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あの世から持ち帰った告白を「酔っ払い」と突き返されました/Novel by モコツ

あの世から持ち帰った告白を「酔っ払い」と突き返されました

4,853 character(s)9 mins

さのぱち/原永

この二人でレイシフトさせたら大騒ぎして帰ってきそうだなあと思ったので。
レイシフト先で帰れなくなってラブホテルに泊まる事になった二人の話です。酔っ払い原田の逸話が面白すぎて、カルデアに来た後も色々やらかしてそうな気がします。キスまでですが楽しんでもらえたら嬉しいです。

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走って、斬って。また走って。気づいた時には日本という国にすら居なかった。生き残るために馬賊になり、ずっとずっと遠くまで。

最期の瞬間には故郷と新選組が恋しくて涙の一つくらいは出るかと思っていたのに、草原に寝転んで見た空が抜けるように青くて、きれいだなあ、と思うだけだった。

どこかでみた青。ああ、そうだ。新八の眼の色じゃねえか。
ーーやり残したこと、ねえ。こんな時に思い出すなんて。自嘲的な笑いがこぼれた。
もしもう一度があるなら、そう願った後、青に吸い込まれるような感覚と共に意識は途切れた。


あれから百五十年経ったという日本に喚び出され、しかも若返っていた。サーヴァントってものになったから、全盛期の見た目になるんだと。
「んで新八、てめーの全盛期はジジイってことか」

左之助じゃねえか!と腹巻き姿で走り寄ってきたジジイ。生きていた頃の記憶には無かったが、魔力の流れ方と雰囲気、そして眼の色。永倉新八その人だった。カルデア内を歩いていたら呼び止められ、ワシが案内してやると言われたのだ。
「あ?これもワシだからなあ。大体左之助も斉藤も長生きしたのに、なんで年寄じゃねーんだ」
ジジイ、と言われた事にカチンと来たのか、鼻の頭に皺がよる。
「知らねー。おい、そんなヨボヨボで闘えるのかよ」
闘えるのか、というセリフで新八のこめかみに青筋が立つ。ヤベ、カルデアも私闘禁止だっけ?放たれる殺気に一歩後ろに飛んだ時だった。ぶわっと光の粒が舞い散り、視界が遮られる。その光の奥に人影が現れた。
「誰がジジイだ!!ちゃんと闘えるわ!!」
眼光鋭く怒鳴る姿は、あの懐かしい姿。浅葱色の羽織に、白銀の髪を頭の上の方でまとめている。生きていた頃の記憶は美化されるというけれど。滑らかな首筋と、意外と小ぶりな顎。見開かれた目は魔力の光で透き通るような青色をしていた。自分の記憶力の良さに心の中でうんうんと頷く。
「お、がむしゃらの新八だ。なるほどなるほど」
「てめぇ」
俺の胸ぐらを掴んで睨み上げてくる視線に、背筋がぞわりと震える。指抜きの黒い革手が、掴んでいた俺の服を放した。
「あー、お前と話してると調子狂うわ。ここで揉めたら怒られちまいそうだし」
新八はそう言うと、顎で軽くしゃくるような動きをしてずんずん歩いて行く。ついてこい、って事か。

新八の隣に着くと、丁度俺の目の下辺に髪が揺れていた。じいさんの姿の時、髪は真っ白だったなあ。
「な、ここって酒飲めんの?」
「食堂じゃたまに。カルデアのどっかじゃこっそりバーやってる奴もいるらしいがな。……やめとけよ」
生前酒に酔って何度か怒られた事がある俺に、声をひそめて釘を刺してくる。失敗と言ってもちょっと脱いだだけだし、ここだとほぼ裸のサーヴァントだっているのに。へーいと返事をしつつ、きちんと着込まれた新八のあわせに目をやる。近藤さんと土方さんだってあんだけ緩く着物着てるのに。沖田さんなんて水着姿だったぞ。
「新八、お前他の洋服とかあんのか」
「ん?おお、あるぞ」
太い眉の下でくるりと青い目がこちらを向く。口の端をにまりと上げてなぜか得意気だ。
「俺は中々良い感じだと思ってるぜ、見たいのか?」
「いや、別に」
新八自身が得意気、ということはどうせ大したことないのだ。隣から聞こえた、怒っているような言葉を無視して長い廊下を進んだ。

