机の下より愛を込めて
さのぱちです。大学生現パロ。
Xに上げた話をすこーし直して再掲です。
新八にちょっかいかけたい左之助に鈴鹿ちゃんが巻き込まれる話です。デカくて目立つはずなのに気配を消すのが上手いので、女子達(特になぎこ)は忍びの者ってあだ名を付けてそう。
なんのかんの左之助が好きな新八はかわいいと思うのですが!!!
読んでいただけたら嬉しいです。
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鈴鹿の手の中でスマホが震え、メッセージアプリに通知のマークが一つ。
『パイセン!新作のラテ飲みに行こうよ〜』
なぎこからだった。アイコンまた変えたんだ、丸い枠の写真は学内に現れた猫になっている。黒白で妙にデカく、太い声で鳴くのを面白がっていた。
鈴鹿は指の腹で画面を打つ。長く伸びてきた爪は白にほんのりラメが輝き、中心は桃色に透けている。カツ、と爪が画面に触れて、そろそろ整えないと、と思った。
『新作の、ってなんか美味しそうなのある?』
『知らんー でも行こうよう』
猫っぽいキャラがキラキラした目でこちらを見ているスタンプが送られてきた。特に用事はないけど喋りたい、ということね。スマホの画面を見たまま、講義室のドアを開ける。午前中の講義ということもあり、見回したが誰も座ったり荷物を置いたりしている様子はない。一番後ろの窓際に向かって歩いていく。
『わかった、今から講義だから』
『うぇーい!ちゃんと講義でるパイセンえらいっ!』
今度は猫が拍手している。画面の向こうにいるだろうツインテールの後輩は、もしかすると本当に拍手しているかも。そう思ってふふ、と息が漏れた。
長机は大体二人分の椅子があるけど、誰もいないし、この講義自体満席になるような人数は来ない。遠慮なくトートバッグを椅子に置き、もう一つの椅子を引っ張り出して座った。
「おーい」
スマホの画面を見ていると何処からか男の声がする。最初は音を切り忘れたか、とボリュームボタンを確認したがオフになっている。
「鈴鹿」
今度は最初より少し大きめに名前を呼ばれ、机の下から聞こえたことが分かった。机に手をついて下をのぞき込むと、そこには男が挟まっていた。正確には机の下でしゃがみ込んでいるのだけど、大きな身体を曲げて狭い空間に収まっている様子はどうしても挟まっている状態に見える。
「原田、何やってんの」
そこにいたのは同期の原田左之助だった。
長机の前は板が貼られ、床との間には隙間は空いているものの、前方からは覗き込んで確認でもしなければ気づかない。
「ん、ちょーーっとな」
「ちょっとやそっとでこんなとこ入る?あたしじゃなきゃ悲鳴あげて通報ものだし」
茶色いストレートの前髪から覗く目を細めているのを見て、どうやら笑ったのだと気づいた。原田って190センチくらいなかったっけ?細身は細身だけど、首も曲げている姿はかなり窮屈そうだ。
「そもそも、乙女の脚元に居るなんて変態じゃない?」
「そう言うと思って声掛けた。ていうか俺の方が先だろ」
先とか後とかじゃなくて、居る所がおかしいっての!そう言い返してやろうとすると、部屋に他の学生達が入ってくる。人の声が増えてきた事に気づいた原田は、人差し指を自分の唇に当てる。
他の奴に気づかれたくない、ってこと?
