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小室淑恵氏インタビュー(全3記事)

優秀な上司が休んだことで「指示待ち部下」が覚醒 「言われたことしかしない」社員が自ら動き出す

【3行要約】
・マネジャーの多くが「働かない社員」の存在に悩んでいますが、実は期待感の喪失や情報共有不足が根本原因となっているケースが多いのです。
・働き方改革の専門家によると、時間外労働ができない社員が「自分は評価されない」と諦め、意欲を失ってしまう悪循環が職場で起きています。
・管理職は自ら2週間の休暇を取って情報共有を促進し、仕事を適切に分割することで、全員が意欲的に働ける環境を作るべきです。

前回の記事はこちら

「働かない社員」は期待感と情報共有が鍵


——反対に、いわゆる「働かない社員」がいる時。働き過ぎる社員と働かない社員のバランスの悪さも、現場マネージャーの悩みになるかなと思います。こうした状況にマネージャーはどう向き合っていくべきでしょうか。

小室淑恵氏(以下、小室):日本の職場で多いことですが、働かないと言われている人が、昔から働く能力も意欲もなかったわけではないということです。なんらかの事情で時間外労働や休日出勤ができなかったり、いわゆる気合いと根性の試練の中で「自分は期待されていない」と感じたり、どこかで、その社員が諦め型になった分岐点があると思います。

例えば、「あ、そういう仕事、私はできませんので」とビシッと断ってくるタイプの人。責任のある仕事を引き受けたら、普通は評価につながりますよね。だけれども、どんなに責任の重い仕事を引き受けても、「時間外労働ができない私は評価されない」ということが過去の経験上、散々わかっている中で、苦労だけ引き受けることは絶対にないわけです。

なので、評価されるという期待感を失わせてしまったことが過去になかっただろうかと、マネジメント層は一度考えてみていただきたいんです。(メンバーが)時間外労働ができる・できないということを、評価の中に持ち込んでないだろうか、と。上司がメンバーに対して、長いスパンできちっと評価をしていく期待感をちゃんと伝えていくと、息を吹き返す方がけっこういらっしゃいます。

誰もが意欲の湧く仕事に関われるように

小室:あとは、どんなに仕事をしようとしても、肝心な情報が共有されていない職場もけっこうあります。時間外労働ができるタイプの人が、自分の袖机に「秘伝のたれ」みたいな資料を入れていて、その情報がないと一番重要な仕事はできない、といった状態です。

そういう情報抱え込み型の人は、膨大な仕事量をこなしていて、いつも評価されます。情報を共有されていない方たちは、雑用を投げつけられてモチベーションの湧かない仕事しか振られていないケースも多いです。

——なるほど。「言われたことしかしない」と言われるような人は、そもそも意欲の湧かない仕事しか任されないために、受け身な仕事の仕方になってしまっているケースもありそうですね。

小室:そこで重要なのが、仕事の情報をちゃんとみんなが見られるクラウドの中に共有されているかどうかです。時間外労働ができる人の情報抱え込み型の仕事のやりかたを変えてもらい、情報をクラウドにアップして共有してもらうと、短時間で働いていたり、週3勤務などの多様な勤務形態の人もおもしろい仕事ができるようになります。今は、残業ができる人にはおもしろい仕事、残業ができない人には切れ端の仕事しか渡されない、という状態になっていることが多いです。

よく「この企業を担当するには休日出勤もゴルフもできなきゃいけない」みたいなのがありますよね。こういう一流クライアントを担当する時は、これとこれとこれもできなきゃいけない、というセットで1つの仕事みたいに、仕事のサイズがすごく大きくなってしまっています。

これを3分割して、どれか1個ずつでも担当できるかたちにして、先発・中継ぎ・抑えみたいにみんなでボールを回していく。パス回しで仕事をするようにすると、誰もがこの一流クライアントの、「やりたい!」と思えるような意欲が湧く仕事を担当できます。

