戦えない特務司書と転生系文豪達
長編が書けないのできばらしに。文アル始めました。
借金苦ありがとう太宰をつれてきて武器に笑った。
コレは文アルの特務司書がさにわなんだけど事故で飛ばされて
帰り道をこっそり探しつつ日々を過ごしながら文豪達と
交流する話です。戦えるさにわの彼女だったりその辺りは後でと言うか
秋声→彼女っぽいかも知れない。
とりあえずご飯がもっと欲しいです文アル
表紙は、illust/26450097 様からお借りしました
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【戦えない特務司書と転生系文豪達】
「終わったね……」
徳田秋声は息を吐いた。先ほどまで居た敵は秋声の持つ弓から放たれた矢によって消えている。
非日常に巻き込まれてからかなりの時間が経過して、非日常が日常になっていくような感覚があるが、そう思うたびにこれは非日常だと軌道修正する。
『秋声さーん、織田作さん、菊池さん、正岡さん、帰還したら修復してご飯食べましょ』
彼女の声が聞こえる。
浄化したとは言えまだ濁ったようなこの世界に響く、晴れやかな声、曇り空の雲が風によって流れ、太陽が出るような感覚。
「お司書はん、今日の飯は」
『カレーだよ』
「庶民派だから文句は言わないけど……」
織田作之助が聞けば、彼女が返す。織田がカレーが好きなのもあってか、自分達の食事は六割ぐらいはカレーだ。
転生してから初めて食べたのもカレーだった。そのカレーは彼女が作ったものだった。この非日常は神経も使うが体力も使う。
食堂には誰も居なくて材料があるからと彼女が作ったカレーは織田の知っているカレーとは違っていたが美味しいと話していた。後にカレーは大量の種類があることを知った。
「言えばメニューは変えてくれるだろう。帰るぞ」
「そうだな。腹が減った」
武器の銃を本に戻した正岡子規と武器である鞭を本に戻した菊池寛が言う。少しずつだが、自分達は突破口に近づけている。
秋声も武器を本に戻した。世界が溶けるように消えていく。
「一日の 旅おもしろや 萩の原」
「おかえりなさーい」
開派筆頭である正岡の俳句が聞こえる。彼女が出迎えた。正岡から取れた道具を受け取っている。特務司書である彼女はまだ十代前半だった。
国定図書館の別館、こぢんまりとした建物で茶色の長髪に緑色の瞳をしている長袖とロングスカートを着た彼女は錬金術師、アルケミストだ。
この国は今、未曾有の危機にさらされている。
ある日突然、文学書が全て黒くなっていくという異常現象が発生し、黒く染まっていく文学書は次第に人々の記憶から失われ、忘れられるという状況になっていった。
負の感情から産まれた「本の世界を破壊する侵蝕者」達に対抗するため特殊能力を持つ錬金術師、アルケミスト達はその能力により文豪を転生させ、
侵蝕者を追抜している。
自分達は喚ばれて、文学書を守るために侵蝕された文学書に潜っては負の感情と戦い浄化している。そして彼女はそんな彼等を転生させたり、補修したりしている。
「今日の分はこれでお仕舞い?」
「うん。今のところは、次は借金苦と南吉君とか入れて別の所、巡る」
借金苦は石川啄木のことだ。勉強をしているとは言え、彼女は自分達文豪についてはさほど詳しくない。借金苦は石川啄木のことだ。
石川啄木が銃を持って食らえ必殺借金苦なんて言ったため、彼女は咽せたのだ。ツボに入ったらしい。
「さっさと飯食おう、ワシ、腹減ったわ」
「治療が終わってからね。結構侵蝕されたりしているし」
彼女は笑うと行こうと皆を促していく。
侵蝕は本の中で戦うと起きる現象で具体的に言えば侵蝕者達に攻撃されれば自分達もソレを受けていく。進めば戦えなくなったりするが、たまに怒って一撃を当てたりもする。
持つか持たないかは、文豪達による。彼女は秋声を結構侵蝕されやすいと答えていた。
