誰もが自由に利用できる公共施設、防犯の難しさ浮き彫り 福岡市図書館3人刺傷事件、防犯カメラ60台でも…市長「非常に驚き」
福岡市早良区の市総合図書館で19日に利用者ら3人が刺されるなどした殺人未遂事件は、誰もが自由に利用できる公共施設の防犯の難しさを浮き彫りにした。対策を強化しすぎれば、図書館の公共性や利便性が損なわれかねず、関係者からは困惑する声が上がる。 ■「誰でもいいから殺したかった」送検される容疑者 事件翌日に臨時休館し、21日に再開した市総合図書館。「特別警戒中」と記された腕章を着用した市の職員らが館内や周辺で目を光らせていた。運営を市から委託されている指定管理業者の職員も含め、3月中旬まで連日5、6人を配置。常駐の警備員の巡回も、回数を2倍にするという。
防犯カメラ60台
7歳と3歳の娘と訪れた同市城南区のパート女性(37)は「ゆっくり本を読む人が集まる図書館ではこれまで、防犯を考えたこともなかった」。立石勝也・図書サービス課長は「目に見える警戒の強化を通し、少しでも安心して利用できるようにしたい」と話した。 自治体の図書館としては国内有数の規模を誇り、学習室やミニシアターも備える同館。2024年度の入館者数は約60万人に上り、平日は5人、日曜や祝日は6人の警備員が勤務する。約60台の防犯カメラも設置しており、20日に現場を視察した高島宗一郎市長は「これだけ警備をしている中での犯行に、非常に驚きを感じる」と述べた。
「誰もが自由に無償で」
地域に開かれた公共施設の防犯は、教育現場で進んできた経緯がある。大阪府池田市の小学校で01年に起きた児童殺傷事件を受け、文部科学省は02年、登下校時以外の校門の施錠や全ての来校者の確認を求める危機管理マニュアルを作成。09年には各学校で実情に応じたマニュアルを作成することが義務付けられた。 一方、図書館は不特定多数の利用が前提で、学校のような防犯態勢は取りにくい。ある自治体の職員は「あくまで、誰もが自由に無償で利用できる場所」と強調し、不審者の出入りや事件の発生を常に想定して運営するのは難しいと言う。
リスクコミュニケーション
19日の事件では警備員が容疑者を取り押さえたが、警備員が配置された図書館は少なく「金属探知機などの対策もそぐわない」との声も目立つ。「防犯と利便性の両立の難しさは公共施設そのものの課題でもある」と別の職員は話す。事件を受け、緊急時の対応について警察に相談したという福岡県久留米市の市立中央図書館の担当者は「対策は容易ではないが、助言を受けながら考えていきたい」と話した。 日本大危機管理学部の福田充教授(犯罪対策)は「学校や企業などさまざまな場所で警備が強化される中、図書館は誰もが出入り可能な数少ない空間の一つ」と指摘。その上で、犯罪が起きるリスクと対策の在り方やバランスを議論する「リスクコミュニケーション」が重要だと説明する。「人権やプライバシーにも配慮しながら、何をどこまで行うべきかの合意を社会が形成する必要がある」と話す。
西日本新聞