カオ転三次 カオス転生の片隅で   作:FakePusai

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書いてる内によく分からなくなってきたので初投稿です。
掲示板と使う頭が違う気がしてきた。


東堂 草壱、春華、???

東藤 草壱

20XY年7月XX日

G県YY市 料亭 瑞雲

 

六道家の主人たる六道美恵子氏が判子を押し、こちらに書面を渡してくる。

そして東堂家の主人たる私、東藤草壱もまた用意していた判子を押し、間に座っている弁護士に手渡す。

今日は秘書は無し、別の案件をこなしてもらっているし、秘書になれない人たちには、近くに居ては萎縮するとも考えた措置だ。

 

弁護士は渡された書面を何度か確認し言葉を発する。

 

「では、これにて東堂、六道の両家の婚約が成立いたしました」

 

弁護士が両家の捺印が押された書類をブリーフケースに収める。

 

相手側に座っている六道家の玲治君のご両親を見てみれば、父親は目が泳いでおり、母親は書類とそれが収められたブリーフケースに目が向いている。

私は顔に張り付けた笑顔の下で苦笑してしまう。

明らかにこのような場面に慣れていない二人だ。

そのような家と東藤が縁を結ぶのは、とても……とても奇妙なことだ。

 

「では、後ほど当弁護士事務所より書類と控えを送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。

……私はこれで失礼いたします。」

 

こんな時代だ、婚姻を家という単位で行うことはある意味非常識ではある。

裁判所に不服を申し出れば紙切れのように無効化されるだろう。

これも、彼……玲治君との縁となる楔の一つだ、ゆるしてくれよ?

 

書類を収めたブリーフケースを抱えた弁護士が襖を開け、退出していく。

若干空気が緩んだところに声を掛ける。

 

「まま、そう硬くならずに……

 

これで両家に縁ができました。乾杯いたしましょう。」

 

「は、はい……」

 

「ささ、奥様、旦那様、お注ぎ致しますぞ」

 

二人が持つ器に酒を注いでいくが、その縁はかすかに震えている。緊張しているのだろう、額には薄っすら汗も見え、私が注ぐ酒を一滴でもこぼすまいと目を見開いている。

 

東藤は県下では確かに名を知られた家だが、県会議員という職と地元の名士という立場であれば、会う人々は様々だ。

交渉相手ならば、テーブルの下で蹴りあうか、後ろ手に凶器を隠しながら握手する人々。

……もちろん張り付いた笑顔もついてくる。

 

支持者の方々であれば、応援と引き換えにあれこれのお願いをしてくるものだった。

 

だから、ここまで畏まられるだけなのは久々だ。

 

嗜虐心が頭をもたげてくる……いけない、抑えなければ。

今後とも”良く”付き合っていかなければならないのだ、藪を突くような真似は慎まねばならない。

 

しかし……ここまで畏まられるとは思わなかった。今後の両家の距離感については熟慮したほうがいいだろう。他の親戚よりは多少遠いほうが、お二人の心労にもいいだろう。

 

返酌を受け乾杯する。

 

「では……両家の交わりを祝って、乾杯!」

 

「か、乾杯」

 

一挙に干す。いい酒だ。するりと胃に入り込み、柔らかな酒精が広がる。

食前酒としては二重丸だろう。願わくば、両家の間もこの酒のように()()()()なってほしいものだ。

 

だが、目の前の二人はそれを味わう余裕も無いように見える。

口に含み味わうべきものを勢いよく胃に落とすのは緊張からか?

 

互いに器を干せば、タイミングを伺っていた仲居が入ってきて料理を並べ始める。

 

まずはナスのおひたしと真丈か……

 

食べ始めながら話を振ってみる。

話しづらい人間でも、家族の話や仕事の話、趣味の話、食事の話など、口が軽くなりやすい事柄はあるものだ。

 

「なかなか良いナスに思えますが、育てている立場としてどうです」

 

六道の家については調べられるだけ調べてはいる。

表向きは、この地に根付き土を耕してきた農民だが、実際は、年は天正ごろにこの地での怪異事件を解決し、その後居ついた一族の末裔だ。

 

居着いた原因に私の遠いご先祖様が関わっていると聞いて私も驚いたものだ。

 

「ええ、この大きさでこのお味は、良い農家さんから仕入れているか、目利きの方がいらっしゃるのでしょう」

 

