かたわれどきとたそがれ2

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2025-02-25 23:12:18

地味に進んでいくのはある

Posted by @akirenge

【かたわれ時と黄昏時と 2】

戦というのは華々しいのだけれども、戦費がかかるし、名誉や金のために戦うことはあっても、宗像波瑠の所属している軍は戦嫌いであった。
自分たちの領土が守れればそれでよし。の方向性で動いていた。

「天下ね……

京都で、一番偉い人こと自分が楽しみたいからだと征夷大将軍の位を放棄しようとしていた男と仲間たち共に多々かかっていたらこの世界に来てしまった波瑠は
住むことになった村の自分の家にて脳内にて村のことや先のことの予定を立てていた。朝方、今日も平穏に過ごせればよいとなっている。
この村はタソガレドキの領地とドクタケの領地の間にあり、どちらも天下を目指しているようだ。天下、甘美な言葉なようで目指すものはそうはいない。
大抵は自分たちの領地や安全が守られればいいのだ。簡単に天下というが領地の維持というのは大変なのである。
戦好きのドクタケと領民には優しいが他には厳しいタソガレドキ、どちらにつくかと言えばマシな方になり、タソガレドキだ。

「考え事?」

「予定をね。ドクタケの方は今のところは静かだとか」

恵利が話しかけてくる。換気のために戸は開けて置いていた。涼しい風が入ってきた。恵利はこの世界で出会った者で、託されたので面倒を見ている。
金子も預かっているのだがこれは自分では手を付けていない。金については困っていないのだ。元の世界で所属している軍である毛利軍は資金豊富であり、
主である毛利元就の側近をしている彼女は給金がとてもよいのだ。尼子の領地を削って銀山を手に入れたのもあるし、出費を抑えるところは抑えているので、
毛利軍は資金はある。

「タソガレドキは」

「様子見。村のことはしておかないと」

「大変だわ」

「魅力で人を惹きつけても全部がうまくいかないから」

村のことと纏めてしまっているが、村は惣という自治組織を作っている。惣の長は乙名と呼ばれてる老人がまとめていることが多いが、この時代、老人まで生きることが
出来るのはまれだ。人間は直ぐに死んでしまう。戦で、病で、理不尽なことで。
簡単に蹂躙されるし、自分たちの身は自分で守らなければならない。領主をあてにするなら自分たちがとなったりもするが領主が無理を言ってくるからだ。
人間は皆、考えることが違う。

「茶屋だけど、手伝いを雇うと聞いたわ」

「仕事が忙しくて。蔵周りの方が紹介してくれた子で、働き者だというから、まずは試しで」

……どうして茶屋で働いているの? 貴方、医者だし、他のこともできるのに」

疑問をぶつけられる。
医者なのになぜ茶屋で働いているのかと問われてばかりだ。医者のことやらやれることはしているのだけれども、そこは不思議に思われる。

「友人がね。何もなかったら茶屋でもやりたいとは言っていたのよ」

主の隠し刀ともよばれている忍びであり、友人である彼女は料理好きであった。つかの間の平穏の時に作っていたのだ。
何もなければと話していたが、つかの間の平穏を挟んでは戦ばかりであった。あの頃。
元の世界がどうなっているかは不明であるが今、目の前のことを波瑠は片付ける。



茶屋は村の入り口付近にあり、村自体がタソガレドキ領とドクタケの領地の間にあるため、人の行き来が盛んだ。老夫婦の手伝いで波瑠は茶屋をやっている。

「智吉さんの紹介できました」

「貴方が?」

手伝いが、アルバイトが欲しいと想っていたのだ。
茶屋に行きかう人々の話を聴いたり、会話をしたりしていると蔵周りをしている……蔵周りとは各地の蔵を回り、質流れの古着屋古道具を回収していく人である……
智吉という男の人がと出会った。手伝いが欲しいとふと話題に出したら知り合いの子を紹介してくれるといったのだ。

