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概要

かつてはSF映画の中だけの存在だと思われていたヒューマノイドロボットの導入が現実味を帯びてきている。製造現場は従来から労働環境が厳しいとされており、加えて近年では若年層の価値観の変化により働く場所として選択されにくくなっていることから、人手不足が進行している。このような状況の中、AIやセンシングなどの先端技術の発展を受け、人の代わりに作業ができ、離職することなく、休まず働き続けることができるヒューマノイドロボットに注目が集まっている。本稿では、主に人手不足に悩む製造業従事者に向けてヒューマノイドロボットの概要と製造業への導入可能性、そしてその導入に向けた展望について提示する。

なぜ今、製造業でのヒューマノイドロボットが注目されているのか

日本の製造業は今、深刻な人手不足に直面している。特に製造現場は、やりがいはあるものの厳しい職場であるとのイメージが根強いため、若年層から魅力的な職場と見なされず、人材流出が加速している。このような状況で、企業は生産力を維持するための自動化投資が急務となっている。そこで近年特に注目を集めているのが、ヒューマノイドロボットである。従来、製造業における自動化や省人化の手段としては、産業用ロボットやAMR(Autonomous Mobile Robot)/AGV(Automated Guided Vehicle)などの導入が主流だったが、これらは専用の空間を整備する必要がある、作業が固定的で柔軟性が低い、専用技術が必要で導入のハードルが高いなどの障壁が存在し、導入が困難なケースも多かった。ヒューマノイドロボットは人間の作業に最適化された既存の製造現場環境をそのまま活用でき、人型のハンドやカメラ、そしてAIを搭載しているため、複数の異なるタスクや、複雑な手技にも対応できる。加えて、自然言語での指示を解釈して自律的に遂行できることもあわせて、導入ハードルが低くなることが期待される。
人手不足以外にヒューマノイドロボットへの注目が高まっている背景には、関連分野の急速な技術革新がある。特に、AI技術の発展を背景に、ヒューマノイドロボットの脳となるロボット基盤モデルや、脳を鍛えるための学習手法(強化学習・模倣学習)の発展が加速している。また、開発やシミュレーションのための環境といったエコシステムの整備も進んでおり、NVIDIAを始めとするビッグテックが、ロボット界のプラットフォーマとなるべく大規模投資を進めている。
さらに、学習技術の進歩や部品コストの低下により、ヒューマノイドロボットの導入コストも大幅に下がっている。2001年にNASAが開発したヒューマノイドロボットは150万ドル以上のコストがかかったが、2024年にはUnitreeから約3万ドルという比較的手頃な価格のヒューマノイドロボットG1が登場した。このように、技術革新とコスト低減の両面から、製造業におけるヒューマノイドロボットの活用は現実味を帯びてきている。

ヒューマノイドロボットとは

ヒューマノイドロボットに明確な定義はないが、目や口、手足などの人間の身体的特徴を持ち、自律的判断や歩行などが可能で人間に似た行動を再現できるロボットを指すことが多い。従来、人間が行っていた汎用的な作業を担うことができるため、製造業をはじめ物流、小売、建設などあらゆる業界で注目されており、特に製造業においては、人手不足の深刻さや繰り返し作業の多さから先行して検討が進められている。
ヒューマノイドロボットは万能という印象を持たれがちだが、得意不得意が存在し、それらを理解した上で導入を検討する必要がある。従来の自動化手段と人およびヒューマノイドロボットの比較評価を行ったのが図1(ヒューマノイドロボットと人や他自動化機器との比較評価)である。作業対応力の面では、ヒューマノイドロボットはAIや人型のハンドを活用し、複雑かつ多様な作業を自律的に判断できるため、多くの工程での活用が期待される。一方、製造ラインのアウトプットのQCD(Quality、Cost、Delivery)に与えるヒューマノイドロボットの性能面としては、24時間稼働が可能という利点があるものの、作業精度やスピードの面では他の手段が優れている場合もあり、求められる性能を確認することが重要だ。また、コストに関しては、ハードウエアを2万ドルで提供することを目指すと公言している企業もあり、今後量産が進むことで本体価格が低下すると見られる。また、ソフトウエア面でもDeepSeek等の低コスト生成AIの登場が進んでいることを考慮すると、価格の低下が見込まれ、製造業において十分な投資効果が期待できる水準に達すると考える。