原田は関係のある誰かに見つかりたくない。そこまで考えて、四列ほど前に座った白いスカジャンの男に目が止まった。机の上に放り出したままになっているスマホを掴み、メッセージアプリを立ち上げる。確か課題をやった時に交換したアカウントがあったはず。
はらだ、とひらがなで登録されたアカウントを見つけてメッセージを打つ。紙飛行機のボタンを押すと、原田がポケットからスマホを取り出し、身体を捩りながら画面を見た。
『永倉から隠れてんの?』
鈴鹿からのメッセージに既読の印が付く。画面の光で照らされた原田と目が合った。はぐらかすように軽く首をかしげる仕草をする。
ーー絶対それしかないじゃん。
この鈴鹿サマをはぐらかすなんていい度胸じゃん。椅子からわざと音を立てて立ち上がると、永倉に向かって歩きだした。
「永倉?今日一人?」
そう声をかけると、永倉は頬杖を付いていた顔を上げ、驚いたのか目を見開いている。
「あ?えっと鈴鹿、サン」
「鈴鹿でいいって。いつも原田と一緒じゃなかったっけ?」
手の中のスマホがうるさいくらい振動している。机の下からの焦りがそのまま伝わってくるようで、なんだか楽しい。
「朝は一緒だったんだけどよ、いつの間にか居なくなってて」
「そーなんだあ。メッセージとか電話とかしてみた?」
ざわざわする部屋の中、わざと少し声を張ってみる。
「メッセージは送った。既読にはなる」
永倉はスマホを取り出し、電話をするかどうか悩んでいるようだ。メッセージの画面を何度も指で滑らせ、読み込みしている姿が本当に心配しているのだと思った。
「そのうち来るかもよ?かくれんぼでもしてたり?」
かくれんぼ、の部分は更に少し声のトーンを上げてみる。今どんな顔してるのかな。机の下の原田を想像すると楽しくて仕方がない。永倉は笑顔の鈴鹿を不思議そうに見ていたが、机の上にスマホを置いて頭の後で腕を組んだ。
「ガキじゃあるまいし!ま、それもそうだ。ありがとな」
はは、と笑った顔は愛嬌があると思った。
じゃ、と席に戻ろうとした鈴鹿に永倉は軽く手をあげる。自分の席にどかりと腰を下ろすと、机の下からは余計な事をという視線が送られてくるが、無視してメッセージアプリを開いた。
『永倉本気で心配してんじゃん』
『ちょっかいかけないでもらえます?』
『ここにいるし!!って叫んじゃおっかな〜』
『すぐでてくから』
原田はスマホの画面に視線を落としたまま、指を動かしている。永倉に目をやると、あっちもスマホを覗き込んで何か打ち込んでいる。そのうち永倉の指が止まって、横顔が驚きの表情を浮かべた。そのうち、何となく顔が赤く色づいたかと思ったら、大きくため息を付いたのが見えた。また永倉の指が動いて、机の上にスマホを伏せた時だった。
「新八!」
原田が机の下から飛び出したと思ったら、そう前に向かって声を掛けた。
「左之助、お、お前」
永倉の声は明らかに動揺している。左之助は永倉の所に歩み寄り、隣に座った。割と強めに肩を叩かれつつ、嬉しそうに笑っている。
男子のからかいって良くわかんない、広くなった机の下にうんと脚を伸ばした。講義の準備をしようとして、見慣れないスマホが置きっぱなしになっている事に気付く。原田のかな、まだ二人でなにやら顔を突き合わせていて、忘れ物には気づいていない。仕方ないな、と手に取った。
「原田」
「スマホ忘れてた?サンキュ」
長い指が差し出したスマホを受け取る。長い前髪の向こうの目と視線が合うと、片目をつむってきた。共犯者、とでも言いたげな表情にすぐに踵を返して席に戻った。
うっかり見えてしまった、左之助のスマホ画面。そこには永倉とのやり取りがあった。
『左之助、もう講義始まるぞ。おーい』
『新八、俺に来て欲しい?』
『何でもいいから早く来い』
『じゃ、講義間に合ったらキスして』
『は?』
『どうする?』
『どうって、間に合うのかよ』
『わからん』
『間に合ったら、な。分かった』
永倉は後ろに隠れてるなんて気づいてなかったし、完全に原田の作戦勝ちだ。
それより、何ていうの?あいつらそういう事?!全然頭に入ってこないんですけど!講義が始まり、タブレットを眺めながら鈴鹿は憤る。
視線を先に伸ばすと時折顔を近づけて耳打ちする原田と、律儀に話を聞いてから肘で押しやる永倉の姿。
あーあ、講義に集中できないどころか聞き取る事もあやしくなってきた。さて、どこからあのかわいい後輩に話をしようか。香子ちゃんも連れてきてって言おうかな、ぼんやりとスマホの画面を見たまま、鈴鹿は思うのだった。
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- 壱原紅/感想批評募集中Jan 13th