「始めまして、僕はきり丸って言います」

「始めまして。私はさやか。よろしくね」

さやかは偽名だ。知り合いの名から借りている。

「摂津の方からこっちに来て、暮らしています」

摂津とは、近畿地方にある国の一つだ。波瑠の故郷である安芸からは離れている。彼女の認識としては堺との緩衝地帯だ。
堺には厄介な勢力がいて、警戒をしていたものである。豊臣軍、軍事が強く、こちらもたびたび狙われそうになっては戦になる前に回避をしつつ、
なったらなったで有利なように立ちまわったものだ。毛利軍は侵略者には断固として戦うのである。
名字が地名については触れない。戦災孤児だろうかとなる。この時代、繊細に巻き込まれる人間は沢山いるし、子供だってそうだ。
さやかとは元の世界の知り合いの名だ。

「仕事は何をすればいいんです? なんでもやりますよ」

「頼もしいわ。店番をしてほしいの。甘酒を作ったから、それも売って欲しいし」

「甘酒を売るんだ」

「試飲で出すから」

声が元気でたくましい。店番を頼むことにした。老夫婦は今日は休ませている。
甘酒は作りやすい飲み物である。米を蒸して、糀と混ぜて作るのだ。作るのに時間がかかる時はかかるが短縮する方法もある。
湯呑みを持ってきて、甘酒を入れて、きり丸に渡す。甘酒は一日、持ちそうなぐらいには仕込んだ。

「美味い。甘酒売りのバイトは今まで他の所でもしてたけどこの甘酒、一番おいしい」」

「嬉しいわ。疲れた時には甘いものがいいし、しょうがを入れるとさらに美味しいの」

甘酒は毛利軍でよく作っていた。主である元就は酒が飲めるけれども嫌いだったのだ。兄と父親は酒の飲みすぎで死んだからである。
当時の安芸は弱小勢力で上に立ったらたったで気苦労もひどく酒に逃げるのも仕方がなかったと元就が言ったことは覚えている。

「オプションでつけましょうよ。売る時ですけど女装したらさらに売れるかも」

「危ないから女装は止めて。今回はこのままで売ってほしいわ」

女装をすれば可愛くなるだろうとはなりつつも、ここを行きかうものは善人ばかりではない。騒ぎは起こさないようにとはしているにしろ、
不安要素は排除しておくべきである。

(元の世界より力が落ちたし、私の武器って目立つから)

それなりに戦える。戦う術を身に着けるしかなかったのだが、戦闘方法もあり極力戦いは避けている。騒ぎは起こさないほうがいいのだ。



きり丸が智吉からタソガレドキとドクタケの領地の間にある村にある茶屋でアルバイトを募集していると聞いたのは
忍術学園そばの町であった時だった。忍術学園、近畿地方の山の中にある金さえ払えれば忍術や礼儀作法を教えてくれる学園だ。
彼は忍者の卵である忍たまだ。一年は組所属、戦災孤児であり、学費は自分で稼がなければならない。

「毎度ありー」

「甘酒、仕込んだ分は売れそうね。きり丸君のお陰よ」

「さやかさんが作った甘酒が美味しいからですよ。それにここ、いろんな話が聞けるし」

「そうね。チャミダレアミタケは戦好きとか」

「あそこはそうすっすね」

村の客も来ることもあれば、旅をしているのも来ている。村のものはさやかが子供を助けてくれたとか言っていた。
彼女は医者らしい。賑やかな茶屋で接客をして旅人を見送り、小休止に入る。
甘酒は殆どを売り切っていた。

「この辺りが戦になるのは避けてほしいけど」

「大丈夫っすよ。タソガレドキに戦を挑むとか馬鹿なことはしないんで。あそこも戦好きだけど」

チャミダレアミタケは戦好きだ。さやかとしては戦は避けてほしい方向のようだ。住んでいる村が戦に巻き込まれてほしくはないのだろう。
きり丸としては生まれ育った村は焼け落ちているし、帰る場所はあるものの、戦と言えば儲かるの方が強い。

