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成瀬「心と言葉の英文法」レクチャーシリーズ 002「認識・思考・言語」(2)

「英語の心の仕組み」がわかる!

成瀬がユーチューブで展開しているレクチャーシリーズ(約10分ビデオ40本)のテキストバージョンです。同シリーズでは英語の認識・思考の特性からセンテンスの構造までのすべてを解説しており、英語の心と言葉の仕組みの全容を知ることができます。ユーチューブビデオには、タイトルに提示しているURLからアクセスできます。

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002「認識・思考・言語」(2)

https://www.youtube.com/watch?v=WTEgo_mfZxQ&feature=youtu.be

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第1回の講義では、英語の世界での認識・思考と、日本語の世界での認識・思考がじつは同じではないこと、それにあわせて言語としてのあり方や表現も異なっていること、その違いは一般に考えられているよりもはるかに大きいことなどを述べました。この第2回講義では、英語の世界と日本語の世界とが実際にどのように違っているのかを、「品詞」という観点から、いっしょに考えていきます。

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まず、質問です。「えんぴつ」の品詞は、なんでしょうか。はい、名詞ですね。では、「pencil」の品詞は、何でしょうか。皆さんの第一感は、名詞、だろうと思いますが、成瀬がこんなことをたずねるからにはなにか仕掛けがあるにちがいない、とも思っていると思います。そのとおりです。じつは、名詞と動詞です。そうです、

pencilは、動詞として使えるのです。

それも、かなり頻繁に使います。

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実際に辞書で確認しましょう。これはウェブリオに乗っている研究社新英和辞典でのpencilの意味です。たしかに、名詞が最初に出ていますね。ところで辞書での配列の仕方です、頻繁に使われるものほど、最初にきます。ですから、pencilについては名詞として使われることが多いということですね。でも、見てください。名詞のつぎに、動詞もあります。意味は「鉛筆で書く」「まゆをまゆづみで引く」です。

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こんどは、オックスフォードのオンライン辞書でpencilが動詞で使われているところの解説をみてみましょう。なおほんの一部ですが私が手を入れています。

ここはpencil inのページです。To write down somebody’s name or details of an arrangement with them that you know might have to be changed later.と解説がついています。かんたんにいえば、会議のスケジュールなどで本決まりではないけれども、暫定的に決定したことをスケジュール表なんかに書き込むことを言います。これって、仕事をしているとよくあることなので、ビジネスメールでは、非常によく出てくる表現です。We’ve penciled in a meeting for Tuesday afternoon.とは、「とりあえず、火曜午後に会議の予定を入れておきました」といったところです。

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さて、ここで名詞の役割としてのpencilの使い方をみてましょう。この3つのセンテンスをみて、なにかわかりましたか?

My pencil is short.ではpencilはサブジェクトの中核語ですね。つぎのDo you have a pencil.の場合には、pencilはオブジェクトの中核語です。Please write in pencil.のpencilは、前置詞inのオブジェクトです。

つまり

サブジェクトやオブジェクトのポジションに置かれた語は、名詞です。

間違わないでほしいのですが、名詞が、サブジェクトやオブジェクトのポジションに置かれる、のではありません。サブジェクトやオブジェクトのポジションに置かれた語が、名詞、なのです。

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さて、つぎに動詞としてのpencilをみてみましょう。I will pencil a meeting in for Wednesday.の意味はもうおわかりですね。スケジュール表の水曜に会議の予定を書き込む感じです。つぎのShe is penciling her eyebrows.は、まさに写真のとおりです。

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さて、これでpencilの「品詞」が「名詞」「動詞」の両方であることがわかりました。でも日本語の「鉛筆」の「品詞」が、必ず「名詞」だけであるのに対して、どうして、英語のpencilの「品詞」は、「名詞」だけではないのでしょうか。じつはそのわけは、翻訳での誤訳にあります。

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皆さん、「品詞」は、英語でなんというか、知っていますか?Part of Speechです。それを、明治時代の英語学者さんが、「品詞」と訳したのです。なぜpart of speechを「品詞」と訳したのかについては、私もずいぶん調べてみたのですが、わかりません。でもいずれにしろ、これはたいへんな誤訳でした。ふつうに「スピーチのパート」つまり「文中での役割」とすればよかったのです。そうすれば、その後の百数十年にわたる混乱は避けられたかもしれせん。

じつはこの手の誤訳は、英文法関連では、とても多いんです。たとえば「冠詞」というのはarticleの翻訳語ですが、articleは「かんむり」ではありません。でも「冠詞」と訳されてしまったために、日本人はaやtheに「名詞のかんむり」のイメージを持ってしまいました。これはまったくの間違ったイメージです。さて、もとにもどります。Part of speechです。これも、辞書で確認しておきましょう。

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こんどはケンブリッジの辞書でみてみます。Part of speech is One of the grammatical groups, such as noun, verb, and adjective, into which words are divided depending on their use.とあります。この、depending on their useというところが重要ですね。

つまりwordsをuse(用法)によってグループ分けしたもの、それがpart of speech, 品詞だということです。


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もういちど、まとめておきましょう。英語の「品詞」とは、part of speech、「語の文中での役割」のことです。したがって、その語の文中での役割が変われば、その語の「品詞」も変わります。一人の役者が、出演する舞台によって役柄を変えるようなものだと思ってください。

