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成瀬「心と言葉の英文法」レクチャーシリーズ 005「認識・思考・言語」人の視点、天の視点

「英語の心の仕組み」がわかる!

成瀬がユーチューブで展開しているレクチャーシリーズ(約10分ビデオ40本)のテキストバージョンです。同シリーズでは英語の認識・思考の特性からセンテンスの構造までのすべてを解説しており、英語の心と言葉の仕組みの全容を知ることができます。ユーチューブビデオにはタイトルに提示しているURLからアクセスできます。

☆☆☆

005「思考・認識・表現」 「人の視点、天の視点」 (3)

和の日本語の「れる/られる」と英語の受動態

https://www.youtube.com/watch?v=8sVdu2NACiM&feature=youtu.be

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「人の視点、天の視点」の第3回講義です。ここでは和の日本語の「れる/られる」と英語の受動態について考えましょう。では、はじめます。

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まず、この日本語をみてください。「山田さんはバッグを盗まれた」です。さて、これを英語で表現すると、どうなるでしょうか。

非常によくある間違いが、次のものです。Mr. Yamada was stolen the bag.です。「山田さんは」がMr. Yamada、「バッグを」がthe bag、「盗まれた」がwas stolen、というわけですね。

これは間違いです。そもそも英語として構文が間違っているのですが、それよりも、これだと盗まれたのはバックではなくて、山田さん自身になってしまいます。Mr. Yamada was stolenですからね。

では、正しい英語で表現するとどうなるかというと、Mr. Yamada’s bag was stolen.です。これで正しく、というとヘンですが、山田さんのバッグが盗まれたわけです。

でも、「山田さんは~盗まれた」なのに、Mr. Yamada was stolen…では、なぜ駄目なのでしょうか。

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英語での「天の視点」からの認識のあり方をみてみましょう。まず、someoneとMr. Yamada’s bagという2つの実体がみえます。ここで、視点の基点、出発点をsomeoneに置いてみましょう。すると、someoneがMr. Yamada’s bagをstealする関係にあることがわかります。

このように、あるひとつの実体が別の実体に対してなんらかの影響を与えることを、英文法では「Transitiveの関係」と呼んでいます。Transitiveは、日本語の文法用語では「他動性」と訳されています。「他を動かす性質」という意味でしょう。

そしてこの他動性をもつ動詞としての役割がTransitive Verb、「他動詞」です。ここでのstealは他動詞の役割を果たしています。

なお、「steal」イコール他動詞なのではなく、stealにはintransitive、非他動詞つまり自動詞の役割も、それから名詞の役割も持っていることを忘れないでください。

さて、こんどはMr. Yamada’s bagのほうを視点の基点、出発点としてみましょう。すると、Mr. Yamada’s bagが、someoneのstealから影響を受ける関係にあることがわかります。これを英文法では「Passiveの関係」と呼んでいます

Passiveは日本語の文法用語では「受動性」と訳されています。「他の動きを受ける」という意味なのでしょう。そしてこの受動性を役割をはたす動詞を用いている構文がPassive Voice、「受動態」です。

このように、英語での「天の視点」からの認識のあり方は、ふたつの実体のあいだでの「他動(Transitive)」「受動 (Passive)」の関係にあるわけです。

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つづいて、和の日本語での「人の視点」からの認識のあり方をみてみましょう。

和の日本語の世界では、英語の世界のように視点を幽体離脱させて天にまで昇らせることはできません。あくまで人間の視点から世界を認識します。上の図は、書き手の視点から世界で起こっている「コト」を見ているイメージです。

まず、これは山田さんに関することですから、トピックマーカーの「はをつかって、「山田さんは」と表現します。

そのあと、何が起きているのかを表現するのですが、それが「財布を」「盗まれた」です。なお誰が盗んだかはこの場合わかっていないので、表現しません。

さて、ここの「盗まれた」の「まれた」ですが、これは英語の世界の「受動態」ではありません。

すでに説明したように、英語の受動態とは、あるひとつの実体が別の実体からなんらかの影響を受ける関係にあることを示すものです。自他という2つの実体、そのあいだの関係性が見えなければ、こうした表現はできません。そのためには、視点を天に昇らせなければならないのですが、日本語の世界ではそうした幽体離脱をおこなわないことは、何度もお話ししたとおりです。

和の日本語の世界の「れる/られる」は、自分の力が及ばないことが起こっていることを表す言語表現です。

ここでは、誰かが誰かの財布を盗む、ということが起こっているわけですが、その当事者である山田さんは、そのことに対して自分の力が及ばない、つまりどうしようもない、わけです。この「どうしようもない」感の表現が「れる/られる」です。

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この「れる/られる」による「自分の力が及ばない」という認識、「どうしようもない」感を別の例でみてみましょう。

たとえば「雨に降られる」です。これ、どうしようもないですね。それから「女房に逃げられた」です。これもまあ、どうしようもない、といえば、どうしようもないですね。

ただ、「れる/られる」が、つねにマイナスの意味で自分の力が及ばないことを表すわけではありません。その逆に、プラスの意味で自分の力が及ばないことを表すこともできます。たとえば「風に吹かれよう」といった表現です。これ、自分の力は及ばないけれど、気持ちいいですね。

「人の視点、天の視点」の第2回講義、いかがだったでしょうか。日本語の世界と英語の世界がいかに本質的に違うのかが、見えてきたでしょうか。

☆☆☆

 

【確認テスト】

問1
本レクチャーでは、日本語の「れる・られる」という表現が英語の受動態とは一対一対応をしていないことを、「雨に降られた」「女房に逃げられた」「風に吹かれよう」といった日本語に対する英語表現が少なくとも受動態ではないことによって示しました。その他の同様の例を、いくつか挙げてみてください。


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