2026/02/17 (火) 18:00 29
今月20日から熊本競輪場で「第41回全日本選抜競輪(GI)」が開催される。ここでは昨年末に行われた嘉永泰斗との対談を再構成。熱い胸の内を語る嘉永に中川誠一郎が思わず…。他にも交友関係やプライベートの話題に触れ、競輪の魅力もそれとなく、ひも解きます。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】
ーー中川選手は当コラムで、嘉永選手が“持っている”とたびたび話しています。あらためて、そう思いますか。
中川誠一郎(以下、誠一郎) ですね。“持っている”んですよ。(北津留)翼が駆けて取った地元記念(2021年「火の国杯争奪戦in久留米」)もそうだし、要所でそれを感じます。だって地元のGIをS級S班で迎えられるなんて、奇跡といっていい。
ーー選手の皆さんは、自分でも“持っている”と感じることがあるのですか?
嘉永泰斗(以下、泰斗) いやいや、自分じゃまったく無いですよ。結構そういう風に言われますけど、こう見えて必死なんです。
誠一郎 さすがにオレでも言わない(笑)。結果そうなっているだけで、自分で“持っている”なんて言う人は滅多にいませんよ。
ーー九州では“持っている”代表格は井上昌己選手と言われていますが、やはり自分では…。
誠一郎 昌己も絶対に言わないでしょうけど、外から見ると明らかに“持っている”。もう、格が違います。
泰斗 昌己さんってGIを取ったときのガッツポーズより、パチンコが出たときのガッツポーズの方がデカかったとか、そんな話をよく聞きます(笑)。
誠一郎 グランプリを優勝したときなんか、バンクから引き揚げてきた第一声が「ラッキーしたバイ」だから。持ってなきゃ、そんなこと言えないよ。
ーーここからは嘉永選手に競輪以外の話をうかがいます。今、競輪以外で楽しい時間はありますか。趣味などは。
泰斗 う〜ん、今は競輪しか見えていませんね。つまらない人生を送っています(笑)。
ーー以前はゴルフや麻雀もしていたという話を聞きますが。
泰斗 ゴルフはもう2年近くしていません。麻雀もほとんどしないし、今は趣味に打ち込む時間がないんです。
誠一郎 倉岡(慎太郎)一門はゴルフが必須科目じゃなかった?
泰斗 S級に上がったら、みんな始めますね。自分と(上野)優太さんのデビュー戦のとき、誠一郎さんもいましたよね?
誠一郎 倉岡一門には、客人として高木(竜司)さんや(中塚)記生さんと呼ばれるんだ。(徳永)哲人、(中本)匠栄、カネもん(兼本将太)の筆おろし(※ゴルフデビューのこと)も手伝ったよ。
ーー競輪と向き合う時間がほとんどという点では、中川選手と対極にあります。
誠一郎 いやいや、今はそういう選手が普通なんです。オレは酒を飲んだり遊んだりした分、タイトルを取るまでが長かったけど。まあ、結局は自分で長くしたのか…。
ーー嘉永選手の「タイトルまで長かった」発言に激高や嫉妬をしていたのは、自業自得だったと。
誠一郎 そういうことになりますね…。まあ、これは痛恨です。
ーー普段、どのような選手たちと交流があるのですか。
泰斗 練習仲間の優太さんや(上田)尭弥とかはよく一緒にいます。
誠一郎 去年の佐世保記念のとき、その2人と同部屋だったけど、ガル(上田)は面白いよね。
泰斗 はい、普段から楽しいヤツです。前乗りのときは、よく晩飯に行ったりします。
誠一郎 佐世保でガルは荒井(崇博)さんから「お前は0.8や」とか言われていたよ。
泰斗 どういう意味ですか?
誠一郎 人としてまだ一人前じゃない、とかそんな意味のアラハラ(※アライ・ハラスメント)だよ。荒井さん、ガルにはキツいんだ(笑)。
泰斗 何でそんな話になったのですか?
