと……!? どうなってるんだ!?」

「なんてことだ……! こんな事態、問題は獣人の比じゃないぞ!? どうなってるんだ、ここの管理体制は!?」

「おい、警備の者はいったい何をやっている!? ここにいる者は皆、高い会費を支払っているんだぞ!? その程度の仕事もできないのか! くそっ、すぐに解約してやる!!」

「どこから入り込んだ!? ここから出ていけ!! ここはお前らのような存在がいていい場所じゃないんだぞ!! わかっているのか!?」


 多くの敵意のこもった視線と罵声。

 驚いたことにロロはそれになんの動揺も見せず、ただ言葉を返した。


「……そうなの? でも、ボクたち、ここで遊んでいていいって言われたよ。そんなにボクと一緒にいるのが嫌なら、あなた達が出ていけばいいんじゃないかな? ボク、ちょうど水浴びしたくなってきたんだよね。そんなに泳げないんだけど」

「ふっ、ふざけるな! 誰がそんなことをさせるか! 今すぐ出ていけ!!」

「魔族がここに入り込むなど、許されんぞ!!」


 人々は口々にロロに酷い言葉を浴びせた。

 だが、ロロは彼らの罵声を受けて、声をあげた人々の顔をじっくりと眺めるように辺りを見渡した。


「それを決めるのは、あなたたちじゃないよね。ボクがどうしたいかは、ボクが決めるよ。じゃ、行くね」

「な、何を……!?」


 そうして大きく息を吸い込むと小柄な体格に似合わない大声を張り上げた。


「さあ、心に知られたくないことがある人は、ここから出て行くといいッ!! 今から『魔族(ボク)』が、水の中(そっち)に飛び込むぞッ!!」


 そうして人々の視線を集めたロロは、屈み込むと床を強く蹴って跳躍した。

 建物の天井スレスレまで跳び上がる、見事なジャンプだった。

 太陽を背にしたロロに皆の視線が集まる中、ロロは水面に激突して派手な水飛沫をあげ、水の中に沈んでいった。


 さっき、ロロはあまり泳げないと言っていたが、あれは浮いてこられるのだろうか。

 俺がそんな心配していると、辺りからまた悲鳴が上がる。


「────ヒィッ!!?」

「い、いやあああああ!?」

「いッ、急げぇ!!! に、逃げるんだ! 近づかれたら、何をされるかわからんぞ!」

「くそ、忌々しい……! 管理者に訴えてやるッ!」


 水の中に残っていた人々は口々に悲鳴を上げ、我先にと争うように水から上がり、彼らの荷物をまとめてその場から逃げるようにして出ていった。

 そうして、しばらくすると広い水浴び場の中には俺たち以外、誰もいなくなった。


「────ぷはっ」


 水の中に勢いよく沈んだロロはしばらく浮かび上がって来なかったが、待っていると水面から顔を出した。 

 そして、ぽつんと一人だけ水の中に取り残されたロロは、水面にぷかぷかと浮かび、のんびりと犬のような泳ぎ方で俺たちのところに戻ってきた。


「ほら、これでみんないなくなったでしょ?」


 ロロは水から上がると、シレーヌにそう言い、シレーヌの隣にいたリーンに視線を向けた。


「これで良かったよね、リーン? みんな、自分の意思で出ていってくれたんだし」

「はい。グッジョブです、ロロ」


 二人は互いに目を合わせ、グッと親指を立てて笑い合った。

 あの二人、リーンは元々なかなかいい度胸をしているのは知っていたが、驚いたのはロロの方だ。

 ロロは最初出会った頃と比べて、見違えるように(したた)かになった。

 以前の彼は卑屈すぎるぐらいだったし、多分、これぐらいでちょうどいいのだろう。

 俺の知っていた、かつての人見知りでボソボソと誰も聞き取れないような小声で喋る少年(ロロ)がもう二度と見れないと思うと少々、寂しい気もするが……これが年相応の成長というやつで、喜ばしいことなのだろう。

