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成瀬「心と言葉の英文法」レクチャーシリーズ 001「認識・思考・言語」(1)

「英語の心の仕組み」がわかる!

成瀬がユーチューブで展開しているレクチャーシリーズ(約10分ビデオ40本)のテキストバージョンです。同シリーズでは英語の認識・思考の特性からセンテンスの構造までのすべてを解説しており、英語の心と言葉の仕組みの全容を知ることができます。ユーチューブビデオには、タイトルに提示しているURLからアクセスできます。

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001「認識・思考・言語」(1)

https://www.youtube.com/watch?v=7VuNbcsP0dw&feature=youtu.be 

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皆さん、こんにちは。成瀬です。では、成瀬レクチャーシリーズ、「認識・思考・言語」の講義を、はじめます。

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皆さん、この図をみてください。これは、人間の「心のはたらき」を、海に浮かぶ氷山に例えてみたものです。この氷山が表わしているのは、人間の「心」です。その大部分は、海の中にあります。その見えない部分が、「認識」と「思考」です。それは海のうえにいる私たちには見えない部分です。けれども実際には、それは氷山全体の大部分を占めています。そして海の上に見えている氷山のわずかな部分が、「「ことば」「言語」です。

このように、わたしたちがふだん無意識に使っている「ことば」の下には、「認識」と「思考」という巨大なかたまりが存在するのです。そして、その「認識」と「思考」がどのようなものであるのかを正しく知らないかぎり、私たちは人間の心の働きの全体像を知ることはできません。そしてその本質を知らないかぎり、海にうえにある「ことば」の世界についても、正しく理解することはできないのです。

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 従来の英文法は、英語をできるかぎり体系的に分析して解明することを目標としてきました。私たちがここで学ぶ「心の英文法」は、こうした従来の英文法の目標やアプローチを共有していません。

「心の英文法」が目指しているのは、英語の世界認識や思考がどのようなプロセスを経て言語となって表現されるのかを、日本語の認識、思考、表現と対比させつつ、分析し、解明することにあります。つまり「英語の心」と「日本語の心」とを対比しながら学ぼうというのです。そのうえで、ふたつの世界を往来する方法を習得していこうというのです。こうしたアプローチと目標設定は、これまでの英文法学習にはまったく見られないものです。

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ここからは、まず、言葉を通して世界を認識するという人間のあり方について、考えてみることにしましょう。

私たち人間は、この世界というものを、じつはふたつの方法で認識しています。ひとつは、「いきもの」としての認識です。「いきもの」としての認識では、たとえば固体は固体として、流体は流体として、温かさは温かさとして認識されます。この認識のあり方は人間でも犬や猫でも同じことです。

けれども、「いきもの」としての認識では、固体を固体と認識できても、それを「椅子」だとは認識ができません。流体を流体と認識できても、それを「池」だとは認識できません。温かさを温かさと認識できても、それを「春」だとは認識ができません。こうした認識ができるのは、人間が「言葉」を持っているからです。

いっぽう犬や猫は、人間と同じ意味の「言葉」は持ってはいません。もちろん犬や猫だって、鳴き声などでさまざまなコミュニケーションをとっています。カラスなんて、よく聞いていると本当にたくさんの鳴き声を使い分けて、仲間同士でコミュケーションをおこなっています。

でも彼らの「ことば」には「抽象概念」や「文法」がありません。そこが彼らのことばが、私たち人間の「ことば」と決定的に違うところです。そのため彼らの世界には、固体や液体や温かさはあっても「椅子」や「池」や「春」はありません。複雑な思考もありません。

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では、私たち人間は、どのようにして「人間」として、この世界を認識しているのでしょうか。

まず、ここに自然の世界があるとします。わたしたち人間は、まず「いきもの」として犬や猫や鳥と同じ方法で、この世界を認識します。このように認識された世界を「なまの世界」と呼ぶことにしましょう。

つぎに、人間は「なまの世界」を、言葉という「レンズ」をとおして、「人間」として認識します。するとそこに、「椅子」や「池」や「春」が、生まれます。この「椅子」や「池」や「春」を含んだ世界こそ、私たちの生きる「人間の世界」なのです。

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しかし、ここに問題が生じます。「言葉」によって「椅子」や「池」を認識しているということは、言葉の種類つまり「言語」が違えば、認識や思考が変わるということなのです。すなわち、英語での世界認識や思考方法と日本語での世界認識や思考方法とは、同じではないということです。

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その結果、ここで「英語」という言葉のレンズをとおすと、その世界は「英語の世界」になります。英語の世界とはどういうものかというと、たとえば、この絵をみてください。これは「猫の手」ですね。では英語ではなんというでしょう。Cat hands? いいえ、Cat Pawsといいます。犬や猫のようなつめのある動物の足のことを、ネイティブ英語ではPawというのです。いっぽう、handは人間の「手」です。ですから、「猫の手」はcat handsではなく、cat pawsです。ちなみに馬のひづめは、Hoofといいます。象の鼻はnoseではなく、trunkです。ネイティブ英語の世界では、人間とその他の動物とをきっちりと区別して認識しているわけです。

いっぽう、「日本語」というレンズをとおすと、世界は「日本語の世界」になります。日本語の世界とはどういうものかというと、たとえば、この絵をみてください。これは、「虫が鳴いている」ところですね。私たち日本人には、「虫のこえ」が聞こえてきます。私たち日本人は、人間とほかの生き物をとくに区別しません。人間と含めてありとあらゆる生き物はみな同じ、という意識を強くもっています。しかし英語ネイティブは、この「虫のこえ」を、Insect noisesと表現することがあります。つまり英語ネイティブにとっては、虫のこえは、機械音などと同じように、たんなる「雑音」であり、人間の「こえ」つまりvoiceではありません。ですから、noiseとして認識しているわけです。

このように、極端な言い方をすれば、日本語ネイティブと英語ネイティブとは、それぞれに「別の世界」を生きている、といってもよいわけです。それにしても、本当に不思議なことです。

とはいっても、もちろん日本語ネイティブも英語ネイティブも同じ人間ですから、たとえば犬や猫と人間のほどに、世界に対する認識方法が違うはずがありせん。当然ながら、多くの部分では一致しているのです。しかし、私たちが通常考えているよりも、その世界認識のあり方の違いは、かなり大きなものでもあります。また通常、私たちはそうした違いには気づいていませんので、そこで誤解やトラブルが生じるのです。

このあとは、日本語の世界の英語の世界とのこうした違いが生み出す、誤解やトラブルについて考えていきましょう。

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【確認テスト】

問1
「いきもの」としての認識と「(言葉を持つ)人間」としての認識の違いとして、本レクチャーでは「椅子」「池」「春」は、犬や猫には認識できず、人間だけが認識できると述べました。そのほかの、「いきもの」としての認識と「(言葉を持つ)人間」としての認識の違いについて、いくつか例を挙げてください。

問2
英語での認識・思考・表現と日本語での認識・思考・表現とが異なっている例として、本レクチャーでは「猫の手」と「虫のこえ」を挙げました。英語での認識・思考・表現と日本語での認識・思考・表現とが異なっているその他の例を、いくつか挙げてください。

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