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俺は全てを【パリイ】する 〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜  作者: 鍋敷
第三章 商業自治区編

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109 王都六兵団の副団長たち

 いつもは『王都六兵団』を率いる【六聖】の会議が行われる会議室に、副団長クラスの面々が集まっていた。


「【六聖】が王に緊急招集されたって聞いたけど……何かあったのかしら」


 『狩人兵団』副団長を務める【迅雷】のシレーヌは不安そうな顔で、その場に集まった数人のメンバーを見渡した。

 その隣で『戦士兵団』副団長、【神盾】イネスが口を開く。


「いや、私が聞いたところ、有事というわけではないそうだ。その点は安心していい……だが、王との会議は重要な協議となる為、かなり長引きそうだとのことだった。よって、急遽私たち副団長クラスが【六聖】に代わって相互の報告会議をすることになった」


 イネスは準備してきた書類を片手に持ちながら、今日の議題を確認した。

 その脇で金色の槍を肩に担いだ男が会議机の上に片脚を投げ出し、部屋の天井を仰ぎ見た。


「……ったく、面倒くせえな、会議なんて。師匠達が出来ねえんなら、延期すりゃあ良いのに」

「それが出来ないから集まっているのだ、ギルバート。これも我々副団長クラスの大事な仕事のうちだぞ」

「────はいはい、わかったよ。なら、さっさと始めようぜ。こうしてる間にも身体がなまっちまう」


 小さくため息をつくギルバートだったが、その脇で白いローブに身を包んだ女性がギルバートの腕を抱えて不満そうな顔で彼を眺めている。


「……あの……ギルバートさん……? なんで私、会議室に来てまで貴方の怪我を癒さなきゃいけないんです……?」

「悪ィな、マリーベールちゃん。今日の昼の訓練でちょっと張り切りすぎちまってな。どうせ、他人の話聞いてる間はヒマだし、いいだろ?」

「……そりゃあ、私も貴方達の怪我を癒すのは仕事のうちですし、やりますけど……えっ────!?」


 マリーベールは自分が抱えているギルバートの腕の状態を観察すると、小さな悲鳴をあげた。


「ちょ、ちょっと!? 腕が痛いから診てくれ、じゃないですよぉ〜!? これ、よく見たら、筋肉(にく)だけじゃなくて骨格(ほね)までぐちゃぐちゃじゃないですかぁ〜!?一体、どんな訓練したらこんなに腕が痛めつけられるんですかぁ……?」

「まあ、相手が相手なんでな。だいたい毎回こうなる。あいつは加減を知らないからな……まあ、こっちもそんなの求めちゃいねえが」

「な、なんでそんなに平然としてるんですかぁ!? こんな怪我、普通、激痛で立っていられませんよぉ!?」

「確かに痛えが……慣れちまったな。ま、アンタならすぐ治せるだろ? ちゃちゃっとやってくれ」

「……しょ、正気の沙汰じゃないですぅ……! やりますけどぉ〜……! ひいいいいぃ〜!! じ、直に触ってると骨と筋肉がくっつく感触が気持ち悪いですぅ〜……!」


 マリーベールが悲鳴をあげるとギルバートの腕は淡い光に包まれて、すぐに光は消えた。

 

「おっ、さすが【聖女】サマ。治りが早いな。やっぱり一般の僧侶職の連中とは違うな……うん、もう万全だ」


 ギルバートは機嫌良さそうに肩をぐるぐると回した。

 対して、マリーベールは一層気分が悪そうな顔をしている。


「ううううぅ……! 前みたいに、内臓までぐちゃぐちゃじゃないだけましですけど……私、もう、こんなに骨がぐちゃぐちゃの患者さん看るのは嫌ですぅ〜……!」

「まあ、そう言わないで。また頼むぜ、マリーベールちゃん」

「ううぅ……もう……セクハラとかで、王政諮問委員会にギルバートさんを訴えてもいいです……?」

「……どうしてそうなるんだ……?」


 涙を浮かべるマリーベールと彼女を必死でなだめるギルバートを横目に、イネスは会議用の書類の束を整えると顔を上げた。


「では、始めるか」


 そうして早速会議を始めようとしたイネスだったが、ふと変化を感じて辺りを見回した。


「そういえば……メリジェーヌは? さっきまで、ここにいたと思うが」

「彼女、帰ったわよ」

「……帰った?」

「そう。ついさっき。マリーがギルを治療してる間にね。まるで幽霊みたいな顔して出て行ったわ」


 シレーヌは会議机に頬杖をつきながら、ため息交じりに言い放った。


「……『魔術師兵団』の報告資料は置いていくから、読んでもらえばそれでいいって渡されたわ。あと、みんなからの報告は後で読んでおくから、書類で工房に直接回しておいてくれって言ってたわ」