 まあ、そんな些細な感傷はさておき。

 周りに俺たち以外の誰もいなくなった今、すでに俺の心を占めているのは他のことだった。


「暑い……な」


 ────ここはとにかく、暑い。


 気温が調整されているにしても、暑すぎる。

 水の中に入った時に気持ちが良いように、という配慮からだというが、やはりそれがわかっていたって暑い。

 それも暑いだけでなく、かなり湿気があるので蒸し暑いのだ。

 ただじっとしているだけでも、汗がにじみ出てくる。

 そこにきて、あのロロの見事な飛び込みだ。


(今のあれは────かなり、いい)


 あれこそ、今の俺が求めているものだった。

 あんなものを目の前で見せられたら、もう、居ても立っても居られなくなる。

 あれは王都の浴場では決してできない、水が驚くほどに深い、ここだからこそ出来る贅沢だと思う。

 もちろん、ここでだって他に人がいたらやろうとは思わないが。

 今なら誰もいないのだし。


 この際だ。

 俺も、今ロロがやったようなあれ(・・)をやるしか、ないと思う。

 水の中に入らないと決めているらしいイネスには悪いが……いい加減、俺もそろそろ水の中に入りたいのだ。


 ……よし。


「では、俺もロロに続くか。うん、そうだな。そうしよう」

「……ノール先生?」

「────じゃあ、行くぞ」


 そうして俺は念入りに準備運動を済ませると、先ほどのロロと同じように建物天井ギリギリの高さまで跳躍した……つもりだったが、思ったよりも勢いがつきすぎ、危うく透明な天井に激突しそうになった。

 だが、俺は咄嗟に空中で体を捻って、上手く足裏を天井につけることで衝突を避け、逆に軽く蹴ることで少し勢いをつけ、思い切り水の中に飛び込んだ。

 

(これは────思ったよりずっと、気持ちいい)


 体が勢いよく水面に叩きつけられると、心地よい衝撃と共に水の温度を感じた。

 水の中は更に冷たく心地よかった。

 先ほどまで蒸し暑く不快な場所にいたので尚更だ。

 その上、高いところから思い切り水に飛び込んでみると爽快そのものだった。

 俺は高いところは苦手だが、こうやって、水面に向かって飛び込むのは好きなのだ。

 多少は怖いことは怖いが、落ちる先が水か地面かでかなり話は違ってくる。


 水の底を見渡すと、さっきの魚たちがいる。

 だが、俺が勢いよく水面をぶち破って一気に水の底まで沈み込んできたので魚達は何事かと驚き、逃げまどっている。

 その後もしばらく、唐突な侵入者を警戒している様子だったが、俺が水中の岩のようにじっと動かず大人しくしていると、元々人馴れしているのかたくさんの魚が寄ってきた。


(────近い)


 色とりどりの珍しい魚達が、簡単に手で触れられそうな距離で泳いでいる。

 食べがいのありそうな大きな魚も、このまま手掴みで捕まえられそうだった。

 ……が。

 メリッサによるとこの魚達は観賞用だということだったので、食べる為に獲るのはあきらめ、俺は水の底から水面を見上げ、頭上に輝く幻想的な光の幕を眺めた。


(これも、いい)


 深い水の中から遠くにある水面を見上げると、水が太陽の光を散らし、水の中にゆらめく光のカーテンのようなものが見える。

 それが、頭上の一面を途切れることなく覆っている。

 これも壮観だった。

 この中で好きに泳ぐことができるというのは、確かに最高の贅沢(もてなし)なのかもしれないと思った。


 そうして、俺はしばらく魚と一緒に水の底で遊泳を堪能した後、深い水の中から水面まで一気に浮上した。

 だが、水から顔を出して辺りを伺うと、様子が変わっていた。

 どうやら俺が水に突っ込んだ衝撃で、水面が大きな波を立てて周りのものをだいぶ押し流していたらしかった。

 湖の脇で直立不動だったイネスが頭からびしょ濡れになり、水面から顔を出した俺をじっと見つめている。

 ……これは、少しまずいと思った。

 イネスと目が合い、しばし見つめ合う。


「すまない、イネス」

「いや、大丈夫だ。私は問題ない。私はな」


 どうやら言葉通り、彼女に全く怒っている気配はない。

 むしろ、暑い中で頭から水を浴びて気持ちよさそうにしているように思えた。 

 ……なら、もう一回やってようか?

