獣道のような細い森の小径を進むと…
「2016年、フランス議会は10年前すでに売春婦の人道的保護の観点から買春禁止法を可決。買春行為自体が違法となり、客の男に最大3750ユーロ(約68万円)の罰金が科されるようになりました。一方の売春は非犯罪化され、売春婦は罰則対象ではなく支援対象となりました」
その結果、フランスから売買春がなくなったかというと、そうではなかったという。
「もともと売買春の現場には一流企業のサラリーマンのような“優良客”もいました。しかし罰則化されると、違法でも気にしない客だけが業界に残った。しかしそんな環境でも、さまざまな事情から売春婦を辞められない人もいるわけです。その結果、売買春はさらにアングラ化して、むしろ以前よりも過酷な環境の売春現場ができてしまいました。
その一例が“ブローニュの森”です」
「ブローニュの森」は、パリ中心部から見てセーヌ川の対岸に広がっている。市民の憩いの場になっているが、一歩奥に踏み入ると、非合法の売買春が行われているのだ。
NEWSポストセブンでは昨年、この森で売春婦のエレナさん(仮名、当時31)を取材している。エレナさんは記者らに対し、こう言った。
「オーラルは20ユーロ(約3400円)、セックスは40ユーロ(約6800円)よ」
物価高のパリでは考えられないほど安価な金額を提示してきたのだ。取材をしたいという旨を伝えると、彼女は逡巡のあと、“仕事場”に案内してくれた。そこは木に紐を渡し、布を垂らしただけの1畳ほどの場所だった。床はぬかるんだ土のままで、破れたコンドームが散らばっていた(既報参照)。
「私たちは雨でも雪でも、冬の寒い日でも、ここに立たなきゃならない。毎日。フランスの物価は高すぎるし、ここは安全とは言えない」
エレナさんはそうも語っていたが、乱暴な客の他に、物を奪ったり暴力を振るったりする狼藉者も彼女らを脅かしているようだった。
前出の在欧ジャーナリストはこうも語っていた。
「買う側を処罰すると、客が激減する。残った客の要求する行為はエスカレートし、売春から逃れられない人々はそれに応えざるを得なくなる。
日本においても、現在“立ちんぼ”をしている彼女らは危険と隣り合わせです。しかしながら舵取りを間違えると、その危険性はより深刻になっていく可能性もあります」
買春に罰則を設けると同時に、「売春をしなくては立ち行かない」人がいる現状への対策も必要になってくるだろう。
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