4月20日の昼、神宮球場のネット裏最上段に西武の渡辺久信GM(58)がドーンと座っていた。

東京6大学リーグで今秋ドラフト候補右腕の篠木健太郎投手(4年=木更津総合)をチェックしつつ、足元にはタブレットがある。「おっ、古賀打ったじゃん。やるねぇ。今年ちょっと打つね」。本拠地ベルーナドームでの楽天戦を眺める“二元中継”。しかも先制点にご満悦だ。

「みんなが知らないとこでさ、俺、けっこういろいろ見に行ってるのよ」。GM職として、時間を見つけては各地へドラフト候補の視察に行く。オフには極秘裏にキューバへ飛んだものの、現地関係者のSNSで情報があっさり漏れ「なんで知ってんの!?」と豪快に笑い飛ばしていた。

精力的に編成業務をこなしている間も当然、自軍の動向は気になる。先制点の直後、先発隅田が3安打に四球で逆転を許した。「ピリッとしないなー」。

隅田は22年にドラフト1位で入団した。GMら球団幹部はドラフト直前にかなりゲンを担いだといい、4球団競合の末に交渉権を獲得した。期待が高いだけにもどかしいよう。「隅田はさ、打たれた時にさ、ちょっとしょっぱそうな顔するよね。もっと堂々としてりゃいいのに」。

そんなGMのもとに、酒に酔ったのか、上機嫌そうな観客が「もしかして渡辺久信さんですか!?」と大声で寄ってきた。集まる注目。しかしGMが一切声を出さずウンウンと堂々とうなずいていると、やがて彼は去った。強かった。

若き日の武勇伝は数知れず。逃げないし動じない。難局にも堂々立ち向かう。監督代行兼任となり、そのマインドで、眠れる若獅子たちをたたき起こしていくのだろうか。この夜は、11年ぶりの監督1勝をもたらしてくれた隅田の表情が、どう映ったのだろうか。

なお、神宮では帰り際に法大・篠木の印象を尋ねたところ「えっ、なに、仕事しに来たの?」。はい、最初からそのつもりでおりますが…。【金子真仁】

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