 と、思ったが直立するイネスの背後で怯えた顔のシレーヌが膝を抱えて座り込み、肩を震わせていた。

 彼女は、俺がさっき立てた波で押し流されたらしい。

 ちょっと可哀想なことをしてしまったかもしれない。


「シレーヌさん、大丈夫ですか?」

「……は、はい。リンネブルグ様。やっぱり、水は慣れなくて……でも、おかげさまで、だんだんと慣れてきたと思います」


 リーンが座り込んでいるシレーヌに手を差し伸べ、優しく抱き起こした。


「そうですね。やっぱり、シレーヌさんはセンスがありますし、水に慣れさえすればすぐに泳げる様になると思います」

「そ、そうですか?」

「はい。なので、ロロのおかげで変に咎めるような人もいなくなったことですし、せっかくなら先程の続きをやりませんか?」

「はい、ありがとうございます……あれっ……? リンネブルグ様?」


 リーンは戸惑う表情のシレーヌを両腕で抱えて持ち上げていた。

 それはいわゆる、お姫様抱っこというやつだった。


「……あの、これは? いったい、何を……?」

「はい。やはり、まずは水に慣れるところから始めたいと思いまして」

「……そのお話は、わかったんですけど……? 私、なんでリンネブルグ様にお姫様抱っこされてるんでしょうか」

「せっかくですのでロロとノール先生のように、ど〜んと行こうかと」

「ああ、なるほど、それで……って。あ、あの、リンネブルグ様? お気持ちは、本っっっ当にありがたいんですけど。あれは、流石に私にはハードルが……?」

「大丈夫ですよ。私もついていますから。では、行きますよ。少し息を止めていてくださいね」

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ、心の準備が────ぴぎゃっ!?」


 そうしてリーンはシレーヌを抱き抱え、跳んだ。

 シレーヌの顔が空中で恐怖に引き攣っているのが見える。

 そうして、哀れなシレーヌは特徴的な悲鳴をあげながらリーンと水の底へと沈んでいった。

 リーンとシレーヌが二人一緒に水に飛び込んだことで、水面が波立った。

 でも、それほど高くは飛ばなかったので広い水面に立ったのはさざ波程度だった。

 水際に立つイネスの足先にちゃぷん、と水がかかり、イネスは微動だにせず表情も変えなかったが、どこか物足りなさそうに見えた。


「ぷはぁっ!?」


 リーンとシレーヌはすぐに、二人一緒に浮き上がってきた。

 

「どうでしたか、シレーヌさん?」

「……はい。思ったより、大丈夫でした」

「こういうのは、入る前に怖いと思うから怖いんです。こうして体から慣らしてしまえば案外、気にならなくなると思います。シレーヌさんなら今日中にも泳げるようになるかもしれませんよ」

