【今西和男 我が道11】相手エース封じてリーグ連覇――応援の声に「サッカーをやって良かった」
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日本サッカーリーグが成功した要因の一つに、東京五輪開催に合わせて、東海道新幹線が開通したことが挙げられていた。それまで東京―大阪間は特急で6時間半かかったが、3時間10分に短縮された。だが、広島が本拠地の東洋工業は、東京に遠征する時も新幹線は使わず、寝台特急で移動した。乗り継ぎを考えると、この方が効率が良かったからだ。
金曜日の午後5時45分まで会社で仕事をし、通常通り6時30分から練習。9時30分ごろ広島駅から寝台特急あさかぜに乗り、翌朝10時ごろ東京駅に到着。旅館で一休みした後、東大の御殿下グラウンドで練習して試合に備えた。宿泊して日曜日の昼間に試合をし、午後6時30分ごろ東京駅からあさかぜに乗って、翌朝7時前に広島駅に着き、午前8時15分から仕事をした。体調を考慮して、数年後に午後からの出勤になったが「仕事もちゃんとやって、サッカーも強い」という東洋工業サッカー部のプライドだった。東京では本郷三丁目の朝日館が常宿。広島カープも利用し、食事などスポーツチームを泊めるノウハウを持っていた。
日本リーグ2年目、66年はチームも私自身も好調だった。開幕戦はホームで名古屋相互銀行に5―0で勝つと、勢いに乗って4連勝。しかし第5節、5月29日に国泰寺高校で行われた日立戦で、雨の中、後半39分にロングシュートを決められ、2―3で敗れた。前年の開幕戦から19試合目の初黒星だった。八幡製鉄に首位を明け渡したが、第7節平和台で八幡製鉄に3―0で勝って首位を奪回。残り2試合となった第13節、勝てば優勝が決まる駒沢競技場の古河電工戦は0―0で引き分け、前年の開幕戦からの連続試合得点が26試合でストップした。11月13日の最終戦、国泰寺高校で行われた八幡製鉄戦は、雨の中1―1の後半36分にFW桑原楽之が決めて勝ち越し、後半40分に八幡製鉄がPKを外して東洋工業が2―1で勝ち、2年連続優勝を決めた。
私は14試合全てに出場した。東京五輪で日本代表の特別コーチを務めたデットマール・クラマーさんが、欧州で最新のシステム4―2―4を日本に伝えて、各チームが採用していた。私はセンターバック(CB)として、相手のエースストライカーを抑える役割。技術がなかったので、試合に出るためには、何か一つ人より勝るものが必要だ。相手に仕事をさせないように体でぶつかるスライディングタックルに磨きをかけた。スライディングにはリスクもある。尻が地面に着くので、素早く次の動きができない。私は「素早く立ち上がる」を意識した練習を繰り返した。
チームの日本リーグ連覇はうれしかった。私は4歳の時に被爆し、左足でボールが蹴れなかった。「なぜ、私だけこんなことになったのか」と悔しく思ったこともあったが、こんな足で一生懸命サッカーをやっている私を応援してくれる人もいたし「今西さんから元気をもらった」と言ってくれる人もいた。「サッカーをやって良かった」と思った。
◇今西 和男(いまにし・かずお)1941年(昭16)1月12日生まれ、広島市出身の85歳。広島市立舟入高から東京教育大(現筑波大)を経て東洋工業(マツダ)入り。俊足とハードタックルが武器のDFとして活躍。日本リーグ42試合、日本代表11試合出場。引退後はマツダの監督、総監督を務め、日本初のGMと言われた。サンフレッチェ広島の設立に尽力、日本サッカー協会強化委員、FC岐阜社長などを歴任。
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