「強くてこわい日本」とヤングケアラー問題、BPO審議入りせず「放送倫理違反問えない」

毎日放送(MBS)本社=大阪市北区(恵守乾撮影)
毎日放送(MBS)本社=大阪市北区(恵守乾撮影)

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は19日、1月に視聴者から寄せられた意見で批判が多かったとして、衆議院選挙報道で一部政党を「強くてこわい日本」と分類した毎日放送の情報番組「よんチャンTV」と、弟や妹の世話をする子供の依頼を巡って「親の育児放棄」などの批判が起きた朝日放送テレビのバラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」について検討した今月13日の委員会議事録を公開した。同委員会は両番組とも放送倫理違反について「審議入りしない」と判断した。

番組全体でバランス

「よんチャンTV」は1月22日、ジャーナリストの武田一顕氏への聞き取りを基に各政党を紹介した際に、自民、維新、参政の各党を「強くてこわい日本」、中道改革連合、国民民主、共産、れいわ新選組の各党を「優しくて穏やかな日本」に分類した。番組では終了間際に表現について謝罪し、毎日放送の虫明洋一社長も29日の記者会見で「非常に不適切だった」と謝罪した。

議事録によると、視聴者からは「政党に特定の印象を与える意図的な誘導だ」「(謝罪などは)視聴者の判断に影響を与える危険性に向き合った対応とは言えない」などの意見が寄せられた。

委員からは「放送がイメージだけを語っていいのか、非常に違和感がある。そのイメージが事実に基づいて論評されているならば問題ないが、この番組にはその形跡が見えない」「放送倫理の問題というより、コメンテーターのコメントをフリップに落とし込む際のセンスの問題ではないか」などの意見が出た。

一方で、「『こわい』を『手ごわい』と受け取れなくもない内容だった」「『強くてこわい』という表イメージは、現代の世界・社会情勢においては、必ずしもネガティブなイメージ一色だとは言えないのではないか」「他のコメンテーターがこういう図式はおかしいと発言する場面があるなど、番組全体としてはバランスをとろうとしていた。また、番組で表現の稚拙さを謝罪したという対応もあり、速やかな修正がなされており、放送倫理違反とまでは言えないのではないか」との意見が出た。

委員会としては「事実に基づく報道の徹底やより慎重な表現を使用することが適切であると考えるが、放送倫理違反の疑いがあるとして検証をするまでの事案とは認められない」と判断した。

取材対象者と共同作業

一方の「探偵!ナイトスクープ」は、関西エリアで1月23日に放送。広島県に暮らす小学6年の児童が、弟や妹の世話を代わってくれるよう依頼する内容で、父親が外出して子供と番組出演者だけの状況をつくり出すなどしていた。放送後、SNS上で家族を中傷する動きが発生。朝日放送テレビの今村俊昭社長は30日の記者会見で「ヤングケアラーという社会課題に対して意識を持ち損ねていた。深く反省している」と謝罪する一方、「事実に基づき構成しており、捏造(ねつぞう)ややらせには当たらない」としていた。

議事録によると、視聴者からは「子供の年齢に見合わない過度な責任を負わせるヤングケアラーを想起させ強い違和感を抱いた」「放送を見た人たちが出演者に対する誹謗(ひぼう)中傷や個人情報の拡散を行っており心配だ」などの声が寄せられた。番組の公式サイトで「長男からの依頼文は家族と相談の上で改稿していた」と説明したことに対しても、「編集の範囲を超えた事実関係の改変にあたらないのか」といった指摘があった。

委員からは「演出を超えた事実の改変に近いことを行い、その結果ソーシャルメディア上で取材対象者に被害を生じさせたとして問題を問えるのでは」との意見が出た一方、「この番組は、手紙を送った取材対象者とある種の共同作業で番組作りをしており、取材された側も納得して応じているなら、勇み足だった部分はあるとしても放送倫理違反とまでは言えない」との意見もあった。

委員会としては「朝日放送テレビが速やかにソーシャルメディア上の誹謗中傷について注意喚起し被害の拡大を防ごうとしていた点も考慮して、放送倫理違反の疑いがあるとまでは言えない」と判断した。

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