「そ、そうですか? 本当にそうなったら、嬉しいですけどね」

「では、もう一回いきましょうか」

「……ひえっ……!」


 イネスは水の中にわいわいと入っていく二人をどこか羨ましそうに眺めている。

 彼女は泳ぐのは好きらしいが、今は仕事中なので水の中には入らないという。

 でも、このままでは暑い中、大変だろうと思う。

 そう────ならば。

 単に俺がもう一回あれをやりたいというより、一人で仕事を頑張っている彼女のため。

 もう一回、波を起こしてあげる必要があると思った。


「ロロ、いいか」

「……うん、わかった」


 俺たちは何の打ち合わせもなく、ただ目を合わせただけで瞬時に意思疎通を交わし、湖のほとりに二人で並んで立った。

 こんな時、ロロの力は本当に便利だ。

 口を介さずにやりたいことが全て伝わるのだ。

 俺たちは水に入る前の準備運動をしたのち、身構えた。


「────じゃあ、いくぞ」

「うん」


 俺とロロは同時に跳んだ。

 そして大部屋の高い天井に二人で足をつけると、同時に天井を蹴った。

 俺たちが目指すのは人工の湖の中心だ。

 そこに思い切り、二人で突っ込む。

 そうすればきっと、さっきよりずっと大きな波が立つだろう、という算段だった。

 だが水面に到達する直前、ふと思った。

 ここで水面を軽く手で叩けば、もう少し波を大きくできるのではないか、と。


「パリイ」


 思うのとやるのは一緒だった。

 俺は腕を伸ばして手刀のようにして、軽く【パリイ】で水面を叩いた。

 すると、腕に心地よい衝撃。

 同時に目の前の水は消えてなくなった。


「────えっ」


 その瞬間、しまった、と思った。

 衝撃でロロが真横に飛ばされていくのが見える。

 やりすぎた。

 そのまま俺とロロは変な姿勢で着水し。

 勢いのまま、深い水の底まで沈み込んだ。


「……ぷはっ」


 俺はすぐにロロを抱えて水面に上がり、謝った。


「すまない、ロロ。つい、予定にないことをしてしまった。大丈夫だったか?」

「ううん、大丈夫だよ。驚いたけど、何ともないし、水の中はすごく気持ちよかった」

「……よし。なら、もう一回、行こうか?」

「もちろん、ボクはいいんだけど」


 見れば、シレーヌがリーンに抱き抱えられながら、小さく震えていた。

 イネスは全く表情を変えておらず、そこまで怒っている様子もなかったが、水の上に打ち上げられてピチピチとはねる魚を黙々と水の中に戻していた。

 さすがに俺もすぐに水から上がり、自分が打ち上げた魚を水の中に戻す作業に移った。

 それ以降は自重して、ただ水に浸かったり潜ったり魚を眺めるだけにして、それでも十分に楽しかったのだが。

 やはり、どれもあの飛び込みの快感には変え難い。


 なので、今度は皆に念入りに許可を取った後、魚を床に打ち上げないより良い方法でもう一度挑戦しよう、と心の中でロロと密かに相談しながら頃合いを見計らいつつ、表面上は大人しくわいわいと遊んでいると、湖のある部屋に、俺たち以外の人の気配がした。

 

「やあ。楽しんでいただけているようで、何よりです」


 どこか見覚えのあるその人物は歩いて俺たちに近づいてくると、陽気に声をかけてきた。

 褐色の肌の彼は俺とロロと同じように短パン一つで、上半身には派手な花柄のシャツを羽織り、頭には色付きの眼鏡をかけて、変わった色の飲み物のグラスを二つ持っていた。


「リンネブルグ様。先程、ご不快な想いをさせてしまったこと、深くお詫び申し上げます。あれらの暴言を吐いた者は皆、この都を追放し、相応の財産を没収して砂漠に放ちましたので、どうかご容赦いただければ」


 そう言って飲み物を持ち上げながらリーンに爽やかな笑顔を見せた半裸の男は、俺たちをここに招いた男、ラシードだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノール先生の規格外っぷりに慣れすぎて見落としそうになったけどこの人ついに「武器無し」でパリイしたな……
[良い点] ロロナイス!! 魚からするとノールの心の清らかさが分かるのかね リーンのスパルタにも爆笑ww [一言] ラシードもあの王子と同じように実は良い奴(現状の自国に不満を持ち革命の時を待…
[気になる点] これ獣人と魔族がいるの知ってて態とプールに招待しましたよね? 暴言を吐いた連中を追放する名目を作る為に いきなり『口で言った事以外信用ならない』が実行されましたね ただ他者にですけどw…
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