呼吸の深さ。英語は「犬の呼吸」で奏でる楽器である。
読むだけで口が変わる 英語発音譜面(English Score)第2回
はじめに:なぜ、英語を話すと疲れるのか?
前回、私たちは「アルファベットを捨て、IPA(譜面)を読む」ことを誓いました。 しかし、どんなに素晴らしい楽譜を持っていても、肝心の**「楽器」に息が吹き込まれていなければ、音は鳴りません。**
あなたは、英語を少し話しただけで「なんだか疲れる」「酸欠になる」と感じたことはありませんか? あるいは、ネイティブに話しかけた時、**発音以前に「声が小さい」**と思われて聞き返されたことは?
それは、あなたの**「呼吸のOS」が日本語モードのままだから**です。 今回は、英語を奏でるためのエンジンである「呼吸」をチューニングします。
日本語は「口先」、英語は「腹」
言語によって、使う呼吸の種類は全く異なります。
日本語(胸式呼吸):
浅い。 肺の上部だけでペチャクチャと話す。
息をあまり吐かない。「省エネ」の言語。
イメージ:リコーダーを優しく吹く感じ。
英語(腹式呼吸):
深い。 お腹の底から大量の息を送り出す。
息を爆発させる。「高燃費」の言語。
イメージ:トランペットやサックスを全力で鳴らす感じ。
日本人が英語を話すと「弱々しい」聞こえるのは、この**「息の量(エア・プレッシャー)」が圧倒的に足りないから**です。 正しいIPAの音を出すためには、これまでの3倍の息が必要です。
トレーニング:最強の呼吸法「ドッグブレス」
では、どうすれば「英語の呼吸」ができるようになるのか。 理屈をこねるより、動物のマネをするのが一番早いです。**「犬」**になってください。
【Action:ドッグブレスの実践】
姿勢を正す: 背筋を伸ばし、リラックスします。
舌を出す: 恥ずかしがらずに、舌を「ベーッ」と出しっぱなしにします。(これで喉が強制的に開きます)
犬のマネをする: 暑がっている犬のように、短く鋭く呼吸します。 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
おへそを確認する: 手をおへその上に置いてください。「ハッ」と言うたびに、お腹がベコッ、ベコッと激しく動いていますか?
これが、英語を話す時の「お腹の動き」です。 日本語を話す時、あなたのお腹はピクリとも動いていないはずです。しかし、英語ネイティブは会話中、常にこのポンプ機能を使っています。
息の圧力が「子音」を作る
なぜ、ここまで呼吸にこだわるのか? それは、第3フェーズで学ぶ**「子音(Consonants)」**のキレに関わるからです。
例えば、Time(時間)という単語。
日本語の呼吸: 「タイム」(ただ口をパクパクさせただけ)
英語の呼吸: / taɪm / (お腹からの息の圧力で、舌先を爆発させる)
試しに、ティッシュペーパーを一枚、口の前に垂らしてください。 「タイム」と言ってみて、ティッシュが真横に吹き飛ぶくらい揺れなければ、それは英語の音ではありません。
IPAの記号、特に破裂音(p, t, k など)は、**「息という火薬を爆発させる記号」**です。火薬(息の量)が少なければ、不発弾になってしまいます。
今日のIPA譜面:息だけで奏でる音 /h/
それでは、今日手に入れた「新しい呼吸」を使って、一つだけ音を奏でてみましょう。 最も息の量が重要になる音、/h/ です。
【本日の譜面】/ həˈloʊ / (Hello)
日本人の9割は、この単語を「ハロー」と喉だけで発音します。 しかし、今日からは違います。
構え: お腹に手を当てる。
息: 声を出す前に、お腹をへこませて大量の息をスタンバイする。
発射: /h/。ため息のように、でも強く、お腹から息を吐き出しながら「ハッ」!
続き: その息の勢いに乗せて /əˈloʊ/ と続ける。
どうでしょう? 今までより、深く、太く、響く声が出ましたか? それが**「英語の声(English Voice)」**の入り口です。
本日の課題(Homework)
次回の更新まで、以下のトレーニングを行ってください。
「お風呂で『ハッ!』と短く息を吐く練習(1日10回)」
お腹の筋肉が動くのを意識してください。 英語を話すには、口の周りの筋肉だけでなく、腹筋が必要なのです。今日は「英語はスポーツだ」ということを身体に刻んでください。
次回予告:第3回「喉を開く」
息の量は確保しました。次はその息を通す「トンネル」の話です。 なぜネイティブの声はあんなに低く響くのか? 英語を話すときは、常に「あくび」をしていなければならない理由とは?
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