風邪をひく子ほど丈夫に育つ

NEW!

テーマ:

免疫は、2つの系統にわけられます。「自然免疫系」と「獲得免疫系」です。

自然免疫系とは、生体における常設の防衛部隊であり、獲得免疫系とは緊急時に動員される後方部隊と言ってよいでしょう。

このうち、自然免疫系を担うのは、先ほどお話ししたNK細胞に加え、マクロファージ、好球球という免疫細胞です。一方、獲得免疫系は、Tリンパ球やBリンパ球です。

ではなぜ、細菌などの微生物が身の回りにいて、常に体内に侵入してくるような生活が、免疫力を高めてアレルギーを防ぐのでしょうか。

それには、自然免疫系の力がおおいに関与しています。

私たち人類が地球上に誕生したのは、およそ700万年前、この地球上で生きてきた時代の大部分を、人類は細菌やウイルス、カビ、寄生虫などの微生物と隣合って暮らし、攻撃にさらされて生き抜いてきました。自然免疫システムは、それら外敵からの攻撃をたえず受けてきたのです。人類が地球上に生き残り、数を増やしてこられたのは、自然免疫システムの防御が強固で、非常にうまく働いてきたからです。

とくに自然免疫システムは、外敵からの絶え間ない攻撃にうまく対応し、即応性や有効性の機能を向上させてきましたり細菌やカビ、酵母の細菌壁に存在する「β-グルカン」という化合物の分子を認識することで対処してきたのです。

昔は、人の食べるもののほとんどに細菌やカビ、酵母などが付着していました。それらを食事とともに日常的に摂取することで、自然免疫は鍛えられていたのです。

この自然免疫こそが、アレルギーを防ぐ最大の砦です。自然免疫がしっかり働き、外からの侵入してきた敵をたたき殺すことができれば、後方部隊の獲得免疫は働かずにすみます。こうなると、アレルゲンとなる物質に抗体が作り出されることもないのです。

ところが、乳幼児の感染経路が減ってしまうと、自然免疫は鍛えられるチャンスを逃し、うまく発達しなくなります。結果、獲得免疫もしっかりと育たなくなります。

「風邪を引く子ほど丈夫になる」といいますが、これは真実です。それによって自然免疫が立派に育ち、獲得免疫も正常に成長します。幼児期の細菌感染が自然免疫を担う細胞を活性化し、あとに続く獲得免疫の反応の方向性を決めているのです。

反対に、乳幼児に超清潔な環境で過保護に育てられてしまうと大変です。自然免疫が未発達になって、その弊害が獲得免疫にまで及びます。「弱い犬ほどよく吠える」のたとえのように、なんにでも過敏に反応するアレルギー体質になってしまうのです。

今、欧米では「衛生仮設」を支持する報告が増加しています。アレルギー患者は先進国のみで急増しています。原因は、乳幼児の感染機会の減少にあるとする仮設です。

抗生物質の使用の頻度が増加し、乳幼児の感染機会が著しく減りました。それと反比例するように、アレルギー患者が増加したことが注目されているのです。

30年ほど前、「環境衛生説」が唱えられたとき、日本の医学会からはまったく見向きもされていませんでした。しかし、最近になって、欧米の学者たちからのアレルギー発症の衛生仮設が発表されると、日本の学者たちもいっせいにその説に賛同し始めました。今、欧米では「土を食べよう(Eat Dirt)」という運動がさかんに行なわれています。「自然ともっと親しみ、身の回りの微生物とおおらかに接しよう」とする考え方です。




AD