クライアント側にしてみたら、ちゃんと情報共有していれば複数担当者がいても別に困らないので、今まで「働かない」と思われていた人たちが意欲を高めて仕事ができる状態になってくるかなと思います。

「休むこと」から始める働き方改革

——ありがとうございます。ここからは、残業させずにチームで成果を出すための具体的な策をおうかがいします。まずマネージャーがすぐに着手できるような実践策をご紹介いただけますでしょうか。

小室:まず、管理職自身が休みを取ることです。365日休まないつもりで仕事をしていると、情報を属人化させてしまい、自分にしかできない仕事があるから休めない、となります。

そこで、全員で順番に2週間のまとまった休みを取るというやり方があります。ただ、いきなり誰かが2週間ずつ休み続けると大変なことが起きてしまうので、まずは、「2週間休んだとしたら、自分の仕事で何が火を噴くか」をイメージして、引き継ぎマニュアルを書いてもらいます。

自分の仕事について自分でマニュアルに書くと、相手には意味がわからないものになりがちなので、相手がマニュアルを書きます。自分も誰かが休んだ時の仕事を引き受けるので、誰かのマニュアルを書く。お互いにマニュアルを書きあって、全員のマニュアルが完成したら、2週間ずつ時期が重ならないようにして、順番に休んでいくのです。

そうすると、その職場における属人化していた情報が一度全部吐き出されるので、仕事の見える化・共有化が一気に進みます。たとえコロナのような感染症や、震災が来たとして誰かが2週間休んでも大丈夫、という状態になります。

一度仕事を見える化・共有化できると、子どもが熱を出して早く帰らなければいけない時などに、ラストワンマイルの仕事をお願いできるようになります。常日頃から人にパスを回せるような仕事の仕方の訓練ができるので、残業時間は激減するのに業績は非常に上がります。

管理職を入れずに「現場の残業時間だけ減らせ」という会社

——全員が2週間の休みを取るというのはおもしろい試みですね。一方で今、管理職のワークライフバランスがなかなか守られていない現状があるかと思います。これに対して、管理職本人や人事・経営側ができる対策についておうかがいできますでしょうか。

小室:まず、すごくシンプルなことですが、働き方改革の対象に管理職を入れるということですね。本当に多くの企業が、管理職を入れずに「現場の残業時間だけ減らせ」という指示の仕方をしています。マネジメントの労働時間も一緒に減らしていきましょう、と組織として指示を出していくことが大事です。

じゃあ実際にマネジメントも含めて仕事の量を減らすにはどうしたらいいかというと、私たちは「カエル会議」というやり方をしています。その職場で、なぜ時間外が発生するのかという仕事の課題を全員で出し合っていく会議です。

よくマネジメントはみんなに「何が課題だと思ってるか意見を出して」と、自分は上から決裁する立場になりがちですが、マネジメント自身も、自分が何で今忙殺されているのかを出していくことが重要です。マネジメントがそれを出すと、より上の職位の人の決裁や会議に膨大な時間が奪われている、といったケースが多いことがわかってきます。

これはチームの中だけで話し合うのではなく、組織全体で「○○部長会議」、「○○担当会議」とかをどんどん減らしていかないといけないよね、といった、上のレイヤーの施策が必要になってくることもわかります。必ずマネジメントを含めた施策をやっていくのが大事かなと思います。

優秀な上司がいると若手は育たないことも

——この「カエル会議」によって、長時間労働が改善し成果につながった具体例があれば教えていただけますか?

