ノベルスキー
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GQuuuuuuX放送前シャア帰還if妄想
ゼクノヴァの悲劇から七年が経ち、赤い彗星は再びソドンに戻って来た。
⭐︎
ソドンのデッキにジークアクスを係留させたエグザベ・オリベは、外に出て低重力下を飛んだ。向かった先には灰色のモビルアーマーがある。コックピットが開かれており、その中には気を失ったパイロットの姿が見えた。
「中佐!」
エグザベより先に駆けつけた男がシャリア・ブルの身体をコックピットから出そうとしている。旧式の赤い軍服を着た男だ。
その男はシャリアの肩を担いでコックピットから出ると、エグザベに視線を向けた。話に聞く「赤い彗星」はマスクをかぶっているはずだが、彼はかぶっていなかった。それでもエグザベは彼がシャア・アズナブルだと分かった。
「エグザベ・オリベ少尉。シャリア・ブル大尉……いや、中佐は私が医務室に連れていこう」
エグザベの驚きをよそに、シャアはシャリアを抱きかかえ、デッキから通路へと行ってしまった。周囲のクルーたちが騒がしく反応していることを全く気にしていないようだった。
「待ってください!」
エグザベは慌てて後を追う。
⭐︎
二度目のゼクノヴァが起きようとした時、エグザベはそれを……そこで起きていることを見た。ジークアクスのコックピットにいながら、総てが見えた。明るい光の中のかの人のシルエット。
『シャリア・ブル中佐! どうか行かないで! 行っちゃ駄目だ! 中佐! 中佐!!』
ラ……ラ……
歌が聞こえていた気がするが、エグザベはそんなことに気を取られている場合ではなかった。もしゼクノヴァであるなら、その後に何が起きるのか想像するはたやすい。シャリア・ブルは搭乗しているキケロガごと消えてしまうに違いないのだ。
だから叫んだ。呼びかけ続けた。
どういうわけかジークアクスで駆けつけようとしても全くそこに辿り着けない。いくら進んでもシャリアに近づけない。
次の瞬間二度のハレーションが起き、眩しさにくらんだエグザベが目を開けると、そこにはキケロガと赤いガンダムが存在していたのだった。
⭐︎
エグザベが医務室に入ると、医療スタッフとシャアが気を失ったシャリアを簡易ベッドに横たえているところだった。すでにラシット艦長がやってきており、少し離れて様子を見ている。艦勤務のドクターがシャリアのバイタルを確認した。気を失ってはいるが命の心配はないとドクターが告げると、エグザベはようやく人心地がついた。
ラシットとシャアが話をしている。
「シャア・アズナブル大佐……でよろしいのですね」
「ああ。艦長、よろしく頼む」
ラシットに艦長と呼びかけるのは分かる。軍服を見れば彼女がこの艦の責任者であることは一目瞭然だ。
しかし。
エグザベの名前を、なぜ彼は知っているのか。
シャアがエグザベの方を振り返ると、エグザベは敬礼をした。
「エグザベ・オリベ少尉です。大佐は……その……」
言いかけて、何をどう聞けばいいのかとエグザベは口篭った。
「今のガンダムのパイロットだな。たい……中佐が世話になったようだ」
ニュータイプ同士なので言語以外の意思の疎通もある程度できるはずなのだが、その時のエグザベにはシャアの考えや感情が全くつかめなかった。それでもその言葉に含みがあるのをエグザベは感じた。
ドクターが患者の安静のための退室を促したので、彼らは医療室を出ることとなった。ラシットとシャアは互いの現状確認のために会話をしながら通路を進んでいく。エグザベは少し間を空けて彼らについていっていたが、彼らが艦長の執務室に入るとその扉はエグザベの前で閉まってしまう。
わずかばかり緊張が解け、エグザベは小さく息を吐いた。
艦内の人間たちの感情が浮き足立っているのを感じる(エグザベは読心の能力はやや不得手だが、感情を感じるとることができて、それはモビルスーツでの戦闘にも役立っていた)。無理もないことだった。英雄が七年振りに姿を現したのだから。