敵は嫉妬やらどろどろとした気持ちを自分達にぶつけている。
ルーチンとしては完全に空腹になる前に食堂で食事だが、修復の方はこまめにやっている。
「他の侵蝕されている本は、僕のあらくれもそうだが」
「あたし達は山月記までだけど、残りは、あらくれ、蒲団、ぼくとーきたん、舞姫、破戒、暗夜行路、痴人の愛、D坂の殺人事件、坊ちゃん、走れメロス、注文の多い料理店、高野聖、歯車」
確認のために改めて聞いておく。
侵蝕が特に酷いらしい本を彼女は言っていく。一部伸ばして言っているが漢字が読めなかったフシがあり、少ししてから読み上げたのだ。
あらくれは自分が書いた本だが残りは江戸川乱歩だったり夏目漱石だったり宮沢賢治だったりする。文学に慣れ親しんでいなくてもタイトルぐらいは聞いたことのある本もある。
特務司書は他にも何人か居て文豪達を率いて追抜しているようだが、秋声も彼女も逢ったことはない。
上がほどよくやって良いと言っているようなのでマイペースにやれていると彼女は笑っていた。
「山月記は何とか今週中に突破できたら良いが……」
「無理せずにね。メインである皆にほどよく頑張って貰わないと」
行きましょう、と彼女は笑う。
良く笑うと他の文豪達は言うが秋声としては、
「お司書はんはワシ等に無理かけんようにしてくれとるからな。かけるときはかけるけど」
織田が言う。織田との付き合いは転生してから一番長い。自分が猫によって起こされてから、人数欲しいので一人取ってきましょうとか言って来たのが織田だ。
取ってきましょうって何だと思うことはあるがやることは素潜りみたいなものだよねとか返されている。確かにそうだが。
山月記は侵蝕がされた文学書の一つであり書いたのは中島敦、転生している。自分と織田と菊池と正岡がメインと言うが突破する係のことだ。
武器バランスとメンタルバランスを取ってみたとか、正岡と菊池が先に行っているため秋声と織田は後から着いている。
「全く、君と言い、笑いすぎだよ」
「笑えばええことあるやろ」
(そこが似ているんだ)
口には出さない。
転生した自分達が前の記憶やら何やらで出来ているけど転生言っているよ百パーセント転生したら色々危険な人居るみたいだし、なんて彼女は言っていたが、
そうだろう。しかし、この世界に喚び出されたのは事実なのだ。
織田作之助は死んだのは三十代、生前は結核で学校が卒業出来なかったりしている。自分はと言うとかなり長く生きた方だ。
彼女にしろ織田にしろ笑うのは楽しいからと笑っていないとやっていられないというのが、あるのだろう。
「速くー」
「急かさないでくれ」
「急かすやろ。コレから飯や」
すでに建物を出た彼女が呼びかける。正岡と菊池が側に居た。織田がペースを速めた。秋声はそのままのペースで建物を出た。
「ムシャさんの僕が望む理想郷に悪はいらないって理想郷にアルカディアってルビ振りたくなるよね」
「ワシの望むアルカディアに悪はいらない……」
「アイツの口調で言うから良いのであって、お前の場合、ワシ等の理想郷に悪はいらんわ、ってところか?」
食事を終えてから午後になり、秋声は暇になったものの、やることもなかったので彼女を見ていることにしたが、そこに織田と菊池が居た。
関西弁は苦手だからこれぐらいでな、と菊池が言う。
四角いテーブルに彼女が椅子で座り側には織田と菊池、秋声は離れたところに座っている。
現在潜っているのは『田園の憂鬱』著者は佐藤春夫だ。別のタイトルでは『病める薔薇』とついていることもあったが、そっちの方が格好いいじゃんと言うのが彼女だが、
何かしろのかっこよさを彼女は求める。
潜っている開派は武者小路実篤、新美南吉、石川啄木、島崎藤村だ。鍛えつつ、自分達を開花……能力を上げるために必要なことであり道具がいる……させるための道具を集めている。
自分達に優先が振られつつも、他もバランス良く上げている。