小室:そうですね。薬局の店長さんなんですが、コンサルに入った当初は「自分は有休を取りたいという気持ちはない。長時間労働も気にならないからコンサルはいらない」とおっしゃっていました。

「若い人のためには働き方を変えたほうがいいと思うので、『カエル会議』はやってもいいですね」と、自分は対象じゃないという感じだったんです。

でも、初回の「カエル会議」で、うちのコンサルタントが「もし有休が取れたら何をしたいか、みんなで夢を描きましょう」というワークをやりました。そしたらもう、出るわ出るわ。「ライブに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」と、メンバーみんながたくさん出し始めたのを見て、店長ははっと気づいたんです。「自分が休まないとみんな有給も取れないんだ」と。

次にマニュアルを書いて、2週間ずつ順番に休む「マニュアル休暇」を始めました。店長はそれまで、薬剤師じゃないと扱えない仕事があることを理由にほとんど休まずに仕事をしていましたが、マニュアルに書き出した時に、薬剤師の資格が必要じゃない仕事まで抱え込んでいたことに気づきました。

人が育ち、幸福度も高まる働き方改革

小室:そして店長の女性は恐る恐る休んでみた。その日私たちが店舗を見に行ったら、Aさんという20代の女性が入っている日でした。「今まで店長がいない日に入ったことがないので、お店の目標数字がいかないんじゃないかと思って、もう緊張で死にそうです」と言っていたんですが、その日は猛暑でお客さんがまったく来ませんでした。

そうしたら彼女は、ポカリスエットを両手に持って「近隣に工事現場があるから、あそこに売りに行ったら売れる!そしたら今日の数字が達成できるかも!」と言って、売りに行ったんです。そしたらすごく売れて、5往復ぐらいしていましたね。私たちも「Aさんにこんな責任感があったとは」とびっくりしました。すばらしい上司がいると、若手はぼやっとしてしまって、案外自主性が育たない。優秀な人が休んだ時ほど部下が育つ、ということがわかりました。

このことがきっかけで、店長の働き方もガラッと変わりました。本当に2週間休めるようになったんです。その後結婚もされて、出産もされました。自身が休むことによって人が育ったり、自分の人生が変わっていくことがあるんだなと実感されたそうです。

人口減の国のシビアな生存戦略

——上司が思いきって休むことで、部下の責任感が芽生えたり、仕事に主体性を持って取り組めるようになる。個人の幸福度が上がるのと同時に、組織に取ってもプラスに働くんですね。

小室:そうですね。あとお伝えしたいのは、長時間労働の業界は業界ごと選ばれなくなっているということです。ずっと労働時間の管理がされてこなかった医療業界では、今、勤務医の7パーセントが日常的に自殺を考えているという本当に深刻な数字が出ています。業界をあげて働き方を変えていく必要がありますよね。今日は個人にフォーカスした話が多かったですが、国の姿勢として働き方を変えていく必要があります。

人口減の国で経済成長していくためには、いかに短い時間で働く人を戦力にしていくかが重要な施策です。ワークライフバランスという言葉のイメージからお花畑な議論だと思われがちですが、人口減の国が生き残っていくためのシビアな戦略なんだというところが一番重要なのかなと思っております。

——もう個人の働き方というところを超えて、どのように全員が働いていけるかを考えていかなければいけない差し迫った状況があるとわかりました。小室さん、ありがとうございました。

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1on1をしているのに部下が突然辞めるのはなぜなのか? 部下のエンゲージメント低下のサインを見抜くには(全3記事)

1on1で部下の本音を引き出す質問の仕方 手遅れになる前に部下の「離職サイン」に気づくには

【3行要約】
・部下の離職は突然起きるように見えますが、実は事前のサインを見逃している可能性があります。
・世古詞一氏は、ハラスメント意識の高まりで上司が本音を聞きづらくなっていると指摘。
・離職を防ぐには、日頃の観察と具体的な問いかけ、そして部下の主体性を引き出す1on1の実践が重要です。

前回の記事はこちら
本連載では、過去に取材したビジネスパーソンを再び訪ね、その後のキャリアや働き方、職場観・人生観がどのようにアップデートされたのかをうかがいます。今回は、1on1の第一人者である世古詞一氏にインタビューしました。