図1 ヒューマノイドロボットと人や他自動化機器との比較評価 ※2030年頃想定

製造現場での適応工程について

具体的にどのような製造工程でヒューマノイドロボットの活躍が期待されるのであろうか。製造業には、自動車などを製造する組み立て生産方式と、化学製品を製造するプロセス生産方式の大きく分けて二つの製造方式がある。組み立て生産方式はいくつかの製造工程に分けられるが、部品搬入、ピッキング・キッティング、組立工程では、その作業に求められる特性とヒューマノイドロボットの作業特性から特に導入が進むと考えられる。例えば、自動車の組立工程では、1つのラインで複数の車種が製造されるため、それぞれの車種に応じて作業を切り替える柔軟性が求められる。また、部品の組付けのため、回り込みなどの移動性が必要となる場面もあり、現在はこれらの作業を人間が担っているのだが、人間にとって作業姿勢が適しているとは言えず、中には上を向いたままの姿勢など、人間の作業者にとって不向きな作業も含まれる。ヒューマノイドロボットはそのような姿勢でも苦もなく作業を行えるため、導入することで大きな効果が期待される。一方、プロセス生産方式では材料搬入、計量、材料投入、混合・精製、そして保管・出荷の作業でヒューマノイドロボットの導入が進むと考えられる。特に材料搬入から混合・精製に至る工程は移動が必要な連続した工程であり、柔軟性・移動性というヒューマノイドロボットの特徴を活かした一気通貫での作業が可能と考える。
ヒューマノイドロボットの導入には、投資対効果や作業スピード、安全への対応などの乗り越えるべきハードルがあるが、近年の技術開発速度と低価格化を考慮すると、今後数年で製造現場への導入が進むだろう。将来的にヒューマノイドロボットの導入を検討したい企業は、図1を参考としながらどのような工程であればヒューマノイドロボットが導入できそうか検討を始めるのが良いのではないか。導入可能工程の情報や導入に向けた課題の詳細については、このページよりダウンロード可能な資料に記載されているため、ぜひ確認されたい。

製造業における先端事例

ヒューマノイドロボット導入に向けた海外の取り組みはどこまで進んでいるのだろうか。海外における先端事例を紹介する。

1.Figure AI

最新型のFigure02はBMWとの実証実験にて、自動車工場で箱から取り出した部品を溶接用治具の正しい位置に置く実験に成功した。同社は、将来の製造工程への導入を見据えて協業し、さらなる開発を推し進めている。

2.Boston Dynamics

現代自動車傘下のBoston Dynamicsは、ヒューマノイドロボットatlasを開発し、自動車工場内を模した研究室内で、実際のエンジンカバー部品棚から取り、運搬台車に整列するという動作を実験している。一連の動作は人間と同じ動きであり、さらには地面に落ちた部材の拾い上げるなどのイレギュラーな動作にも対応しており、製造現場での利用を意識した開発が進められている。

3.Tesla

製造現場で人間の作業を置き換えることを目標に、ヒューマノイドロボットOptimus Gen 2を開発している。11自由度(曲げられる関節が11個ある)のハンドや指先の触覚センサーを備え、繊細な作業が行うことができ、同社は2025年に社内工場での利用を、2026年に外部への販売を目指している。

以上、ヒューマノイドロボットの製造現場への導入の代表的な三つの事例を紹介した。これらはいずれも人間による作業が多く残る自動車工場での海外の取り組みであり、現状としては国内でヒューマノイドロボットの現場への導入の具体的な動きは見られない。製造業が盛んである一方、少子高齢化による人手不足という課題を抱える日本の製造業こそ、他国に後れを取らずヒューマノイドロボットの導入を検討する必要があるのではないだろうか。

今後の展望

前述の通り、ヒューマノイドロボットが製造現場で本格採用されるまでには投資対効果や作業スピード、安全面など、乗り越えるべきハードルは確かに存在する。しかし、先進国における人手不足、特に製造業における人手不足が今後より進展することも確かな問題として存在する。この問題に対する有力な解決策の一つとしてヒューマノイドロボットへの投資が拡大し、現場への導入が進展することは間違いがないだろう。
2040年代にはグローバルにおいてヒューマノイドロボットの数が人の数を超えるという予測も出ている。この数字はかなりチャレンジングなものであることに間違いはないが、そのような世界となった場合、製造業の構造も大きく変わるはずだ。製造業の人手不足という明らかな危機の中、日本の製造業はただ座して待つだけではなく、この起こり得る構造変革に向け、今こそヒューマノイドロボットの導入の取り組みを始める必要があるのではないだろうか。
ヒューマノイドロボットの動向に興味を持たれている方に向け、本稿の詳細版の資料を用意した。ダウンロードいただき、ご参照・ご意見いただければ幸いだ。

プロフィール

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    平島 拓朗

    グローバル製造業コンサルティング部

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    幸田 敏宏

    NRI IT Solutions America

    2004年野村総合研究所に入社。 2016年5月より現所属企業に出向。 2017年9月から半年間、MIT Media Labの客員研究員。現在は先端ITの発掘とビジネス開発を担当。
    専門はRetailTechなどリテールサービス動向、先端ITを活用した価値創造、企業間のオープン・イノベーションプロジェクトなど。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。

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