@to_toki_shiro
百合
リップを貸して、と女は言った。
ついさっき、大きなドレッサーの前で深紅の口紅を塗っていたくせに、少し落ちちゃった、なんてずるい言葉を続けた。
「まだ大丈夫でしょ」
そう事実を告げれば良かったものを、しなかった私もずるい女だ。彼女よりも、きっとずるい。
年の割に少女趣味なリップスティックが彼女の唇の上で踊る。思わず焦がれるみたいな目でじっと見つめてしまった。変態みたいだ、間違いじゃないか。
塗り終えたらしい。彼女の唇がんまんまと馴染ませるように動く。ああ、なんて色っぽいのだろう。私がやれば子供みたいなのに。
「ねえ、似合う?」
女は私の少し薄い赤を己の唇の上で混ぜて、艶然と笑う。
「まあまあ」
また、嘘をついた。真っ赤な嘘。深紅相手じゃあんな薄い色はすぐに塗りつぶされてしまう。
ああ、いっそこの卑しい心も一緒に真っ赤に塗りつぶしてくれたらいいのに。
私の心を知ってか知らずか、女はまた微笑んだ。
ついさっき、大きなドレッサーの前で深紅の口紅を塗っていたくせに、少し落ちちゃった、なんてずるい言葉を続けた。
「まだ大丈夫でしょ」
そう事実を告げれば良かったものを、しなかった私もずるい女だ。彼女よりも、きっとずるい。
年の割に少女趣味なリップスティックが彼女の唇の上で踊る。思わず焦がれるみたいな目でじっと見つめてしまった。変態みたいだ、間違いじゃないか。
塗り終えたらしい。彼女の唇がんまんまと馴染ませるように動く。ああ、なんて色っぽいのだろう。私がやれば子供みたいなのに。
「ねえ、似合う?」
女は私の少し薄い赤を己の唇の上で混ぜて、艶然と笑う。
「まあまあ」
また、嘘をついた。真っ赤な嘘。深紅相手じゃあんな薄い色はすぐに塗りつぶされてしまう。
ああ、いっそこの卑しい心も一緒に真っ赤に塗りつぶしてくれたらいいのに。
私の心を知ってか知らずか、女はまた微笑んだ。