「俺としては良く下がれば戦場で弁当売りが出来るし、戦は儲けられるからアルバイトをするのに都合がいいし」

「戦のときも経済を回しておくのは大事よね。――小競り合いにしろ、騒がしいから」

声が気落ちしている。きり丸が彼女と話していると機嫌のよい男の商人がさやかを見て手を振ってきた。

「さやかさん、この前はありがとうございました。お陰でタソガレドキの城下町で商売がうまくいったのもあり」

「私は話を聞いて、貴方と話しただけよ」

「これ、お礼です。欲しいと言っていたので」

男の商人は彼女に手のひらに載るぐらいの壺を渡す。

……まさか」

「人づてではありますが、黄昏甚兵衛様に商品を買ってもらい、何が欲しいかと聞かれて」

「いいの? ありがとう」

彼女は目を見開いていた。壺の中身は彼女の欲しいものであったらしい。彼女は甘酒をサービスで振る舞っていた。
商人が帰る。

「それ、お宝!? 金儲け?」

「料理に使いたくて。手に入れるのが大変なもの」

「? 料理?」

「お砂糖」

砂糖、と言った。
貴重品である。というのも砂糖は南蛮貿易で輸入に頼っているからだ。輸入品しかない。壺の中の砂糖も貴重品である。

「しんべヱのパパさんが良く輸入している」

「輸入? お友達に商人でも?」

「あ、はい。しんべヱっていう俺の友人がいて、堺の商人の息子で」

……堺、賑やかなところそうね」

しんべヱの名前を出してしまったが、彼女はそれぐらいしか触れなかった。目を細めている。

「さやかさん、お金儲けとか得意……?」

「んー得意かどうかは、困っていたようだからできる範囲での助言をしたぐらいだし」

「金はあると生活費になったりするし、困らないんで。身も守れるし」

……そうね」

困ったように彼女が微笑んでいた。生活費というのは大事だ。金は身を守ってくれる。話していたら、客が来た。
女性客二人に甘酒を売り営業をする。接客を続けて甘酒はすべて売り切れた。そろそろ夕方になりそうである。

「売り切れた」

「今日の仕込んだ分はすべて売り切ってしまったから閉店ね。助かったわ。アルバイトの代金は待ってて」

「はーい」

上々だ。彼女はどれだけくれるのだろうとなる。店の奥に引っ込んだ彼女が暫くして帰ってきた。
笹の葉包みを持っている。

「まずはこっちがアルバイト代。智吉さんが貴方を紹介してくれて助かったわ」

はい、ときり丸の手に彼女はアルバイト代を乗せた。数えてみる。

……あの、これ、多い」

智吉は一日働いただけの料金を教えてくれていたし、きり丸もそれでよかったので受けたのだが、それよりも賃金は多かった。

「貴方のお陰で助かったところがあるもの。良かったらまた働いてくれるかしら。こっちは団子。お友達と食べて」

柔らかく彼女が微笑んでいる。きり丸を甘く見ているのではなく、正当に評価して賃金をくれている。

「今度は女装して甘酒を売るんで! 明日でいいっすか!?」

「良いわよ。やることによってはお店を任せるかもしれないけれど」

「頑張るんで!!」

忍術学園は今日と明日が休みだ。明日は休もうとはしていたのだが稼げるときには稼いでおきたいし、他のアルバイトを掛け持ちしなくても
やってけそうだ。彼女が喜んでいる。
――困り顔よりも、ちゃんと笑ってた方がいいな。
きり丸は、口に出さずに想う。



波瑠はきり丸を見送ってから厨房で仕込んでおいたものを取り出すことにする。
砂糖が手に入った。
この時代、砂糖は異国からの輸入だよりだ。貴重品なのである。波瑠は酒粕を取り出すと鉄製の鍋に入れてそこに水瓶から水を入れた。
火にかけておく。火にかけてから砂糖を投入。味見。

「出来た」

酒粕の甘酒だ。砂糖があれば作ることが出来た。甘酒というのは二種類ある。米麹で作る甘酒と酒粕で作る甘酒だ。
前者は米麹や米があれば比較的に簡単に作ることが出来るが、後者には砂糖がいる。酒粕だけで作ると甘味がないのだ。
米麹の甘酒では子供でも飲めるが、酒粕の甘酒は少し酒精がある。

「晩御飯は……家に帰ってからね」

今日は恵利が作ってみると言っていた。あの子も出自が出自だが、やってみることにしたらしい。湯呑みに酒粕の甘酒を入れて飲む。
久しぶりに飲む味だ。どろりとしている。飲みほしてから、店を出る。