テーブルの上に本が置かれていてそこから映像が展開されている。この面子ならば運が良ければ最奥の侵蝕者とも戦える。
運が着くのはたどり着けるかどうかがかかっているのだ。
正岡子規は森鴎外と体を鍛えに外に居る。
「志賀さんとムシャさんは仲良しだよね」
「同じ白樺派だからな」
菊池が答える。白樺派は同人誌、白樺を中心にして起きた文芸思想の一つだ。
仲良しというか志賀直哉の方が振り回されているというか、転生した自分達は前の関係を引きずっているところもある。自分がそうだ。泉鏡花のこともある。
やや輪から外れたところで秋声は彼等を眺めていた。
「秋声さん、未だに師匠さんとか泉さんとか喚べないけど誰かがいつか喚ぶから」
「別にいい」
「……残りの葉門四天王とか来ると良いよね。小栗風葉さんと柳川春葉さん」
格好いいよね四天王とか前に聞いた。四天王という響きが好きなのか、地味な方だったのに。
数多く居た師匠である尾崎紅葉の門下の中で、自分と泉鏡花、小栗風葉と柳川春葉で葉門四天王とか藻門下四天王とか呼ばれていた。
「この分やとアイツ等、最奥に行けるみたいやな」
「侵蝕もこれぐらいだから……十二分に行ける、はず。予定外がなければね」
本の世界に潜れるのは文豪だけであり、彼女は外で指示をするぐらいだが、必ず着いている。このまま進んで、と彼女は言う。
はず、と着けるのは予想外の事態があることもあるから曖昧にしている。
「予定外か……」
「大事なのは人数だよ。四人じゃなくて六人とか放り込めれば……」
「無理らしいな。最大でどうにか四人とか」
侵蝕された世界に行けるのは最大で四人、人数は大事は何度も聞いている。弱っている敵を狙えとか効率の良い敵の倒し方とか、特務司書になる前の知識が元らしい。
秋声は彼女のことを余りよく知らない。司書ではなく特務が着いているので能力採用、司書のことは本で読んだぐらいとか読む本も偏っているとか、
かっこよさを求めていて中島敦の驚かないでくださいも二重人格には余り驚かずに虎になると思ったとか答えていて、文豪達にも、
書いた作品を元にした奥義使おうとか言い出すし、双筆神髄や筆殺奥義では足りないのか、アイツ。
「最奥着いた。アイツ等、屠ってきてね」
『頑張りますよ!! 屠ってきます!!』
晴れやかに屠ると言う彼女に武者小路実篤が答える。
「明るい系二人が屠ってくると言うと寒々しいな」
「全くや」
「そう?」
織田と菊池の言葉に彼女が首を傾げる。
「秋でまだ暖かい方なのに冷えるじゃないか」
自分もそう、答えておいた。
今日の仕事は終わりと彼女は言う。一週間のうち、二日を休みに当てて残りは潜書をしたりして過ごす。特務の方だけしている。
彼女は建物を出ると鍵をかけた。居るのは秋声と彼女だけだ。
昼時はまだ温かだったのに、夕方になれば寒い。
「寒いね」
「……寒いな」
「「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ」
「短歌か」
「サラダの人が作ったんだって。……山月記が突破できたら次はあらくれだよ」
サラダの人って誰だとなるが、自分が死んだ後の文豪だろうか。彼女の文学系の知識は偏っている。
最奥にたどり着いた者たちは無事に浄化を完了させて、そこからまた潜ったり食事を取らせたりとしてこんな時間だ。宿舎までは歩かなければならない。
「僕の本だな」
「これから読むよ。日本語で書かれてて、それでもって貴方にあうかもとか言われた」
「日本語って、僕が書いた文も日本語だ」
「旧仮名遣いだし」
貴方にあうかも、なんて誰がそう言ったのか、
彼女が文学を読まないのは言語読みづらいとかあるらしい。旧仮名遣いだからだとか、それでも別の方面で理解はしようとしているようだ。
先は長いので焦らないようにしているとは彼女は答える。
