暗い部屋の奥、椅子の向こうに、人の形をした影だけが、音もなく佇んでいた。
「──誰、なの?」
「────」
「──あなたは、誰、なの? あなたは、どこの、誰なの……?」
エミリアは、警戒心を露わにしたまま、低くそう告げた。
レムもまた一歩足を引き、いつでも動けるよう身構える。
ハリベルは菜穂子と賢一の前に立ち、二人を庇うような角度で腕に力を込めた。
「──う、」
その張り詰めた空気を、まるで打ち砕くかのような、間の抜けた声が響いた。
「──この声は」
「トッドじゃないわ! 多分──」
「──なんだい、この記憶は!? 旦那くんの……ぐ、」
「あんちゃん! ──う、なんなん、だ……」
「──フロップさん! ミディアムさん!」
レムは、後方で身を縮めているフロップとミディアムのもとへ、迷いなく駆け出した。
「──あ、あ……奥さんか……」
「レムです! 申し訳ありません、まさかフロップさんたちだとは……」
「誰と間違えていたのかは、聞かないことにするけれど……ここは、一体……」
「その説明については、レムがするより、今流されている記憶から考えた方が早いと思いますが、簡単に言うと……」
「──だんだん楽になってきた! 奥さん、これはつまり、旦那くんの……うん? 理解はできるんだけど、納得が難しいかもしれない!」
「あたしも! これ、どういうこと? そういう幻覚みたいな!?」
「いえ、残念ながら事実です」
スクリーンに、僅かに色が灯る。
そして、
『──席に、ついてください』
「──説明を、します」
レムが、ミディアムとフロップの手を引き、席へとつく。
スピーカーの向こうにいる人物を、睨みつけるような眼差しで。
とのことなので、トッドはきません。
ジャマルは主催者次第でワンチャンですが、トッドは無理です。
彼が来た場合、収拾つかなくなるので。