自信ゼロ、経験ゼロ。それでも初主催に踏み出した理由
私は、課題を与えられるほうが好きなタイプだ。
枠があるほうが考えやすい。
条件があるほうが、想像力は広がる。
与えられたテーマの中で、どこまで自分の力を伸ばせるか。
その“最大値”を探す作業は、今でも楽しいと思っている。
だからこれまで、「任される側」でいることに不満はなかった。
けれどあるとき、少しだけ引っかかる感覚があった。
私はいつも、誰かが出した課題の中でしか動いていないのではないか。
与えられるのを、待っているだけではないか。
その違和感が、主催イベントをやりたいと思ったきっかけだった。
主催は、自分で目標をつくり、そこに課題を設定する側になることだ。
怪談イベントであれば、
来てくださる方を怖がらせて、楽しませること。
シンプルだけれど、責任のある目標だ。
正直に言えば、自信はなかった。
それでも踏み出したのは、
「待つ側」の自分から抜け出したかったからだ。
初主催となったイベントは
『八雲の帳(ヤクモノトバリ)』2025.3.15
共演者は、牛抱せん夏さん、御前田次郎さん、満茶乃さん。
フライヤー制作は、まことさん。
出演のお願いをするとき、正直とても緊張していた。
断られたらどうしよう、と何度も考えた。
けれど皆さん、本当に気さくに、快く了承してくださった。
朗読という要素を含むイベントだったため、原稿制作という大きな役割を御前田さんが引き受けてくださった。そのことは、今思い返しても感謝しかない。
準備段階でも、たくさんの力を貸していただいた。
照明や音響について具体的な助言をいただき、せん夏さんはご自身の照明機材まで貸してくださった。
会場の手配や細かな不安を相談すると、満茶乃さんはすぐにフォローしてくれて、「大丈夫!」と何度も背中を押してくれた。
振り返れば、私はすでに“頼っていた”。
それでも心のどこかで、
「最終的には自分がすべて理解し、こなさなければならない」
と思い込んでいた。
支えられているのに、
最後の責任だけは一人で抱えようとしていたのだ。
イベント当日。
事前に準備していたはずのマイクが、うまく繋がらない。
BGMとの関係で配線が混線し、音が出ない。
頭の奥が一瞬、静かになった。
どうしよう。
そう思った、そのとき。
共演者の方が、落ち着いた声で言った。
「こういうときのために、準備してあるよ」
事前にトラブルを想定し、別の方法を用意してくださっていたのだ。
さらに以前、こんな言葉ももらっていた。
「場数は踏んできたから、分からないことがあればすぐに聞いて」
その言葉を思い出した瞬間、胸の奥の緊張が、少しだけほどけた。
私はずっと、主催は全部できる人がやるものだと思っていた。
でも違った。
全部できなくてもいい。
信じて、頼る。
そのほうが、ずっと強いのかもしれない。
私はこれまで、ひとりで最大値を出すことに満足してきた。
大きな失敗があったわけではない。
むしろ、それなりにうまくやってきたほうだと思う。
けれど、グループで活動している人たちを見るたびに、少しだけ羨ましかった。
自分にない能力を補い合い、
単独では届かない場所に手を伸ばしているように見えたからだ。
今回のイベントで、その意味を体感した。
頼ることは、弱さではない。
限界を認めたうえで、その先へ進むための選択だ。
終演後。
「またぜひ開催してください」
その言葉をもらったとき、私はようやく深く息ができた。
自信が急に生まれたわけではない。
でも、ひとつだけ確信がある。
ひとりで完結する活動より、
誰かと広げる活動のほうが、遠くへ届く。
自信ゼロ、経験ゼロ。
それでも踏み出した理由は、
課題を待つ側の自分を越えたかったから。
そしてもうひとつ。
誰かと並んで立つ景色を、見てみたかったからだ。
次にやるときは、
“ひとりで頑張る”のではなく、
“みんなで広げる”イベントにしたい。
その景色を、もう一度見てみたいと思っている。
そして今。
また、次の一歩を踏み出そうとしています。
次の物語も、誰かと一緒に。
どうか、見届けてもらえたら嬉しいです。
東京黒鬼夜行〜小泉八雲の世怪
日時:3月21日(土)開場13:30/開演14:00 場所:陽岳寺
出演: 深津さくら、満茶乃、松永瑞香(敬称略)
(▶︎次回イベント詳細はこちら)


コメント