「今日はもう、閉店かな」

穏やかな声で、背の高い包帯を巻いた僧が店を訪れた。

「生憎、と言いたいところだけど来てくれたので、待っていて」

逢ったのは二度目だ。この辺りの僧だろうかとなる。村の僧侶ではない。作っておいた酒粕の甘酒を湯呑みに入れて、僧に渡す。

「甘酒……にしては」

「別の作り方にしてみたの。大量に売ることはできないのだけれども」

彼は甘酒をゆっくりと飲み干している。包帯を巻いている僧は大やけどを負っているようだ。火事にでも巻き込まれたのだろうかとなる。
少しだけ見えた肌から判断した。

「どろりとしている。これは、酒粕で」

「酒粕を煮込んで。砂糖で味付けをしたものなの。これはこれで美味しくて」

「砂糖を使うならば大量には作れないか。よくそんな調理法を知っている」

「故郷で。変わ……個性的な人たちが多かったから」

……言い方を柔らかにしていたが、変わったと言おうとしていなかったか?」

故郷と纏めてしまうが毛利軍も関わってきた人たちも個性的だった。変わっていたでもあるが。

「これで茄子を付けても美味しいのよ」

「食べてみたいものだ。砂糖はどこから」

「タソガレドキの城下町で商売をしている商人さんが、助けてくれたお礼にって、話を聞いて話したぐらいだけど。城下町は賑やかなところだと聞いたわ」

「行ったことはないのか」

「村からそう、離れられなくて」

砂糖については答えておく。
タソガレドキの城下町も、ドクタケの城下町も言ったことはない。町を見て回ることは好きだ。

「茶屋も忙しいようだからな」

「今日、アルバイトで雇ったことが、とても優秀で。まだ子供だったけれど、お金儲けにいそしんでいて、危険なことに首を突っ込みそうだったからここできちんと雇おうかとか」

「優秀な子だったのか。危険……とは」

「お金があればというのはその通りだけれども、――お金があっても守れないものはあるのよね」

全てが焼け落ちていた。
全てが死んでいた。
降った預言が気になり動いた毛利はその一部始終を目撃することとなった。
魔王がやった。
本願寺は跡形もなく壊された。
金にこだわっていた寺は燃やされ、僧は殺され、屠られた。友人がさやかを連れ出して戻ってきたものの、戦っていた者たちは魔王達に全滅させられた。
後に西側を巻き込んで防衛戦をすることになり、策を打つに打ち時には戦い、防衛は出来たものの、かなり危なかったのだ。
本願寺のまとめ役であった僧侶、本願寺顕如は金好きの僧侶であったし、アレを僧侶とは呼ばないほうが良いとはなっていたものの、
死ぬに死んだ光景は忘れられない。

「それはある。金があったとしても、あることにこしたことはないのだが」

「危ないことばかりだし、子供が危ない目に合うのは嫌なのよ。それにやることも増えていくから」

「増えていくのか」

「茶屋では働き続けたいけれども」

医者としての仕事がないことはいいことである。けが人や病人が少ないからだ。村関係のことの助言をしたりしているが、舵取りを上手くやらねばならない。
戦はないとはいえ、戦が始まろうとしていると巻き込まれるのはこの村や周囲なのだ。

「もう一杯、貰えるかな。代金は払う」

「どうぞ。お坊様」

貰い物で作った酒粕の甘酒だ。彼が所望していたので波瑠は用意をしようとする。

「私は昆という」

「こんさん……よろしくおねがいします」

「貴方は、さやかと」

「はい」

本名は宗像波瑠だが、さやかとは名乗り続けている。この世界ではその名で通し続けるだろう。僧の名を昆と知った。
波瑠は甘酒を自分の分も入れることにした。



タソガレドキ城の忍び頭、雑渡昆奈門は昆と名乗っておいた。村は緩やかに部下に警戒をさせているが日常を過ごしているだけの村だ。
村長が変わったりもしていたが、病死であったらしい。村々の動向にも気を配っておかなければならない。
さやかと名乗った彼女と話したが、

(どれだけの戦を経験したのだろうね?)