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語は、それぞれに「個性」を持っています。文中で数多くの役割を果たすことのできる語もあれば、たったひとつの役割しか果たせない語もあります。たとえば

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「apple」が文中で果たせる役割は「名詞」だけです。
「cat」「box」が文中で果たせる役割は、「名詞」と「動詞」です。
そして「round」が文中で果たせる役割は、なんと、「形容詞」「動詞」「副詞」「名詞」「前置詞」です。

「round」は、まさにオールラウンダーなわけです。

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ところが、これまでの日本の英語教育は、こうしたこと、つまり、「cat」「box」が名詞であり、また、動詞でもあることを生徒に教えてきませんでした。

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そして、「cat」「apple」「box」を、こんなふうに教えています。これは、中学一年生の代表的な英語教科書である「New Crown 1」から抜粋したものです。ここにはこのように、「名詞とは、人・ものの名前を表す言葉」だと述べられています。

これは、間違いです。

こんなふうに名詞を定義してしまうと、生徒たちはまちがいなく、「catは「ねこ」で名詞なんだ、boxは「箱」で名詞なんだ」と理解してしまいます。そして、catやboxが動詞でもあるということを理解できません。というよりも、さらに根本的な問題として、「名詞」とは、「語の文中での役割」のひとつであることに、気づくことができません。そして、catイコール「ねこ」、boxイコール「はこ」として、だから名詞だというように理解をするはずです。

すくなくとも、中学生のときの私はそう理解していましたし、そのあともずっとそういった間違ったマインドセットから逃れることができませんでした。そしてこの間違った思い込みが、私の英語学習にとっての、まさに本質的な障害となりました。英語のレンズを通してみれば問題なくクリアに見える英語ですが、それを日本語のレンズを通してみるものですから、歪んでみえてしまうのです。

これでは英語の世界を正しく把握できません。それが私の英語学習にとっての大きな足枷となりました。いま思えば、ずいぶんと無駄な努力をしてきたものです。英語を学ぶ多くの皆さんには私と同じ間違いはしてもらいたくない、最初から英語のレンズをとおして英語を理解し、英語の世界に対する正しい認識をもってもらいたいと強く思います。そのために、私はこうした講義をおこなっているわけです。

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ただ、すくなくとも、次のことだけは間違いなく、いえます。

「pencil、box は、名詞」と思い込んでいる人は、ものすごく損をしている

ということです。なぜかというと、それらを動詞として用いるだけで、あなたの英語の語彙力は倍になるのですから。さらには英語の品詞が「文中での役割」で決まるという「新しいマインドセット」を獲得できれば、英語に対する理解がはるかに深くなります。このことは私たちの英語力を大きく伸ばすだけではなく、私たちが新しい言語を学ぶことの意義そのものといえます。

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最後にまとめておきましょう。英語を学習している皆さんにとってまず大事なことは「pencilは名詞」といった思い込み、誤ったマインドセットをなくすことです。つぎに英語の「品詞」が「語の文中での役割」であることをしっかりと理解することです。そしてそのうえで、それぞれの語が持っている文中での役割つまり「品詞のタイプ」を学ぶことです。これができれば、皆さんの英語学習のスピードは、一挙に上がります。足枷がとれるからです。間違いありません。

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では最後に、演習問題を2つ、ご紹介しておきます。ひとつは、「名詞」の役割しか持たないように思えるけれども、実際には「動詞」その他の役割ももっている語を10個以上あつめて、それぞれの例文をつくってみるという演習です。もうひとつは、からだの部位を表す語のほとんどは名詞の役割だけでなく動詞の役割も果たします。それぞれの例文をつくるという演習です。たとえば、mouthは動詞としての役割では、どのように用いられているのか、ということです。

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【確認テスト】

問1
本レクチャーでは、英語の「品詞」(Part of Speech)とは「センテンス中での語の役割」のことであり、したがって文中での語を役割が変われば「品詞」も変わることを、Pencilを例に挙げて説明しました。文中での語を役割が変われば「品詞」も変わるその他の例を、いくつか挙げてください。

問2
英語の語は(「品詞」の観点からみて)それぞれに個性を持っており、文中で数多くの役割を果たすことのできる(言い換えると多くの「品詞」を持っている)語もあれば、ひとつの役割しか果たせない(「品詞」が一つだけ)語もあることを、本レクチャーではapple(「品詞」は「名詞」だけ)、cat/box(「品詞」は「名詞」と「動詞」)、round(「品詞」は「名詞」「動詞」「副詞」「形容詞」「前置詞」)を例に挙げて説明しました。そのほかに、ひとつの役割しか果たせない語や、さまざまな役割を果たせる語の例を、いくつか挙げてください。

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コメント

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昔、「ボクシング」が動詞boxの動名詞だと知ったときに妙に感動した覚えがあります。虚を突かれた思いでした。

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私はpencilで虚を突かれました。

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成瀬「心と言葉の英文法」レクチャーシリーズ 002「認識・思考・言語」(2)|ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室
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