部下の離職サインを見逃さないために

——ふだんの1on1で「大丈夫です」「問題ないです」と言っていた部下が突然辞めてしまうことがあります。部下のエンゲージメント低下に気づけないのは、上司部下間の関係性やコミュニケーションに要因があるのでしょうか。

世古詞一氏(以下、世古):そうですね。最近はハラスメントやコンプライアンス意識の高まりで、上司がプライベートの話にどこまで踏み込んでいいかわからず、聞けなくなっているんです。

上司は本音を聞きたいけど聞きづらい。部下も聞かれないから答えない。お互い当たり障りのない業務の話で終わってしまうので、上司は部下が何を考えているか把握できていないんですよね。あとは、離職のサインに気づきましょうとよく言われますが、そのサインが行動に出ている時点で、もうかなり末期に近い。


——部下側も割り切って態度に出しているということですね。

世古:はい。「前は残業していたのに最近は定時で帰る」「前は文句を言っていたのに最近は言わない」「会議での発言が少ない」といった変化が見えた時点で、1on1で「最近気になっているけど、何かある?」と聞くネタにはなります。

ただ、部下もそこに至るまで悶々としていたものがあるわけです。その手前の内面的な段階、モヤモヤの段階で話ができているかが大事です。だから、サインに気づいた時点で聞いても、部下からすると「こうなるまで気づいてくれなかった」「もう遅いです」という状態かもしれません。

——本来は、部下がモヤモヤを抱えている段階で話が聞けているといいんですね。

部下の本音を引き出す質問の仕方

——ふだんの1on1で聞けていればいいということですね。

世古:そうです。例えば「2日前の会議で少しモヤモヤしていそうだったけど、どうだった?」とか具体的に聞くと、「あれは納得していなくて」と話してくれます。それを逃すと、部下の中で不満が溜まっていきます。

——上司が気にかけてくれない、ということでさらに不満を募らせてしまうこともありそうですね。

世古:そうです。部下も表立って言わない人が増えていると思います。選択肢も増えているので、「わからないならこの会社、もういいかな」という判断をするわけです。

——上司がすべての部下の変化に気づくのはかなり難しいですよね。

世古:そうですね。でもできれば1on1だけに頼らず、ふだんから部下のことを見てあげると、より質の高い1on1になります。

例えば「最近、モヤモヤしたことはある?」と大きく聞くと、「どうですかね」とあまり答えが返ってこないんです。でも、具体をぶつけると出てきやすくなります。「あの会議の時にモヤッとしていたようだけど、どんなことを考えていたの?」と具体的に聞かれると、答えやすくなります。

——大きな質問をされると、何について聞かれてるか前提がわからないから、話しづらいというのもありますよね。

世古:そうです。少し具体化してあげると答えやすくなります。それを的確にするにはふだんからアンテナを張っておく必要があります。「これ、次の1on1で聞いてみよう」とメモしておくといいですね。それを繰り返していると、部下も「こういう話をしていいんだ」と学習でき、信頼関係もできてきます。

「次回の1on1のテーマ」を決めておく

——なるほど。ふだんから部下の行動をメモしておくということですね。一方で、意識はしてるけど忙しくてなかなか難しいという方も多いかと思います。多忙なマネージャーがすぐ真似できるような、1on1の質を上げるテクニックやコツはありますか。

世古:まず、1on1をどういう場にしていくかを部下とあらためて話してみるといいです。というのも、上司が1on1を負担に感じる理由は、部下の1on1に対する認識が低いからなんです。部下としては、「自分がわからないことを上司に言えばいい」という感覚なんですよね。

——何も考えず1on1に臨む部下が多いということですね。

世古:そうです。上司が楽になるためには、部下に目的や、どういう時間にしていくかを一緒に考えてもらう。できれば準備してきてもらいます。最初は負担になるかもしれませんが、「次回のテーマはどうするか」「何を準備しておけばいいか」を話しておく。例えば「次回は業務の振り返りをやろうか。そのためにどういう準備をしてくるといいかな」といった具合です。

