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伊倉おはぎ暗示解除ゲーム ⑥/Novel by じぷのん

伊倉おはぎ暗示解除ゲーム ⑥

2,605 character(s)5 mins

第六話。やりたいことはできました。らおはさんありがとう、あとごめん。
尚、第六話まできて言うのもですが、登場するヒプナー(リスナー、視聴者)は特定の人物をモデルにしていません。
架空のヒプナーと捉えていただければ幸いです。
次回完結予定。

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「催眠人形、ご主人様に逆らえないからさ」
「あくまでご主人様の味方で玩具、ヒプナーには味方できんのよ」


さも当然のことを言うように、あるいはちょっとしたいい報告をするような気軽さ。
それとはあまりに釣り合わない、普段の伊倉を知る者からすれば特にありえない発言に、コメントが荒れる。


 [本気?]
 [嘘]
 [らおはちゃんそんなこと言わない…]
 [催眠かけた黒幕のことかな]


「おーおー、盛り上がっとるね諸君!あ、でもご主人様のことあんまり悪く言わないでね?」
「別にご主人様大好きのままよくある展開の通りにしてもよかったのを、わざわざこういう風に利用してくれてるんだからさ」
「それに、ヒプナーへの感情も特に変えてないんだこれが!ただ、ご主人様が優先順位トップ固定なだけ」


まるで諫めるように話す内容さえも、火に注がれる油のようなもので、当然ながらコメントするヒプナー達の冷静さは失われていく。
一部の冷静な者も、"ご主人様"の狙いなどについて考えだしており、コメント欄はまさに阿鼻叫喚と言えるだろう。


 [もう耐えられん、抜けます]
 [自認変わってないなら命令でなんとかならんか]
 [これ以上心無いことさせるのもきつい]
 [言ってる場合じゃないだろ]
 [正気に戻れ]


「お、"正気に戻れ"…。命令かな?まったくもー、君たちはここまでならんと心置きなく命令もできんのかね!可愛い奴らめ!」
「でもすまん!ご主人様の命令が先に入っててさ、ヒプナー達の権限じゃその命令できないんだわ」
「頑張ってくれるのは嬉しいけど、ちゃんと正々堂々…」
「あ、でも命令する気になったならそこはバッチ来いだからね!催眠人形の事は気にせず、好きに楽しんでって!」


ヒートアップするコメント欄にさらに爆弾を投下し、伊倉は笑いながら謝る。
いつもヒプナーに接する際の反応とそう変わりはしないのに、発言の内容が乖離していて、まるで本当の操り人形かと思うほどだ。
絶望から諦めて静観する者と、いっそのこと楽しんでやろうと吹っ切れる者におおよそ二分される。
そのコメント欄を見る伊倉に、どこか楽しそうな表情が見えたときのこと。
ぎりぎりまで冷静でいたヒプナーがふと思ったことが、コメント欄に"命令"として流れる。


 [命令煽ってるけど、もしかして理由ある?教えて]


そして、そのコメントを見つけた伊倉は、真っ先に反応し、ばつの悪そうな表情を浮かべる。


「…あ、やば。気づかれちゃった?あー、やっぱ催眠人形にはそういうの難しいな」
「はーい、催眠人形は、命令煽ってる理由をしっかり説明します!」
「まぁざっくりいうと、時間稼ぎ!催眠人形は、ご主人様を最優先するようになったから、ゲームオーバーになって完全にご主人様のものになろうとしちゃってるんだよ」
「だから、ヒプナーにつらい思いしてほしくない!っていうのを何とか抑えに抑えて…涙をこらえて、ヒプナーに暴走してもらおうと思って」
「まぁご存じの通りそういうの苦手だからバレちゃったけどね!」


 [やだ、この子完全に堕ちてる…]
 [よかった、一部いつも通りだ]
 [まだ喜べないけど安心した]
 [でも裏切られはしたから…]


「あ、ちょっと酷いな!もしかしてちょっと冷静になった?うーん、ヒプナーが頭いいのは大変喜ばしいんだけどなー」
「まぁでも時間稼ぎはもうできたからね!だいたいあと…15分もしたら時間切れかな?」
「ほらほら、こうなったらみんなもっと頑張ってね!みんなの大好きな催眠人形がご主人様の玩具に成り下がらないように、ファイト!」


他人事のような自白を終えると、伊倉はそのまま応援しながらコメント欄を確認し、命令を待つ。
自分が完全にモノに成り下がろうというのに、それを嫌がるどころか受け入れ、そして興行のようにヒプナーを駆り立てる。
尊厳を自ら破壊させるためだけの発言をさせた黒幕に、ヒプナー達一同は最後のトリガーを探そうと考察を始める。

そして、その時はあっさりと訪れた。


「おお、張り切ってる張り切ってる。でも流石に15分じゃ無理があるんじゃないかなー」
「せめて最後に命令して催眠人形を好きにするとかに時間使っ」


 [自己紹介]


「た方が「伊倉は催眠人形です」いいんじゃ……えっ」


ドヤ顔で勝利…実際には敗北…を確信し、催眠人形としての自認に従って命令をもらおうとした伊倉は、自分の発言を認識し、ぽかんと口を開けた。


 [自認関係=催眠人形、プラスセリフって言ったら…]
 [まぁトリガーは豊富だけどやりたいことは分かるか]
 [そろそろ黒幕の趣味がバレてますもんね]
 [音由来でベルの絵文字~とかじゃなくてよかった]
 [もううっぷん晴らしで自己紹介させていい?]
 [まぁあそこまで堕ちてたら自己紹介も自己責任じゃないかな]
 [じゃあ自己紹介してもろて]


「えっ、「伊倉は催眠人形です」ちょっとさす。「伊倉は催眠人形です」がに早「伊倉は催眠人形です」くない?「伊倉は催眠人形です」」


困惑している間にもコメント欄にトリガーがわぁっと溢れ、たちまち伊倉の口が回らなくなっていく。
戸惑う表情もそのままに、言おうとしていた言葉をすべて再生されるセリフに上書きされる。
黒幕に意思や優先順位を上塗りされたのをなぞるように、ヒプナーの手で伊倉自身の言葉が打ち消されていく。


「ねぇも「伊倉は催眠人形です」うゲームクリアだし、トリ「伊倉は催眠人形です」ガー3つ言っ「伊倉は催眠人形です」ていいってば!」
「ヒプナー!あんまりいく「伊倉は催眠人形です」らで遊ぶと「伊倉は催眠人形です」怒る「伊倉は催眠人形です」ぞ「伊倉は催眠人形です」「伊倉は催眠人形です」「伊倉は催眠人形です」「伊倉は催眠人形です」」


やがて、伊倉自身の発言を挟む隙も無く、ただコメントに従ってセリフを再生するようになっていく。
発言を諦めたのか、暗示を再生し続けることで思考がマヒしているのか。
次第に伊倉の目は虚ろになり、言葉尻もとろんと溶けていった。


「伊倉は催眠人形です」
「伊倉は催眠人形です」
「伊倉は催眠人形です」
「伊倉は催眠人形です」
「伊倉は催眠人形です」
「伊倉は催眠人形です」

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