やはり自分の仕事に関係することであれば口は軽くなるか。

 

「今はそのようなものを育てていらっしゃるんですね……」

 

「農協も特産として売り出したいとか、なかなか結構でありませんか……」

 

「確かに県議会でも特産開発の為の予算についてあれこれありましたな……」

 

仕事(農家)の話から家族、子供の話へ移ってゆく。

 

「息子さんは昔から手がかからず良い子だったと。

それはうらやましい。

私の息子は、今では立派な息子ですけれども、昔はかなりやんちゃでしてね……」

 

「なるほど、娘さんはなかなか我儘と、いやいや可愛らしいものではありませんか……」

 

「孫の教育は息子夫婦に任せていましてね……」

 

「ほほう、玲治君は大学進学を考えていると……」

 

料理は強肴から食事まで来ている。

強肴はフグ、そして炊き込みご飯と吸い物か……

 

緊張が取れてきたのか、なかなかにお二人も味わって食べているように見える。

最後の菓子が運ばれてき、玲治君の父親がお手洗いの為席を立った。

 

足音が遠ざかっていくと、玲治君の母親が居住まいを正す。

 

この瞬間が、本会席の真剣勝負と感じ私も構える。

 

「息子を選んだ理由は……霊能力者としての才能ですか?」

 

旦那が帰ってくる数分で片をつけるためか、物言いは直截的だ。

ならば私も、同様に返答せねばならない。

 

「ええ、私の事件を解決した手腕見事でした。

 

後で別の霊能力者に確認いたしましたが、今回のような事件、解決できる人材は在野でそうは居ないと。」

 

「分かりました……ですがお気をつけください。

 

息子の背後にいる団体【ガイア連合】は、未だ正邪定かではありません。」

 

私は笑顔のみを返答とする。

ええ、わかっておりますとも。ただ私は、あなたよりガイア連合に関して多くのことを知っているのかもしれませんよ。

霊能力という特別な力は無いが、情報というものは立場というものに流れてくる。

彗星のごとく現れた霊能力者団体【ガイア連合】、各地での異界や怪異の解決にその力を奮っている。

報酬も適正であり、構成員も常識をわきまえていると評判だ。

 

首都東京にある根願寺ですら評価するほどなのだ。

 

だが同時に【ガイア連合】はその内部が不透明な団体だ。

傘下に大企業すら収めつつある企業にしては幹部達がわからないのだ。

登記上は代表者の名前はある、しかし写真一枚でてこないとは異常だ。

 

そして代表の下にいるであろう幹部たちにいたっては名前すらでてこない。

もちろんガイア連合の窓口へ連絡を取れば対応してくれる。今回の事件のような怪異事件すら迅速に対応してくれる。

だが表から裏を見ようとすればそこは霧が広がっている。

 

最初は私も迷った。繋がるのであれば幹部以上がいいのではと。だが方々に聞いてみても【ガイア連合】は誰一人わからなかった。実は存在しないのではないか?

ここで私は悩んだ。彼との繋がりを強化すべきか?これは女神の前髪なのか?と。

 

私は彼との繋がりを作ることを決断した。

それに約束もあるしな……

 

……足音が近づいてくる。玲治君の父親が帰ってきた。

 

襖が開く前に、我々は雑談を再開する。

 

 

「本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。」

玲治君の両親が頭を下げ。待たせているタクシーに乗る。

 

「親族となるのですから、そこまで畏まらなくてもいいんですよ。

いつでも連絡をおまちしておりますぞ。

 

……では、玲治君とウチの春華との顔合わせ日程について、別途秘書から連絡させますのでよろしくお願いいたします」

 

何度も頭を下げる玲治君の両親を笑顔で見送る。

そしてタクシーの姿が見えなくなれば、踵を返し目の前に滑り込んでくる車に乗り込む。

運転手が車を発信させると、横に乗る秘書に問う。

 

「で、何かわかったか?」

 

問えば、響くような回答をよこす。

 

「はい、まずは……今回の襲撃に関してですが、出入りの萩原造園社長、萩原壮蔵氏が行方不明です。

また、最後に出入りした社員の三浦氏が、死体となって発見されたと県警から情報を貰っております。」

 