——お題があると、部下も考えやすいですね。

世古:そうです。「これをやれそう?」「負担感ある?」「このくらいならできそう?」とすり合わせて落としどころを見つけます。「じゃあ、作ってきます」となれば、次の1on1ではそれをたたき台にしながら、「これを見ながら強みを考えてみます」といったことができます。予告編を一緒に作っていくイメージです。

1on1の質を高めるカギは上司ではなく「部下」

——1on1の中で次回の1on1の話をするというのは新鮮ですね。1on1は上司が主導でやるものと思っている方が多いと思いますが、どう思われますか。

世古:本来、1on1は部下のための時間なので、部下が主体でやるべきなんです。ただ、その認識がぜんぜん浸透していません。上司に対してはいろんな会社が1on1の研修の機会を作って啓蒙しているんです。

でも、部下に対してはあまり啓蒙できていないケースが多い。上司にまず啓蒙して「それを部下に伝えてね」と言うんですが、上司もなんとなく理解はしたものの、部下に伝えるほど深く理解できていないので、抱え込んでしまう。本来の趣旨や部下が主体だということを伝えきれていないんです。

私は最近、部下側の1on1研修の機会が増えているんですよ。

——部下向けの1on1研修というのは珍しいですね。

世古:はい。もちろん順番としてはまず上司です。上司がこういう場が大事だと思わないと、場自体がセットされないので。次に、これを継続させて質を高めていくキーパーソンは部下なんです。部下が「この時間は忙しいので仕事をしたい」「意味はあるんですか?」という状態だと、良い時間にならないわけです。

部下に目的や、こういう準備をしてくるんだという認識がないと良くなりません。部下側の1on1研修をやると、みんなそろって「あ、1on1ってそういうことだったんですか、」と言うんです(笑)。「普通に業務のことを聞くんじゃないんですね」「そういうことをやるんですね」と目から鱗という人が多いんです。それくらい部下の認識がまだ浸透していないんですよね。

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(2026年再掲版)多忙なプレイングマネージャーの悩みを解消する、困難に強いチームのつくり方(全1記事)

多忙なマネージャーに追い打ちをかける急なトラブル… 「できる人」ばかりに負担をかけずチームで乗り越える方法

【3行要約】
・チームが困難に直面した時、根本的な課題解決に時間がかかり、メンバーが疲弊してしまうという問題が多くの組織で起きています。
・池田めぐみ氏は、困難への対処には4つのパターンがあり、根治課題と緩和課題を分けて取り組むことが重要だと指摘します。
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——第2回では、トラブルを未然に防ぐための振り返りのコツとして、マニュアルを作るだけで終わらせず、役割分担やルールに落としていくことが大事だとお伺いしました。困難に対処していくには、根本的な課題を見つけ出して解消することが大事だと思うのですが、チーム全体が疲弊していて、そこに向き合う余裕がない場合はどうしたらよいのでしょうか?

池田めぐみ氏(以下、池田):困難への対処の仕方って、けっこういろんなパターンがあるんです。ここに4つのパターンを出しているんですけど、ゆっくり対処しなきゃいけないのか、速く対処しなきゃいけないのか。あるいは、今までどおりにコツコツやっていって、ストレスをあしらう型でいくのか。それとも、これを機にまったくやり方を変えて今の状況を乗り越えようとするのか。

例えば研修を売る会社が、コロナ禍で(危機的な状況になった時)、今まで通り対面の研修を売り続けるアプローチもあるかもしれないけど、一方でこれを機にオンラインに変えていって、売上を回復させた会社もあると思うんです。

疲弊して詳細な回復計画を立てる余裕がない時は、「まずはどの型を使うか」「どの型とどの型を組み合わせるのか?」をラフに話しあってもいいかもしれません。あるいは、「根治課題と緩和課題に分けましょう」みたいな話を、『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』ではしています。

