30年間守り続けてきた牙城、SNSが揺らす 中道改革連合の岡田克也落選、三重3区で何が
2026年2月17日 13時30分 (2月17日 13時30分更新)
【連載】三重3区の衝撃
衆院選の三重3区(四日市市北部、桑名市など)で、自民の石原正敬(54)が中道の岡田克也(72)を破った。小選挙区制が導入された1996年から10回の選挙で一度も議席を譲らなかった岡田の陥落を「歴史的」と評する人も多い。選挙戦で何が起きたか振り返る。 =敬称略(この連載は大島康介、秋田耕平、軍司歩人、丹羽ありさ、轟野乃子、森研人が担当します)
(上)30年間守り続けてきた牙城、SNSが揺らす 中道改革連合の岡田克也落選、三重3区で何が(この記事)
(中)6人目の挑戦者、自民の石原正敬 「地域のために」、高市旋風が大きく後押し
(下)政権交代の夢、中道改革連合に託すも… 世代交代が課題の野党、1年後に迫る統一地方選
「私にはまだやらなきゃいけないことがある。高市さんが何を考えているのか国会の議論であぶり出さなければ」
7日夜、四日市市の近鉄四日市駅前。選挙で最後となる演説で岡田は「どうか国会に戻してほしい」と願いを込めて訴えた。
公示日の1月27日から序盤は「岡田リード」の情勢報道が伝えられ、いつものペースにみえた。過去の選挙と同じように、岡田は仲間の応援に全国を飛び回った。
雰囲気が変わったのは週明けの2月2日ごろから。情勢報道に「接戦」の文字が出た。調査からは、40代以下からの支持が少ないことが鮮明になっていた。
地元の留守を預かる陣営に焦りが広がった。最後の3日間は岡田が急きょ県内に張り付いた。
その頃、インターネットの交流サイト(SNS)は、岡田に対するネガティブな投稿やショート動画であふれていた。
「ネタ」として扱われた出来事の一つは、昨年11月の衆院予算委員会。首相の高市早苗(64)に岡田が安全保障の質問をした場面だ。
中国が台湾を支配下に置くことになった場合について、高市が踏み込んだ。「武力の行使を伴うものであれば、どう考えても(日本の)存立危機事態になり得るケースであると私は考える」。発言は中国政府から「内政干渉」と反発を招いた。SNSでは「岡田が質問したせいだ」などと誹謗(ひぼう)する投稿が選挙中まで繰り返された。
もう一つはテレビの討論番組でのコントロール発言。日中関係に関して「(高市首相が)中国に厳しく言ったと評価している人たちもいる。そういう国民感情をしっかりコントロールしていかないと」と岡田が語った部分だ。「国民感情をコントロール」という一言が切り取られ、上から目線で語る印象を強調した動画がSNSに出回った。
2024年が「ネット選挙元年」と言われ、東京都知事選の「石丸現象」などでSNSが有権者の選択に大きな影響を与えるようになったことが注目された。事実と異なる情報を流すデマの問題だけでなく、感情をあおる偏った投稿が大量に発信される状況は、近年の選挙でも生じていた。
情勢報道で接戦が伝えられた中盤以降、SNS上では「四日市や桑名の人はコントロールされないで」といった岡田の落選運動が展開された。岡田を応援する投稿には「アンチ」と言われる反対派からのコメントが連なった。「いわゆる『炎上』や『祭り』と呼ばれる状況だった」と陣営関係者は説明する。
情勢報道で接戦が伝えられた中盤以降、SNS上では「四日市や桑名の人はコントロールされないで」といった岡田の落選運動が展開された。岡田を応援する投稿には「アンチ」と言われる反対派からのコメントが連なった。「いわゆる『炎上』や『祭り』と呼ばれる状況だった」と陣営関係者は説明する。
迎えた8日の投開票日。全国で中道の苦戦が伝わる中、三重3区は東海3県で最後まで結果が判明しなかったが、岡田の落選が決まった。比例重複なら惜敗率で復活する接戦だった。
報道陣の待つ四日市市の中村町公民館に現れた岡田は敗因を「高市旋風とネット」と言い切った。自身のネット対策を「不十分」と認めつつ「相当いろんなデマや批判が渦巻いていた」と困惑を示した。「選挙中にショート動画でお金もうけをする人がいる。健全なことではない」と規制の必要性も口にした。
台湾有事の質問についても弁解した。「高市さんが自ら必要だと考えてあの発言をされたと思います。私に追い込まれたのではない。質問した岡田が悪いなんていう人がいるけど、国会議員が国会で質問したことが悪いなんて言ってはいけないことだ」
30年間、守り続けてきた“牙城”の陥落。「結果は結果ですから。明日からやらなければいけないことを考えていきます」。こう言って公民館を後にした。
否定的な内容 4割 岡田さんの名前含む投稿13万件
米メルトウォーターのSNS分析ツールで調べたところ、公示の1月27日から投開票前日2月7日までの12日間で、岡田克也さんの名前を含むX(旧ツイッター)投稿は13万7000件ほどあった。選挙区を制した石原正敬さんは2万3000件で、投稿数だけを見れば他の候補より有権者の目に触れている状況だった。
ツールの自然言語処理機能で投稿が肯定的な内容か否定的かを分類すると、否定的な投稿が4割を占め、その割合は石原さんより3倍以上高かった。岡田さんを「媚中」と見なす投稿が散見されたほか、終盤に苦戦を伝えるニュースが広がると、「落選祈る」といった投稿が相次ぎ、批判的な投稿が急増していた。
(植木創太)
関連キーワード
おすすめ情報