誠一郎 ガルが「一人で店に入れない」って話をしていて、オレと優太で「牛丼屋なら大丈夫だろ?」とか「一蘭がいいんじゃね?」とかしゃべっていたら、荒井さんが部屋に乱入してきて「だから、お前は0.8なんや」とか会話の流れをブチ壊しだしたんだ(笑)。
ーー想像すると激しいものがあります。
誠一郎 話に戻ると、牛丼屋は一人で来ている人が多いから、これは一人のチームの集合体だ、とか謎の論調が出てきて。吉野家なら“オール・フォー・ワン”だから大丈夫って、納得させたんです。
泰斗 それじゃ、もうどこも行けないじゃないですか。誠一郎さんは、逆にどこまで行けます?
誠一郎 若いころはそれこそ吉野家ぐらいしか行けなかったけど、おひとり様の大御所、高木さんの指導とトレーニングで今はどこでも入れる。1人焼肉、1人寿司屋は、ぜんぜんOK。
泰斗 自分も昼飯とかは1人で行きますが、さすがに焼肉は行かないですねぇ…。
誠一郎 ガルは外食ができないから、一時期ホカホカ弁当を週六日でテイクアウトしていたんだって。そのうちに、いつも行く店から「コイツ、また来た」って思われているんじゃないかって気にしだしたみたいで。
泰斗 そんなの、店員さんは何にも思っていないですよ。
誠一郎 そうそう。別に常連だからいいんだよ。でも、ガルはそう思われるのが嫌で、あるときから予約をする際に「上田」と名乗らず、偽名に変えたらしい。
泰斗 取りにいく人が同じなら意味がないじゃないですか。
誠一郎 そうなんよ。でも、ある日、偽名で予約していたのを忘れていて、弁当ができて「〇〇様」って呼ばれてもスカしていたら、店員がガルのところに来て「いつもの方ですね」って。
泰斗 何すか、それ(笑)。そこは絶対に忘れちゃダメでしょう。
誠一郎 店員も、コイツ何で名前変えたんだって思っただろうな。逆にそっちの方が恥ずかしいわ。間抜けな逃亡犯じゃないんだから。
泰斗 タカヤ君は超いい子ですけど、ちょっとそういうところがあるんですよね。打たれ弱いから優しく育ててあげないと(笑)。同期、同学年なので自分が一番、わかっています。
ーー今月は出てこないと思いましたが、このコラムはどこかに荒井選手の話が出てくるのですね。
誠一郎 競輪祭のあとも上機嫌で「タイトルを取るまでは辞められない」って。オレはもう戦うステージが違うけど、泰斗や(伊藤)颯馬が当分…。
泰斗 当分…(笑)。ま、まぁ、記念やビッグ・特別ではセットが増えるでしょうね。
誠一郎 頑張って、としか言えない。オレは別に楽しんでいる側だけど、泰斗らは当事者だから。前で頑張らなきゃいけない人たちは大変だよ。
ーー高みの見物ですね。
誠一郎 長年、務めてきた側ですから。持ち場としては、レースが終わったあとの雑談要員。いわばメンタルのコントロール係です。
泰斗 この間、SNSでにこやかな荒井さんがいましたけど、かなり、いい感じみたいでした(笑)。
誠一郎 虚像が広まっていく、という感じ。ジャイアンはずっとジャイアンじゃないといけないんだけどなあ。
ーー以前、荒井選手と伊藤旭選手が和やかに雑談している場面がSNSに挙がっていました。
誠一郎 いやいや、別に仲が悪いわけじゃないんですよ。レース以外では普通にしゃべっていますから。
ーーコラムの質問コーナーにも「2人の雪解けはいつですか?」というものもありました。
泰斗 雪解け! 難しいっすねぇ〜(笑)。並ばないのはレースの中だけでしょうし。
ーー嘉永選手も伊藤選手に任せない時期がありました。
泰斗 いわき平記念のときですね。あのときは自分がトンがっていましたから(笑)。
誠一郎 トンがっていたって、ハハッ。まだ若いなぁ…。
ーーさて、ここからは全日本選抜競輪の話です。現在はどのような心境でしょうか。
泰斗 グランプリやS班になることも大事でしたけど、やっぱり地元の全日本なんですよ。もう、取りたいっすねぇ…。誠一郎さんも同じ考えでしたか?
