《参政党「神谷王国」潜入ルポ》「選挙戦前に支持者が発した腰砕けの言葉」、「最古参党員との対話」…参政党員の実態と辻立ちで感じた「田中角栄流の名言に隠された意味」
結局、23日に高市首相は衆院を解散し、27日に選挙戦が開始した。 初日のボランティア活動は、ポスター貼りから始まった。私の所属する支部で最古参と言われる40代の男性党員と2人一組になった。 私が車のハンドルを握り、男性はポスターと地図を持って後部座席に乗って地図を読み、場所を見つけると車を降りてポスターを貼るという役割分担。午前8時半過ぎから、午後4時過ぎまで、千葉市美浜区にある11ブロック、全部で83か所にポスターを貼った。合計で400か所強あったので、その約5分の1を2人で貼ったことになる。 お昼時に、ファミリーレストランに入って2人で昼食をとった。彼は6年前の結党以来の党員であることが分かった。
"シーラカンス"と呼ばれる最古参の党員との対話
神谷が愛着を込めて"シーラカンス"と呼ぶ、全国でも700人ほどしかいない最古参の党員の1人だった。 この男性、瞬時の判断や指示も的確で、作業も緻密で抜かりがなかった。 話に耳を傾けると、大学を卒業後、大手メーカーに勤務し、海外転勤は3回を超えるという。 そんな人物がどうして参政党に入ったのか。彼はこう話す。 「今、畑つきの家を探しているんです。会社から車で1時間ぐらいで行ける範囲で。農業に必要なものは種と土地だけなんだろうなって考えていて。農業って究極のモノづくりだと思うんですよ」 参政党員にはいくつかの形がある。その一つがオーガニック食品系、次が陰謀論系、3つ目がコロナ政策に対する反発(これは反ワクから同調圧力が強かったことへの反発までかなりの濃淡がある)。4つ目が外国人嫌いであるが、これは体感では思ったほど多くない。少なくとも千葉第1支部では、あからさまにヘイトを撒き散らす人は、組織の中心にはいなかった。最後に自虐的歴史観に反発する系統。いくつかの要素が重なる場合もあるが、いずれも、神谷宗幣のカリスマ性という傘の下に収まっている。
2日目は、柏駅と船橋駅で行なわれた神谷街宣に参加した。 神谷がなぜ、選挙戦序盤で、この2か所に応援に入ったかといえば、9人の候補者が立候補した千葉県内のなかでも、この2駅で神谷が応援した3人が重点候補者だったからだ。工藤聖子(千葉4区、比例復活)、中谷めぐ(千葉13区、比例復活)、宮本寛之(千葉8区、比例復活ならず落選)――この3人は比例代表の重複候補者たちだった。 3日目から、私は上田の辻立ちについて、演説中のビラを配った。 上田の街宣スケジュールは、朝、昼、晩と1日3回、主要駅前で辻立ちをし、辻立ちの間に、街宣車に乗ってマイクで投票を呼び掛けた。 千葉第1支部には、専従の党員はおらず、支部長も選対本部長も、仕事の合間に、応援に駆け付けるというスタイル。1日のスケジュールがグループLINEに流れてきて、辻立ちの場所に、ボランティアが集まった。 決まった選挙事務所はなく、日替わりでレンタルオフィスを借りた。選挙に付き物の為書きも胡蝶蘭もなかった。今まで私が参加したなかで一番質素な選挙戦だった。 辻立ちの間、何百人と通り過ぎる人たちに向かって、5人から10人のボランティアが上田の周りに立ち、ビラを配る。もらってくれるのは100人に3、4人といったところか。 ビラをもらってくれる人は、参政党や上田に興味を持ってくれる人だ。ビラ配りとは、無数に通り過ぎていく人たちに目印をつける役割である。 「ここに投票してくれそうな人がいますよ」という目印だ。 候補者はこうした人を見つけたら、走り寄って握手をする必要がある。候補者の演説を聞いただけで、心が打たれて、よし投票しようと思う人など皆無なのだ。 田中角栄が語ったという「握った手の数だけしか票は出ない」という名言を実践する必要がある、と思った。 私はビラをもらってくれた人に必ず声をかけた。 「候補者が今、そこで演説をしていますので、声をかけていただけると励みになります」 脈がありそうな人は、上田の近くまで連れて行った。そのなかの1人には、上田の高校の同級生も交じっていた。上田に合図を送って握手することを促すこともあった。 実際に握手している候補者を近くで見ていると田中角栄の名言にはもう一つの意味が含まれていることが分かった。 候補者が有権者と握手をする際、そこには対話が生まれる。 年金を増やしてほしい、介護の手続きを簡略化してほしい、子育て支援に力を入れてほしいといった、一般的な要望もある。本来ならバスしか入れない駅前のロータリーに自家用車が入ってくるのをどうにかしてほしいという声や、英語のリバティーとフリーダムの違いが分かってないと政治家としてはやっていけない、と候補者に講釈を垂れ始める有権者もいた。 有権者との直接の対話こそが、候補者を鍛え、票につながっていくというのが、田中角栄の名言に隠された意味だった。 (第4回につづく。第1回から読む) 【プロフィール】横田増生(よこた・ますお)/1965年、福岡県生まれ。関西学院大学卒。予備校講師を経て、米アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号取得。『輸送経済』記者、編集長を経て、1999年独立。2020年に『潜入ルポamazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞。『「トランプ信者」潜入一年』で第9回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。 ※週刊ポスト2026年2月27日・3月6日号
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