増える「企業版ふるさと納税」 税制改正で寄付額倍増

佐賀市清掃工場では、分離回収設備(奥)でCO2をタンクにため、気体のままパイプラインで周辺の藻類培養施設などに供給している
佐賀市清掃工場では、分離回収設備(奥)でCO2をタンクにため、気体のままパイプラインで周辺の藻類培養施設などに供給している

国が認定した地方自治体の地方創生プロジェクト(地域再生計画)に企業が寄付を行う「企業版ふるさと納税」制度が活況を呈している。令和3年度の寄付額は前年度の2倍以上。通常の寄付に比べて大幅な税額控除が受けられるうえ、自治体独自の事業を応援しようとする企業の思いが、地方に新たな力を与える事例も増えてきた。

自治体独自の事業を応援

内閣府によると、企業版ふるさと納税は制度が始まった平成28年度には寄付件数517件、寄付額約7億5千万円だったが、徐々に増加。令和2年度に税制改正が行われ、控除で手元に戻る金額が寄付額の最大6割から9割に拡大したことで、一気に利用が広がった。3年度はほぼ全ての道府県で、寄付金額が前年度より増加した。

内閣府地方創生推進事務局の塗師木(ぬしき)太一参事官補佐は「企業側のメリットが大きくなったことで、制度がかなり普及してきた」と手応えを語る。寄付を受け入れるために必要となる地域再生計画を作成して国の認定を受ける自治体も増加。国は寄付を検討する企業と自治体の出合いの場となる「マッチング会」を開き、制度の活用を促している。

プレゼン力が向上

このマッチング会で〝プレゼン力〟を身に付け、寄付獲得につなげた自治体の一つが兵庫県姫路市だ。同市は課題である農業分野のICT(情報通信技術)人材育成を目指し、3年度から農業のスマート化に関するアイデアやビジネスモデルを競う「アグリテック甲子園」を開催。昨年度の大会では「10年後の農業にイノベーションをもたらすアイデア」をテーマに、全国の高校生と大学生からなる10チームが競った。

同市農政総務課の柿本英夫課長は「公務員が日常業務でプレゼンをすることはあまりないが、アグリテック甲子園で学生にプレゼンしてもらうのに、自分たちができないのでは格好がつかない」と語る。市担当者はマッチング会に毎回参加し、アグリテック甲子園などの事業をアピール。「パワーポイントや動画の作り方をバージョンアップし、企業からの寄付実績も上がってきた」(柿本課長)という。こうした取り組みが評価され、同市は4年度の「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」も受けた。

共感が寄付につながる 地方創生の一助に

脱炭素など企業のトレンドに合った事業をアピールする自治体もある。佐賀市では、清掃工場でごみを燃やすときに出る二酸化炭素(CO2)を回収し、新たな資源として活用する「バイオマス事業(CO2分離回収事業)」を実施。CO2削減という地球規模の課題解決に挑む取り組みに、企業からの寄付が寄せられている。

佐賀市には平成の大合併(1市6町1村)を経て旧町村から引き継いだごみ処理施設が4カ所あり、これを1カ所に統合する必要があった。住民の理解を得る手段として、CO2や廃熱を周辺の農業施設や企業に供給し、「迷惑施設」と思われがちな施設を「価値をもたらす施設」に転換させることを目指したのが始まりだ。

同市が3年度にバイオマス事業に対して受けた企業版ふるさと納税は計13件、約2千万円。寄付した企業の一つ、伊藤忠エネクス(東京都千代田区)の田中文弥執行役員は「施設を見学させてもらい、すぐに手伝いたいと申し出た。すばらしい事業です」と太鼓判を押す。

同市バイオマス産業推進課の川原田格(ただし)主任は「脱炭素の取り組みに共感が寄せられ、〝佐賀モデル〟ともいえるバイオマスを活用した地域の活性化が世界に広がっていくことを目指したい」と語る。自治体の工夫を企業が応援する。企業版ふるさと納税は、そんな地方創生の手段になっている。

企業版ふるさと納税

地方自治体の地方創生事業に賛同する企業が寄付を行うことで、民間の資金を地方創生に役立てる制度。寄付額は10万円からで、東京23区など都市圏の一部自治体は制度の対象外。自治体からの返礼品などはないが、企業は寄付額の最大9割分について税額控除を受けられる。平成28年度から始まり、令和3年度の寄付額は約225億7千万円。

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