【「リカバリーウエア」洗濯すると機能低下の恐れ】適切な情報開示なく 複数のメーカーが明らかに
疲労回復や血流促進をうたい、市場が急拡大しているリカバリーウエアについて、多くの製品が洗濯を繰り返すことで、遠赤外線の輻射(ふくしゃ)機能が低下するという実態が明らかになった。 複数の健康機器メーカーへの取材で分かった。現行の行政への届け出制度には、洗濯後の機能維持に関する基準がなく、消費者に適切な情報が開示されないまま販売されている可能性がある。 <「3〜5回で機能低下」試験結果も> 健康機器メーカーA社への取材では、市場に流通している複数の主要なブランドのリカバリーウエアを用いて独自の洗濯試験を実施したところ、3回から5回程度の洗濯で、洗濯前と比較して遠赤外線の輻射(ふくしゃ)機能が著しく低下したという。遠赤外線の輻射(ふくしゃ)効果があるセラミックを、繊維にプリントした製品と、繊維に練り込んだ製品のどちらにも、機能の低下が見られたとしている。 別のメーカーB社では、リカバリーウエアの自社開発を検討した際、洗濯による機能維持が困難であることが分かり、コストに見合わないとして製品化を断念したという。 B社の社長は、「洗濯によって機能が著しく低下する性質があるにもかかわらず、多くの製品でそのことが明示されていない。当社はお客さまをだまして販売することはしたくなかった」と指摘する。 <問われるエビデンス> 一般医療機器であるリカバリーウエア(家庭用遠赤外線血行促進用衣)は、厚生労働省に届け出ることで「疲労回復」「血行促進」などの機能を表示できる。 ただ、この制度はあくまで届け出制であり、行政による個別の審査は行われていない。 基準となる(一社)日本医療機器工業会の自主基準では、遠赤外線によるエビデンスデータをそろえることは求められているものの、洗濯後の機能維持に関する試験データの提出は義務付けられていない。 一般医療機器の届け出制である点が、「機能低下」を隠れたままにする一因となっている可能性がある。 大手メーカーの商品では、広告や販売ページにおいて、「洗濯しても機能は低下しません」と記載するケースもある。ただ、その根拠が不明確であったり、目立たない場所に小さく表記されていたりするなど、情報の透明性に欠ける現状がある。 厚労省は、「個別の事案に関する回答は差し控えるが、一般医療機器の範囲内の表示であれば、薬機法に抵触しないと考えられる」(監視指導麻薬対策課)としている。 消費者庁では、個別の事案への回答ではないとしたうえで、「景品表示法に違反する可能性が全くないかどうかは判断できない」(表示対策課)と話す。 <大手メーカーは否定> リカバリーウエアブランド「ReD(レッド)」を運営するMTGでは、「ReD」の製品が、洗濯後も遠赤外線の輻射効果が持続すると主張した。外部の機関に依頼して、複数回の洗濯試験を実施しているとしている。 累計200万枚以上リカバリーウエアを販売したベネクスでは取材に対し、洗濯後の機能持続については自社の製品評価で確認済みとしているが、「試験内容は企業秘密のため公開していない」と回答した。 リカバリーウエア「BAKUNE(バクネ)」を展開するTENTIALでは、「洗濯50回後、100回後、150回後、200回後のそれぞれについて、機能性試験を行いその機能が減弱していないことを確認しております」(広報)としている。 独自技術を持つ山本化学工業の「メディカルバイオエスペランサ」は、500回以上の洗濯に耐えうる設計であるという。耐久性を差別化の要因とするメーカーも現れている。 <「声上げにくい」ギフト> リカバリーウエアは現在、自分用だけでなくプレゼント用としての需要も大きい。ある業界関係者は「贈り物として受け取った側は、もし効果が感じられなくなったとしても、贈り主に配慮して声を上げにくい」と分析する。 消費者の健康志向に支えられた成長市場だからこそ、機能の持続性という「品質の根幹」に対する誠実な情報開示と、制度のあり方が問われている。
日本ネット経済新聞