シャリアが探し求めていた男が。
⭐︎
シャリアが目を覚ますと、白い天井が見えた。少しの間を置いてから彼は起き上がった。
「大佐……大佐!」
「ここにいる」
シャリアが覚醒したことに気がついた医療スタッフがドクターを呼び、やってきたドクターが改めてシャリアのバイタルを確認する。
ドクターがシャリアに問診をしている間、シャリアは心ここに在らずといった様子でシャアを見つめていた。かろうじてドクターの質問に答えているという有様だ。
ドクターがシャリアにもうしばらくの安静を言い渡す。
それを聞いて、シャアは彼らに人払いを頼んだ。ドクターと何人かのスタッフたちが医務室を出ていく。
「もうしばらく横になっていた方がいい……随分と無理をしたようだから」
シャアはシャリアの上半身を支え、ベッドに横になるのを助けた。横たわったシャリアは掴んだシャアの手を離さない。
「大佐」
「うん」
「ここにいるのですね。本当に帰ってきたのですね。
刻
とき
の向こうから」
「そうだよ。ずっと君を見ていた」
シャリアはシャアの手を握る指先に力を込めた。
「君が昇進をしたのも、新しいソドンのクルーを集めたのも、ニュータイプ部隊を作り上げたのも、何もかも見ていた。だから戻ってきた」
「……」
シャアはシャリアが考えたことを完全に読み取った。
「そんな顔をするな。君があそこまで来て、ようやく君の手を取れたのだから」
「どうか、もうどこにも」
行かないで。
そこまででシャリアの意識が途絶えた。ゼクノヴァ寸前まで行って戻ってきたことの身体的負担が、安心とともに彼に押し寄せたようだった。
シャリアが安定した寝息を立てているのを確認してから、シャアは医務室を出た。通路の壁に背中を預け腕組みをしている男がシャアを出迎えた。
「来たまえ」
エグザベが何か言う前にシャアは一方的に告げると、振り返りもせずに床を蹴って通路を進んだ。
⭐︎
「報告すべきことは全て艦長に報告した。……君が聞きたいのは、おそらく別のことだな」
人払いの済んだガンルームに二人はいた。室内の壁にはスクリーンが掲げられており、現在はソドンの外の様子を映している。大きな窓のようなそのスクリーンを、シャアは特に感慨もなく眺めていた。背中にはエグザベの視線を感じる。
「預けたものは返してもらう」
「……っ!」
先ほどよりはシャアの思惑が読めるようになっていたが、そのことはエグザベには何の利にもならなかった。
「あの人は……ものじゃない」
「……」
シャアは少しだけ身体を傾け、エグザベを振り返った。
「君には感謝している」
柔らかい金糸の髪に碧い瞳。
シャアは姿勢と視線を元に戻した。
「君だけではない。この艦のものはみな彼に尽くしてくれている。この国では得難いことだ」
エグザベは理解した。シャアは自分の名を、シャリアの今の階級を、ソドンのクルーの仕事を、何もかも知っているのだ。
シャリアとエグザベの間に何が起きたのかも。
エグザベは耐えきれなくなって顔を伏せた。視界に入った床に、ぽたぽたと液体が散っていくのが見える。
「……お願いだ、あの人を連れて行かないで」
この七年間シャリアが直面していた感情を、今、エグザベは嫌というほど味わっていた。
シャアは黙って、目前の星々を眺めていた。
シャリアはニュータイプの素養のあるものを集め、素質のあるものをパイロットにし、ニュータイプに対応したモビルスーツを開発させた。それらは全てシャアの大いなる野望のため。エグザベもそのためのパイロットだ。
(ーー君は随分と罪作りなことをしてくれたな)
今やシャリアの力を必要としているのはシャアだけではなくなっていた。かといってそれを責めるわけにも行かない。
それが今の彼を彼たらしめているのだから。
とりあえずは後ろで悲嘆にくれている若き少尉をどう扱うべきか。シャアは顎に指を添え考えた。
1
ペユの瓦礫
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