秋声の前を歩いていた彼女は立ち止まる。それから伸びをして深呼吸をしてから、歩き出そうとして、転けかけた。
「おい」
慌てて支える。
「暗くなってきたからさ。ありがとう」
「疲れて、いるんじゃないか」
「休むようにはしているんだけどね。ここだと畑とかはしてないんだけど……」
彼女は体には気をつけるようにしていてきっちりと休みと戦う日を決めて、三食食べて寝るように体調管理をしているが、疲労は来る。
「歩けるかい」
「離してもらえれば」
秋声が離れれば彼女はバランスを取る。明日は休みだ。出撃をそれなりに緩く出来るのも彼女が館長と交渉したからだ。
彼女は欠伸をすると帰り道を進んでいく。秋声が着いていく。国定図書館内部はかなりの広さであり、夜道だと万が一何かに襲われたらどうするのだと、
誰か文豪が着いていることにしている。彼女はあの時困った表情をしていた。
「休むときは休め。着いているのに疲れるならば離れていても……」
「文豪も、刀装みたいなのがあれば良いのに支えるのは何って聞いたら酒と薬と女と金とか答えられるし、賢者の石ってお守りだしもうちょっとその辺なんとか……無理だよね。
精神不安定が怖いし……文豪にアイツ等みたいなのを求めるのは無理だしそもそも文豪って戦闘するものじゃないけど……」
小声で何か話している。
文豪は戦闘をするものではないというのは同意する。同意はするのだが、今はそんなことは言っていられないのだ。アルケミストの力と文豪の力で文学書を守らねばならない。
黒く染まった本はいずれ人々の記憶から忘れられてしまう。
彼女は答えるところは答えるが曖昧にしているところはとことん曖昧にする。ちょっとの付き合いで分かってきたので秋声は話題を変えた。
「君は、本は好き?」
文学ではなく、本と言う。
「好きだよ。でも、漫画とか大衆文学っていうかラノベ……って分からないか。そういうのばかり読んできたんだ。だから舞姫と伊豆の踊子の区別着かなかったけど」
「初見で聞いたら同じように聞こえそうだね」
前者は森鴎外、後者は川端康成が書いた小説だ。
「金色夜叉も夜叉が襲ってくる恐怖小説と思ってたし、読んでみたら謎の文章だったよ。師匠さんあんなの書けるの凄いね」
「凄い、がずれている気がするが、アレはそういう文体なんだ」
金色夜叉は秋声の師匠である尾崎紅葉が書いた小説だ。雅俗折衷文と呼ばれる地の文は文語体で会話文は口語体で書かれている。古めかしい文章に入るので読み慣れていなければ謎の文章だ。
彼女にとっては旧仮名遣いも謎の文章の部類に入る。
ちなみにまだ師匠は居ない。あの世話焼きの師匠は出てきていない。存在は確認されているのだが、まだだ。
「読みやすそうなのから挑戦してるから。横光さんの蠅は読めた」
「アレは短いだろう」
横光利一の蠅はとても短い。
「今日はすぐに寝て、明日は正岡さんとキャッチボールしてからだけどね。誰も野球しないらしいから」
「よっぽどじゃない限り文豪に運動を求めるな。……戦闘については仕方が無いけど」
「全くだね」
前を歩いていた彼女が振り返り、笑う。
街灯の明かりと月明かりで表情がよく見えた。
(笑って、くれた)
安堵と喜びがある。彼女はいつも笑っているが、きちんと、本当の意味で笑うことは余りない。明るく振る舞っているようで何かを気にし続けている。その辺りは織田作之助に似ているが、
織田作之助がかつての未練に縛られているのと違い彼女は今の未練に縛られている。
ごくごくたまに見せる笑顔が本当の笑みだと秋声は思っている。
「ご飯は暖かいものがいいな」
「猫舌じゃなかったかな」
「……ほどよく冷ますからいいの。早く行こ」
織田作に猫舌をからかわれたことを想い出したのか、声のトーンがやや落ちる。
子供のように……実際子供なのだろうが……話す彼女に秋声は表情を緩めると帰路を急いだ。
【Fin】
スタンプありがとうございました