後舌母音 /uː/ vs /ʊ/。タコの口で突き出す音と、緩める音。
読むだけで口が変わる 英語発音譜面(English Score)第10回
はじめに:あなたの「ウ」は、やる気がなさすぎる
「プール(Pool)」と「プル(Pull / 引く)」。 あなたは、これをただ「長さの違い」だと思っていませんか?
もし、どちらも日本語の「ウ(唇を横に開いたまま、喉だけで出す音)」で発音しているなら、残念ながらネイティブにはどちらも聞こえていません。 最悪の場合、**「Fool(バカ)」**と言っているように聞こえることさえあります。
英語の「ウ」には、2種類あります。
タコのように唇を突き出す「激しいウ」
お腹をパンチされたような「緩んだウ」
日本語の平坦な「ウ」は、このどちらでもありません。 今日、あなたの唇に新たな機能をインストールします。
1. 緊張の /uː/:タコ、あるいはストロー
まずは記号に「:」がついた、長い方 /uː/ です。 (単語例:Pool, Food, Blue, YouTube, Choose)
この音を出すには、第5回で鍛えた「唇の筋肉」をフル活用します。 日本語の「ウ」のように、歯が見えていてはいけません。
【Instruction: The Octopus(タコの口)】
口の形: 唇の両端をギュッと中心に寄せ、思い切り前に突き出します。 唇で「鉛筆」や「細いストロー」を挟んでいると想像してください。
緊張(Tension): 唇の周りの筋肉がカチカチに硬くなるまで力を入れます。
音: その細い穴から、レーザービームを飛ばすように、強く**「ウー!」**
「Food(食べ物)」と言う時、唇が誰かにキスをするくらい前に出ていなければ、それは英語の音ではありません。
2. 脱力の /ʊ/:だらしない「ウとオの間」
問題はこちらです。多くの人が誤解している /ʊ/。 (単語例:Pull, Book, Good, Put, Woman)
これは「短いウ」ではありません。 第7回の /ɪ/(緩んだイ)と同じ理屈で、**「やる気のない、オに近いウ」**です。
【Instruction: The Lazy "U"】
口の形: タコの口を解除します。 少しだけ丸めますが、力は入れず、ポカンと緩めます。
音: お腹に力を入れ、喉の奥から短く**「ゥッ」**と呻(うめ)きます。
唇を尖らせず、少しアゴを引いて、低い声で出します。 クリアな「ウ」ではなく、少し濁った音。これが /ʊ/ です。
譜面で見る:Pool vs Pull の決定的瞬間
では、この2つを「唇のテンション」で弾き分けましょう。
1. Pool(プール) vs Pull(引く)
A: Pool / puːl / 唇を極限まで突き出す。「プ」の破裂の後、すぐにタコの口を作る。 「プゥーーーォ」(レーザービーム)
ドアに書いてある PULL を読むとき、唇を突き出して「プゥール」と言ってはいけません。 やる気なく「プォル」と言うのが正解です。
2. Luke(人名・ルーク) vs Look(見る)
A: Luke / luːk / タコの口。「ルゥーーーーク」
「Look at me」は「ルック」ではなく、**「ルォック」**に近い音で始まります。
応用譜面:YouTube と Good の違い
身近なブランドや言葉で確認してみましょう。
1. YouTube
譜面: / ˈjuːtuːb /
見てください。ダブル・タコです。 You も Tube も、どちらも /uː/ なので、最初から最後まで唇を突き出しっぱなしです。 鏡を見て、「ひょっとこ」のような顔で発音してください。
2. Good
譜面: / gʊd /
日本人はこれを「グッド」と、唇を突き出して元気に言いがちです。 しかし、これは脱力の /ʊ/ です。 「グ」と唇を尖らせる必要はありません。 喉の奥で**「グォッ(d)」**と低く唸るのが、ネイティブっぽい Good です。
なぜ、日本人の「ウ」は通じないのか?
日本語の「ウ」は、音声学的には [ɯ](非円唇後舌狭母音)という記号で表されます。 これは「唇を丸めない(非円唇)」という特徴があります。
しかし英語の /uː/ も /ʊ/ も、程度は違えど**「円唇(唇を丸める)」**音です。 つまり、唇を横に引いたまま「ウ」と言っても、英語という楽器では音が鳴らないのです。
英語を話すときは、常に「唇をどうするか?」を意識してください。 丸めるのか(Round)、緩めるのか(Relax)。そのスイッチ切り替えが重要です。
本日の課題(Homework)
次回まで、ストローを使った特訓をします。
「エア・ストロー(Air Straw)練習」
飲み物を飲むとき、あるいは何もないときでも、 「口に極細のストローをくわえて、シェイクを吸い込む」ような口を作ってください。 その状態で「Blue」「Shoe」「Two」と言ってみる。 唇の周りの筋肉が筋肉痛になれば、あなたは正しい /uː/ を手に入れています。
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