「根本的な課題」に取り組む余裕がない時の対処法

池田:困難に直面した時って、どうしても解決しなきゃいけない課題にフォーカスしがちなんですけど、そういった本質的な課題って、おっしゃる通り、解決に時間がかかるじゃないですか。その間にチームが疲弊してしまうこともあるので、根治課題と一緒に「緩和課題」と言って、ストレスをケアしたり、ちょっと前に進んでる感を出すことが大事です。

例えば営業がうまくいかない時に、営業のエキスパートの暗黙知を拾っていって、長期的に教育してみんなの営業力を上げようとしたら、3ヶ月以上かかってしまうと。そこでまずは「今週の速報のランキング」を上げることを目標にして、「大変でも毎日客先に足を運ぼう」とやってると、前に進んでる感が出てくる。そうすると、「なんかしんどい」とか「もう無理かも」って思いにくくなるので。

根本的な課題を扱うのはもちろん大事なんですけど、それと同時に「前に進んでる感」とか、ストレスをケアするような緩和的なことを一緒にやっていくのが大事です。

——この4つのレジリエンス戦略は、どのタイプがおすすめというものはあるんですか?

池田:どれがおすすめとかはなくて、問題状況を解決する時に、組み合わせて使ったりすることもあると思います。方針は変えないコツコツ柳型で、ゆっくり今のやり方で解決していくんだけど、ちょっと発想の転換を最初にしておこうとか。

かつ、個人によってどっちが得意かも違うと思うんですよね。「私はストレスをあしらう型」という人もいれば、「僕は嫌なことがあったらやめちゃって、違う方向に転換するんだ」という人もいると思います。個々で価値観も違うので、それを話し合うのも、チームならではの良さなのかなと思います。これらをうまく組み合わせながら、解決に取り組むのが大事なのかなと思いますね。

「できる人」の力に頼らずチームで乗り越える

——ありがとうございます。ここまで、チームの持病を克服し、次に活かすためのヒントを教えていただきました。一方で、個々人の能力が高く、各々が課題に対処する方法がわかっている場合でも、チーム内のレジリエンスを高める必要はあるのでしょうか。

池田:今まではなんとなく回っていたとしても、誰かが抜けたことでバランスが崩れたりすると、そのうち自分たちの力ではうまく解決できないことが起こり得ると思います。なので特定の人の力に頼るんじゃなくて、チームで乗り越えることを意識したほうがいいのかなと思います。

ただ、チームのフェーズによっては、今は個々で対処するやり方で回ってるとか、あるいは仕事がすごく分担されているから大丈夫だということもあるかもしれません。その場合はある程度そのままでもいいんですけど、大きな困難が起きたり、1人で担っている人が疲弊してしまったりする可能性があることを知っておく。

そして、困った時にはチームレジリエンスのサイクルを回せるように意識しておくことが、今後の不確実な世の中では大事なのかなと思っています。

——うまくいっている状況でも、チームに新しいメンバーが入ってきたり、急にエースが辞めてしまったりすることもあると思うので、日頃の基礎力が本当に大事なんだなと感じました。「罰ゲーム化」と言われる管理職にとっては、「今が大変」という状況で、なかなか手がつけられないところかもしれないのですが、時間をかけて解決していくつもりで取り組み始めないといけないんだな、という気もします。

池田:そうですね。やはりチームレジリエンスの講演をしていると、何か特効薬が欲しくて来てくださる方もいらっしゃるんですが、残念ながらそういうものがあるわけじゃなくて。ただ、ふだんからコツコツとチーム基礎力を育んでいくと、ちゃんとルールが定まってきたりうまくいく環境ができたりして、ちょっと楽できるようになると思うので、がんばっていってほしいなと思います。

マネージャーは一人で抱え込んではいけない

——ありがとうございます。こうしたチームレジリエンスを日々高めていくために、マネージャーが心掛けるといいことはありますか?

