操られた傷
毎月19日は隊学の日。
ちゃんとハッピーエンドなのでご安心ください。洗脳って興奮すると思いながら執筆しました。とても楽しかったです。
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人や妖怪に害を与える者がいる。その情報を知ったのは偶然で、力はないがかなり厄介らしい。幸いこの島では被害が出ていないが、それも時間の問題だろう。いつ来てもおかしくない。ならこちらから出向いてあげようと思い、早速被害が多い場所へと向かう。
「全く、僕に感謝してよね」
黒い羽根を広げ、忙しくしているであろう学園長サマにそう言い残す。空に浮かぶ月が、やけに綺麗に感じた。
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とは言っても、そこまで距離は遠くない。すぐに着いたがどこにいるのか分からない。気配を消すのが上手いのか、それとも案外遠くにいるのか。歩を進めながら思考を巡らせる。あっちゃんのおかげで妖怪界の治安は保たれているが、どの時代にも悪質な者は存在する。それを排除してあげるのが僕の役割。
「最近御多忙みたいだし、何か作ってあげよっかな」
軽い足取りで道を進んでいく。しばらくすると、邪悪な気配を感じ取る。ぬるんでいた表情を引き締め、前を見据える。そこには、妖怪の中でも理性のない分類のナニかがこちらを見据えていた。薙刀を構え、相手に警戒を示す。僕が元神だと知っている者だったら、すぐに逃げ出すからだ。威嚇には十分だろうと思ったが、今回の相手には通用していないみたいだ。
「随分強気だね。だったら容赦しないよ」
周りの木などを斬らないように配慮しながら攻撃を仕掛ける。お世辞にも強くないが、本体が別にいるのか手ごたえを感じない。空気を斬っているような感覚に眉を歪める。あっちゃんと似ている能力なのかと思考を巡らせると、背後からおぞましい気配を感じた。咄嗟に上に飛んで回避する。さっきまで立っていた場所は、黒いナニかに覆われていた。
「なにアレ……」
今回はいつもと違って意味で手ごわそうだと警戒を強める。もう一度降りようとした瞬間、足元が一気に重くなる。状況を理解する前に地面に叩きつけられる。避けたはずなのにどうしてと困惑していると、手に持っていた薙刀に自然を視線が向く。そこには、黒いもやのようなものが巻き付いていた。腕を伝って全身に回っていったのだろう。
「ッ……!」
してやられた。段々と薄れていく意識の中脳裏によぎるのは、あっちゃんのことばかりだった。ごめんという謝罪を口に出せたのかも分からないまま、静かに意識を落とした。