「急だな……彼女は今、何か切羽詰まった業務でもあるのか?」

「ええ、なんでも、ミスラ教国絡みの仕事で、『神託の玉』の追加納品が大量に出たらしいわ。彼女はその準備があるとか」

「……そうか。そちらの仕事があるのなら仕方ない。会議は残りの者だけでやろう」


 会議を始めようとしたイネスだったが、ギルバートが異論を唱えた。


「おい……誰か忘れてねえか?」

「いや、メリジェーヌを除けばここに全員いるはずだが」

「いや、足りてねえぞ? あいつはどうした? ……あいつ……ええと、名前、なんて言ったっけ?」


 ギルバートの指摘で、皆が会議室の中を見回した。


「……そういえば、今日、あの人にはまだ会ってないですね……?」

「確かに、気がつかなかったわね。どうしたのかしら」

「そうか。私はさっき、そこにいたような気がしたんだが」


 イネスも改めて皆と一緒に会議室を見回したが、確かに『隠密兵団』の副団長が見当たらない。

 皆が不思議がっていると、突然、会議室の椅子から声がした。


「────います。いますから」


 唐突に部屋に響いた小さな鈴のような声に皆が驚き、声がした辺りに注目すると、会議室の椅子に座る、白く透き通った髪を持つ女性が見えた。


「私、ここにいますよ……いますから」

「……び、びっくりしたですぅ……!」

「い、いつから?」

「……最初から。というか、一番最初に部屋に居たのは私なのですが?」

「ごめん、全然気づかなかったわ」

「私も、わからなかったですぅ……」

「……いいんです。私、いつも、そういう役目ですから」


 レイはそう言いながらも悲しそうにうつむき、目にいっぱいの涙を浮かべた。


「……あと。ギルバートさん。私の名前、レイです。確か……もう、何十回もお会いしてますよね? 正確には……八十二回ぐらい」

「す、すまねえな、レイ……お、おい、なんで気がつかねえんだよ、シレーヌ」

「はぁ、私!? 私が悪いの!?」

「……いいんです。皆さん。いつものことですから……大丈夫です」


 かなり騒がしい会議室だったが、イネスは周囲を見渡しメリジェーヌ以外の五人が揃っていることを確認すると小さく頷いた。


「とにかく、揃ったようだな。これより【六聖】の代理者による会議を始める。まず、各部門の業務の報告からだが────」

「……やっぱり結構、図太いわよね、イネスって」

「無駄口は慎め、シレーヌ。会議中だぞ。ではまず、ギルバートから『剣士兵団』の業務報告を」

「……俺からか?」

「さっさと終わらせたいのだろう。ならば、さっさとやれ」

「ちっ……わかったよ……あ」

「どうした?」

「…………会議資料、部下からもらってくるの忘れた」

「そういうこともあろうかと、私が預かってきておいた。読め」

「……お、おう……ありがとう……?」


 終始まとまりのない副団長クラスの会議だったが、イネスの強引な進行により、なんとか相互の業務報告は無事、終了した。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルバート以外全員女性っと言うことは……はっ!まさかギルなんとかさんもじょせいなのか? ヒロインレースはギルバートが独走状態だし、ミスラ戦の極限状態で思い浮かべてた人物はギルバートだけだっ…
[一言] 更新お疲れ様です。書籍2巻とコミック手に入れました。 本当に好きな作品なので、webの更新と新刊の発売を待ち焦がれていました。 週末の当直で一気に読ませてもらいます。お陰で仕事が楽しみです(…
[一言] 今気付いたのですが、この副団長組……ギルバートのハーレムじゃないですかw
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