池田:まずは1人で抱え込まない姿勢がすごく大事なのかなって思います。「マネージャーになったからには1人でがんばろう」と思って無理しすぎたりして、心を壊してしまう人が増えている気がします。1人で抱え込まずに、「みんなで問題を解決していこう」と意識できるリーダーは、チームレジリエンスを高めやすいと思います。

その上で、メンバーを信頼できることも大事だと思います。チームで問題を解決していく時、「解決すべき課題」だと思っていることの認識が、メンバーによって違っていることがあるんですよね。

エースが抜けて、チームの営業利益がすごく下がってることが課題だとしたら、上司はそのエース以外の人のスキル不足のせいだと思ってるかもしれないし、メンバーは「そもそもこの営業目標のプレッシャーが強すぎるから、生き生き働けない」と思ってるとか。

個々人で異なる観点をまとめながら、チームでうまく役割分担や得意なことを活かしつつ、問題を解決していく。その時に、メンバーのことを敵だと思わないで、一緒に船を漕いでいく仲間だと思うことが、すごく大事だと思います。

「誰かの手を借りる」のは恥ずかしいことじゃない

——そんなふうにマネージャー自身がマインドを変えていくには、どうしたらいいのでしょうか?

池田:1つは、「自分は神じゃない」って認めてあげるのが大事だと思います。今のマネージャーってすごく忙しいと思いますし、求められることも多くて、本当に人間を超えた能力がないと回らないと思うんですね。

なので、「全部自分がやらなきゃ」とか「自分で全部できる」と思わず、誰かの手を借りる。それは別に恥ずかしいことじゃなくて、「今は必要なんだ」と認識するのが大事なのかなと思います。

もう1つ、メンバーに任せる時に「嫌な顔をされないか」ということが気になる人も多いと思います。その場合は、相手のWinを作って、自分も相手も得をする構造を意識してあげるといいのかなと。

今は大手だと、「若手に重たい仕事をやらせて、ハラスメントになったらどうしよう」とかで仕事を渡せないといった声もあります。ただ、若手としては本当はチャレンジングな仕事がしたくて、会社が“ぬるま湯”だと感じている人たちもいると。

なので、必ずしも自分の仕事や大変な仕事をパスすることが部下にとってマイナスになるとは限らないんですね。その部下のタイプをよく見ながら、「この仕事を渡すことで、もしかしたら相手にも得になるかも」って考えて渡していくといいと思います。

メンバーの「入社時の情報」を人事と共有

池田:例えば人事って、入社した時に面談とかして、その人の情報をけっこう持ってるはずなんですよね。でも気づくとそれって、あんまり共有されていなくて、上司は(部下のことを)そんなに知らないことも多い。

なので、(人事と情報を共有し)その人がどんな人で、何が得意で何が嫌いなのか。あるいは将来どういったことをしたいのかを、できるだけ(1on1とかで)知ろうとするといいのかなって思います。忙しい時に1on1をするのは大変かもしれないけど、ちょっとずつ時間を作ってやっていくと、いざという時に(仕事を)パスしやすくなり、長い目で見た時に成果につながると思いますね。

——マネージャーが、「メンバーに仕事を振るより自分がやったほうが早い」とか「嫌な顔をされたくないから仕事を振れない」というマイナス面ではなく、メンバーに助けてもらうことのプラス面を考えられるといいですね。

池田:本当におっしゃるとおりだと思います。1回頼ってみると意外とできるとか、「そんなに下手じゃないじゃん」とかが見えてくると思うので。「メンバーと協力しながらやったほうが、チームの成果が出やすいな」という経験をするのもすごく大事だと思います。

——メンバーを信頼して仕事を任せる勇気を持つということですね。池田さん、ありがとうございました。

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