しばらくの後。日本に発生した微小特異点に送られた俺たちは、帰還するだけとなった。
時間軸が現代の日本、ということで現代風の装いをしていた。俺は黒のTシャツに太めのデニムを着ている。新八は白のTシャツの上に龍が二匹舞うスカジャン。ぴったりとしたデニムは穴だらけだったので、最初はこいつまた喧嘩でも買ってきたのかと思っていたくらいだった。

「うーん、ちょっとレイシフトが安定しないなあ」
のんびりとした声で技術顧問の少女が言う。帰ろうとした時、魔力量の関係でマスターが先に戻った。その後通信状態が悪くなり、俺と新八が残されたのだ。
「ごめんね、しばらくは魔力の供給大丈夫のはずだから……」
時々途切れる通信機の向こうで、マスターの少女が頭を下げる。
「明日になれば、時の流れも落ち着くみたいだし。とりあえず霊脈に近い所にいてくれれば」
この特異点の霊脈近くに宿があるから、そこに泊まってくれと言われて向かう。

繁華街の片隅にその宿はあった。一見マンションのような出で立ちで、黒っぽい外壁が夜の闇に馴染む。入口には人気がなく、煌々と電気だけが周りを照らす。
「おい、これ宿か?出迎えがいねえぞ」
新八の靴音が明るい室内に響く。刀の柄に手をかけながら廊下の奥を覗く背中には、龍の尾が二つ。

こいつ、入ってくる時にデカデカとあった看板見えてなかったんだ。いや、見えてたとしても、そういう飾りだと思ってる可能性もある。

【ご休憩・ご宿泊】
電球にぐるりと取り囲まれた看板を見て、もう一度見直したが同じ文字が書かれていた。
ラブホテルじゃん、俺は額を押さえ足を止めたが、その横を新八が追い抜いて行ったのだ。

「新八」
「なんだ」
ちょいちょい、と手招いて、壁一面に広がった部屋の写真パネルの前に呼び寄せる。
「どれにする?」
「あ?」
質問に疑問形で返されたので、適当に近くにあったパネルのボタンを押す。下に開いていた穴から硬い音を立てて鍵が吐き出された。
「お、そういう仕掛けか」
俺は黙って頷くと、鍵を鷲掴みにして部屋へと足を進めた。後ろから足音と刀の鞘が鳴る音がついてくる。

ーー座からの知識、ってクラス関係なく得られてるはずだけどな。バーサーカーは除外とか?いや多分、興味のない事は全部忘れてるだけだ。

薄暗い廊下の突き当たり、レンガ色のドアの上で部屋番号がチカチカと点滅している。俺は持っていた鍵を鍵穴に差し込んで、ドアノブを回すと部屋の扉が開いた。

至って普通の部屋だった。デカいテレビの前にソファーが一つとベッドが一つ。
「おい、寝る所が一つしかねえ」
そういう所だからだよ、新八にそう返しそうになって、うん、と返事をした。

新八はソファに腰を下ろし、テレビのリモコンをいじっている。
それを横目に俺は備え付けの冷蔵庫から適当に酒を取り出す。金はどうせカルデアが払うだろ、鼻歌交じりに取り出し、机の上に置いてやった。
「好きなもん飲め」
「お!左之助とやるの久しぶりだな」
新八は嬉しそうに言ったものの、どれを取るか手が迷っている。
「若者の飲み物はわかんねえか、おじいちゃんは」
「ビールは新政府の奴らの作ったもんだからよ、って誰がジジイだ」
結局新八はチューハイ缶を持ち、俺も同じものを手にとって軽く乾杯をした。
「しかし時代とはいえすげえなあ。このテレビ、映画が見放題だぜ」
落ち着いたのか、足を組んでテレビを見る横顔は穏やかだ。新八は途中から見た映画が気に入ったのか、時折缶を口につけつつ画面から目を離さない。