誠一郎 えっ!? うん、それはもう一緒だよ、一緒。
ーーやはり地元への思いですか。
誠一郎 今、その言葉を泰斗の口から聞けてメッチャうれしい。考えはまったく一緒。地元で勝たなきゃって思いが何よりも強いから。
泰斗 みんなどう思っているからわからないですけど、自分は取りたい。次、地元でGIをいつやるかわからないし、チャンスだと思っているので。
ーー嘉永選手はGIタイトルを取る前に掲げていた目標が「全日本選抜競輪の初日特選スタート」でした。S級S班になったことで、さらに上が見えてきました。
泰斗 そうでした。S班で迎えられるのはデカいです。4日制なので集中したまま走れるし、モチベーションも上がると思います。
誠一郎 熊本でGIをやるのはダービー(2012年)以来。泰斗がS班にいることで地元の看板ができたし絶対に盛り上がるよ。
ーー中川選手は前回の地元GIの思い出はありますか。
誠一郎 あのときは初めて出る(ロンドン)五輪の直前で、ケガもできないし走るだけ、みたいな状態でした。世界選もあって出られるか出られないかの感じだったから、そっちにも気を取られていて。
ーーあまりいいイメージがない、と。
誠一郎 ですね。初日で飛びましたし。あれから時間が経って、あのときの敵討ちをする後輩が出てきたのはありがたいことですよ。だから、さっきの言葉にウルっときた。思いが受け継がれている気がしました。
ーー珍しく感傷的ですね。
誠一郎 泰斗にはどっかの打ち上げのときにも「地元だけはちゃんと守ってくれ、取ってくれ」って言ったことあるよね。2人とも酔っ払っていたから覚えていないと思うけど。
泰斗 もちろん、ちゃんと覚えていますよ。優勝できたら最高ですし、皆さんのそういう思いを背負って走るつもりです。
誠一郎 ただね、全日本は気をつけなきゃいけない。
ーーどういうことですか。
誠一郎 全日本って2月でしょ。年初、一発目のGIなんです。つまり、2月にGIを取ると、あとの10か月はグランプリへ向けて高みの見物だから、精神的にすごく楽なんです。
ーーモチベーションを保つのが難しそうですね。
誠一郎 それが落とし穴。オレも全日本を取ってしまったばっかりに、ムチャクチャ調子に乗って楽になりすぎた。去年のワッキーもそうだったでしょ? 決して楽をしていたわけじゃないけど、怪我もあったしリズムを崩した。あれは全日本選抜のワナかもしれません。
ーー集中力を切らさず1年を走り切るのは難しいということですか。
誠一郎 絶対に1回、休んだ方がいい。そのあと上げていくような感じにした方が。1年間、体力と集中力を高めて過ごすのは並大抵のことではないですよ。
泰斗 自分も(寬仁親王牌を)取ったあとのすぐの記念(四日市)はきつかったです。優勝する前から走るつもりでしたが中3日だったし。誰もS級S班が休まないのに、周りからGIを取ったから休むのって思われるのも複雑だったから、休めなかったです(笑)。
誠一郎 取ったあとって平常心で走れなくない? いろんなところからに連絡を返したり、普通の生活ができなくて落ち着かない。
泰斗 ですです。ずっとソワソワしていました。四日市も現地に入った瞬間に疲れがドっと出たんです。調整もできずに失敗でしたが、メリハリとかは学びましたね。今はあのときの失敗をふまえて過ごしています。本番までいろいろあると思いますが、うまく行くよう頑張ります。
ーーここまでが前回の対談でした。中川選手はこのあとに嘉永選手と会いましたか?