薄暗い。どろりとした闇。
この時代、戦は珍しくはないし彼女もいもうととともに流れてこの村にたどり着いたようだがそれを抜かしても戦に関わり続けた者であるようだ。
理不尽さが溢れる世界で闇を味わい続けながらも、光を失わない。
興味がさらに深まる。砂糖のこともそうだが、この戦国を渡り歩けるぐらいの。

「明日も来てくれるみたいだから助かる」

「この茶屋は繁盛しているようだ。私が来るのは夕方だが。静かなのは悪くはない」

「お団子、食べてほしいのだけれども」

アルバイトとして雇った子に心当たりがありつつも、情報を纏めておこうと考えながら、彼は部下に村の見張りは続けさせておく。


【続く】

【土産と決まり切っていた答え】

「ただいまですのー!! 時雨花乃、帰還しましたわー」

――煩いのが来たわ」」

厳島の境内に明るい声が響く。拝殿にて日を浴びていた元就は煩そうに目を細めた。
朝食を食べ終わった元就は休んでいたのだ。波瑠は体調不良を起こしていた巫女の看病をして元就のところに来ていた。

「静かに来た時は、騒がしくないな。貴様って返しましたわよね。元就様」

外見は十代後半から二十代前半、赤と白の巫女服基調とした長い髪をかんざしでまとめた明るく、派手な者、時雨花乃は気にせず元就に挨拶を返した。

「花乃が大量に持ってきた土産、どうします? 越後の笹団子とかありますけど」

「碧香、貴様が花乃を連れて来たか」

「実家の船が送り届けて来たんで」

「おかえりなさい。花乃、碧香もご苦労様」

元就は訪れた二人に視線を向ける。村上碧香、村上水軍の者だ。外見は十代後半から二十代前半である。村上水軍は瀬戸内を本拠としている水軍だ。
碧香の立場は厳島神社の警護隊の者だ。主に船で島を警護している。場合によっては元就についていき戦をすることもある。
村上水軍は瀬戸内とかかわりを持つ、長曾我部軍、伊予河野軍がそれぞれ取り込んで勢力を取り込んでいた。笹団子を、と元就が呟く。

「中身は梅やきんぴらの塩っ気のあるものと、餡子がありますの」

「餡子」

「今回はどこへ行ってきたの? 越後」

「越後に前田家の所ですの。あそこは治安がいいですのよ。鶴姫に会いまして笹団子は保存してもらいましたの」

餡子と即答された。
元就は甘いものが好きである。花乃が餡子の入った笹団子を渡した。鶴姫、伊予河野の隠し巫女とも会っていたらしい。
越後に前田家ということは加賀地方だ。

「何か言うておったか」

「女子会に杙奈姉さまや波瑠姉さま達、参加しませんかって。私も誘われましたの。うちの女性陣、誘われていましたわ」

……そうか」

(予言、預言を気にしているのかしら?)

鶴姫、伊予河野の隠し巫女。彼女の予言は気楽なものもあれば、日本の命運を左右するものもある。日本というか、安芸だ。
何度も元就も波瑠も聞いている。本願寺の預言は酷いものであった。織田軍が近畿地方に攻め入り各地を荒廃させ、
西が巻き込まれかけたのを食い止めて追い返したのだ。

「何かあったら越智さんが言ってくるだろうし」

碧香が梅味の笹団子の入った笹の包みを手に取る。越智、越知安成、鶴姫の守り人であり実質伊予河野を動かしている男だ。
元就との付き合いも長い。外見は二十代の三白眼眼鏡だ。元就はなにかを考えている。

「お土産。杙奈や政定君。縁に燐火……本殿にも奉納するわ」

「杙奈様たちは?」

「外で花や畑を見ておる」

「じゃあ持っていきますの。挨拶もしたいですし」

「花乃は見聞したものを伝えろ……波瑠。貴様が持っていけ」

「あたしは?」

花乃が土産を持っていこうとしたら、元就が制止する。他の者たちは畑にいるようだ。畑は作物もそうだが波瑠の薬草を育てているところもある。
元就は花乃の話を聞くことにして、波瑠に土産を持っていくことを頼んだ。

「残れ」

「届けてくるわ」

毛利軍は情報を集めては精査し、元就が方針を決めている。各地に忍びが放たれているが、これはほとんどの勢力がやっていることだ。
忍びに情報収集をさせる。花乃は忍びではなく武将だが歩き巫女や旅芸人を名乗って各地を旅していた。
碧香にも残れと言ってくる。波瑠は土産を抱えると畑仕事をしている者たちに土産を届けに歩いていった。


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