俺はその間にもう二、三本飲んでみるが、上手く頭がぼやけてくれない。やっぱり弱い酒はよくねえな、端っこに置いておいたウイスキーの小瓶に手を伸ばす。茶色い液体が入ったそれの蓋をねじ切り、直に口を付ける。喉を流れていく形そのままに熱が広がっていった。
「おい、またお前は……」
「いいだろ、新八もやるか?」
リモコンを持った新八が、俺の方に身体を向けた時だった。指がボタンに触れたのか、画面が切り替わる。途端に部屋中に響き渡る女の嬌声と画面いっぱいの肌色。
「おおー」
いい画角に感心していると、すぐにブツリと音を立てて画面が黒くなる。
「あー……もう寝るか」
新八は髪の毛をかき上げるように顔を擦り、ソファに思い切り背中をもたれさせた。
「ジジイには刺激が強かったか?」
「うるせえたたっ斬るぞ」
俺を睨みつけながら立ち上がると、新八はベッドに横になった。バーサーカーは魔力消費が激しいというし、疲れているのは間違いなさそうだ。
珍しく気怠そうにしている姿と、もう一人は寝転べそうなベッドの空間。思わずもう一口ウイスキーを煽った。
「新八、」
反対側に腰掛けて声をかけると、閉じかけていた目がこちらを向いた。いつもより細い目の形は、目尻に向かってきれいに吊り上がっている。
「お前、死ぬ前になんか思ったか」
「ん?んん……まあ時代が変わっちまって、色々あったけどよ。新選組の皆にあの世であったら話しなきゃな、とかは思ったな。ま、こうやって二回目があるなんて、仏さまでも知らぬ話だろうしよ」
そう言うと大あくびをしてふぅっと息をつく。俺を見つめる目に、『お前は?』と聞かれているみたいだった。ベッドに手を付いて、新八の近くににじり寄る。
「俺、死ぬ前に一個だけやり残したことあってよ。なあ、好きだよ新八。昔からずっと」
「……はぁ。そりゃどーも。俺もお前がいなくなって寂しかったぜ」
ダメだ、全然伝わってない。言葉は俺も新八も得意ではないしな。仕方がない、俺は新八に覆いかぶさるように跨ぐと、口づけをした。

かさついた感触のそれとすぐ離れると、新八が大きく目を見開いている。その後身を捩るようにして俺の下から這い出そうとした。とりあえず右手首を力任せに押さえつけ、身体全体でのしかかるようにして抱きついた。
「てっめえ!なにふざけてんだ!!おい離せ!!」
混乱しているのか、言葉は荒いがまだ全力で跳ね除けようとはしてこない。背の丈は俺の方があるけどなにぶん力では敵わないから、今のうちだ。
「新八、昔から俺はずっとこうしたいと思ってた。ずっと。死ぬ前に思い出すくらい」
耳元で囁くと、暴れていた身体が動きを止める。

それから片手がすっと上がり、俺の頭の後をぽんぽんと軽く叩いた。
「左之助、酔っぱらい過ぎだ。今日はもう寝ろ」
まるで泣いた子どもをあやすような口調に顔を上げる。怒る訳でもなく心配そうに見られていることに、また頭がくらりとした。
「やだね。腹決めたから」
もう一度腕を押さえつけ、新八に馬乗りになった。
「俺、今度こそお前から離れねえ」
新八の首を撫でると、喉仏が上下に動いた。
「お、俺のジジイの姿だって見ただろ?」
「おう。俺もそこそこジジイで死んだし。霊基にはねーけど、中々イケてるって言われてたんだぜ」
上から齧り付くように口づけをして、顔を両手で抱える。耳たぶのピアスを弄びながら舌をねじ込むと、一瞬顔を背けられそうになったがそれだけだった。柔らかで熱い口内を堪能して離れると、新八が手の甲で口元を拭いながら
「酒くせえ」
と言い放った。思っていたよりずっと良い反応に、無いはずの心臓が跳ねて全身に血が巡る。新八を抱き寄せて首筋に顔を埋めた。高い体温が心地よく、全身がとろりと溶けていくような感覚がした。

暗闇に落ちたのは一瞬だったはずなのに。ふと気づくと、俺が抱き締めていたはずの新八が背中を向けて、ベッドの端にいた。身体を起こすと頭がくらくらと回り、鈍痛が走る。
「起きたのか」
新八が起き上がりながら声をかけてきた。
「まーね……まさかと思うけど俺」
「人に襲いかかってきて、そのまま寝たぞ」
やってしまった。千載一遇のチャンスを逃した事に、ため息をつく。
「新八」
「何だ」
「また今度、シラフで続き頼む」
そう言った瞬間、新八の目がくわっと見開かれた。
「ふざけんなこのバカ!!」
デカい声が頭に刺さるように響く。勢い任せに滑り込んだのか、ベッドのマットレスもぐらぐらと揺れた。イヤだ、とは言わなかったなあ。世界が揺れるような気持ち悪さに辟易しつつ、わざとらしく丸まってシーツをかぶった背中を見る。

俺の恋心も無事死に損なったようだ。とりあえずシャワーでも浴びるかと左之助は重い身体を何とか起こすのだった。







Comments

  • 壱原紅/感想批評募集中
    November 9, 2025
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