いや、会っていないんですよ。ただ、この間の記念で落車していたでしょ?
ーー1月のいわき平記念の初日特選で落車して、そのまま欠場しています。
最初は不安でしたが、人づてに聞いたら大した怪我ではなく元気だったと聞きましたからホッとしました。
ーー落車のあと、嘉永選手に取材をしましたら「幸いに軽傷でした。今はもう影響なく、練習も順調。万全な状態で走れそうです。頑張ります!」との力強い言葉がありました。
それは良かった。決勝の誘導をひけるかもしれないので、そういう意味でも泰斗と一緒に走れれば最高ですね。
ーー最後になりますが、ここでは誘導・中川誠一郎がおススメする熊本のスポットをご紹介ください。今回は多くの来場者が見込まれます。初めて熊本を訪れるファンも多いでしょうし、何かありましたらお願いします。
食事だと今、思い浮かぶのは焼肉なら園田宏さんの「園田」、馬なら「むつ五郎」、魚なら「天草瓢六」、「から草」ですかね…。あとは「Largo(ラルゴ)」ってバー。あそこはオレの同級生の店でメシも食べられます。それと忘れちゃいけないのは井手らっきょさんの「らっきょの小部屋II」ですね(笑)。
ーーそれはすべて熊本市内の中心部ですね。
はい。競輪場は水前寺にありますが、今、挙げたのはぜんぶ熊本城周辺の繁華街ですので移動しなければなりません。ちなみに熊本駅からお越しの方は、競輪場や繁華街は少し離れているので、いらっしゃる際はご注意ください。
ーー競輪場近辺ですと。
よくコラムに出る「味千ラーメン」ですね。あと、場内に「GO吾食堂」って店があるんですけど、そこは(池田)伍功羽のお父さんがやっているんですよ。
ーー池田選手は田川辰二選手の弟子ですね。
はい。だから弟々子のようなもの。競輪場から離れるけど、お父さんは「吾ノ倉庫」という居酒屋さんもやっています。この間、一門の忘年会で行ってオレが酔いつぶれた店です。
ーーグルメ以外にも何かありましたら。
そりゃ「オクロック熊本歌劇団」でしょう。この間、寄付金という名の課金で大名になったんですよ。
ーー写真にもありますね。どのようなステージなのでしょう。
2.5次元の舞台っていうんですか。漫画を題材にしたもので、殺陣とか歌とかダンスに映像&音楽をかけ合わせたような感じで、引き込まれます。会場は繁華街のど真ん中にあります。
ーー熊本といえば温泉が有名ですが、おススメはありますか。
「あがんなっせ」ってところによく行くのですが、繁華街や競輪場からだとちょっと遠いんです。車があった方がいいかもしれません。
ーー時間があるならいいですね。
街や競輪場からそこまで離れていないとなると「湯らっくす」ですか。サウナ界では西の聖地と呼ばれている超有名なところ。老舗感やマニアっぽさを求めるなら「田迎サウナ」、コスパなら「ばってんの湯」でしょう。他にもありますが、いいところばかりですよ。
ーーまるで観光大使みたいなご対応、ありがとうございます。
観光地も多く、お酒を飲む人も飲まない人も、老若男女が楽しめるスポットがたくさんあります。お越しになる皆さん、熊本をたっぷり満喫してください。オレも昼は大事なアルバイト、夜は街中をパトロールして「熊本競輪応援団長」の名に恥じぬよう全日本選抜競輪を盛り上げます!
【大募集】
中川誠一郎選手が、読者の皆さんのお悩みを解決します!「仕事がうまくいかない」「お酒がやめられない」「オフの日の過ごし方は?」……など皆さんからのお悩み&質問を中川誠一郎選手へお届けします!
中川誠一郎
Seiichiro Nakagawa
中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。