知らぬ仲では無い人物が、死んだという情報は長き人生似た様な事があったとはいえ心にくるものだ。

行方不明の社長も生きてはいまい。彼は事件が起きたからといって逃げる人物ではなかった。

 

「そうか、萩原さんのところは先々代からの付き合いだ、手当をしておいてくれ」

 

「分かりました。」

 

「他はどうかね」

何事かを手帳に書き込む秘書に続きを促す。

 

「県警は、一月ほど前から何度か萩原造園を訪れていた40代と見られる男性を殺人事件の容疑者として指名手配する模様です」

 

「警察は単独犯だと?」

 

「いえ、単独、複数犯の両面から捜査するようですが、ホシにつながる人物はその男だと」

さすがに結論を急ぎすぎたか。私も知り合いが殺されたことで動転しているのかもしれない。

心中でごまかしつつ、話を変える。

 

「表向きの発表はいつ行うと」

 

「明日10時から〇〇警察署で行われます。

東藤家宅に40代の男性が侵入、在宅していた東藤草史郎氏を、持っていた凶器で加害を試み、東藤草史郎ともみ合った結果、通報を受け駆け付けた警察に気づき逃走。現在捜査中。

というストーリーになる予定です。」

 

「ふむ……」

 

事件から一週間たっている。普通だったら翌日か翌々日には警察発表があるのが当然だろう。

ゆえに遅くなったことを非難されるだろうし、何かあったのだろうと痛くもない腹を探られるだろう。

だが、『正体不明の化け物が暴れた、警察では手も足も出なかった』とは言えないのだ。

県下の人心の安寧、私と警察のメンツの為に。

 

考え込む私に秘書が声をかけづらそうにする

「オカルトのほうですが・・・」

 

「何がわかったのだ」

 

「敷地内の4隅に箱状のものが埋められていたようです。警察は証拠物件として押収しているようですが、

中身については慎重に取り出すそうです。

また、署長のほうから安全のため霊能力者を派遣して欲しいと・・・・・・」

 

「そして事件前日に三浦氏が庭の手入れをしていた際に敷地中央に何かを埋めていたと使用人からの報告があります。」

 

爆弾・・・・・・いやある意味爆弾よりたちが悪いものが埋められたかもしれない。

 

「使用人が声をかけたころ、木が悪くなる兆候があるため掘って根を見ていると言ったそうです。

使用人も忙しいためかそれ以上追及しなかったそうで、

ただ・・・・・・気になった点として、道具と一緒に壷が置いてあったとか。」

 

「それは警察には話したのか」

 

「三浦氏の動向に関する細かい話は聞かれなかったそうで、怪しい人物が居たかどうかが中心だったとか」

 

警察には三浦の件は、怨恨か脅されかの方に焦点が向いていると見える……

どちらにせよ捜査線上に浮かんでいる男を探してもらわなければならんか……

 

「警察にその木の根元の話をし、掘り返してくれ

 

ああ、私の知ってる霊能力者……場合によってはまた【ガイア連合】に頼むかもしれないがまずはそちらの人からだ」

 

まだ…まだガイア連合に踏み込みすぎては行けない。

【信用】と【信頼】は積み上がっていっているが、まだそこまで踏み込むべきではない。

 

 

自宅近くのホテルに付く。自宅は現在警察が捜査中であれこれやっている。

住むのはいささか難しい為しばらく1フロア借りているのだ。

 

秘書と別れエントランスへ入る。

 

息子はあの事件後救急車で病院に運ばれた。

が、玲治君が怪異を倒した後、癒やした(ディア)という。

息子の嫁から聞いたところによれば、手をかざすと薄っすらと光り、体中の傷や腫れが引いていったとか……

信じられない話だが、病院からは息子の体になんら異常は無いと連絡が合ったし、面会した息子は元気そうではあった。

 

それだけで誰でも親族に欲しくなる力をもっているなと考えながら、エレベーターを通り部屋へと足を向ける。

派遣されている警官が見えるので会釈しておく。

 

息子は大丈夫だと言っていたが、しばらく療養してもらう。

体の傷は治っても心まではわからない。

息子の嫁も夫が嬲られた事でだいぶ情緒不安定になったためカウンセリング中だ。

復帰にはしばらくかかるもしれないが、同情を引くという意味では必要経費かもしれない。

 

扉を開ければ孫娘が出迎えてくれる。

孫のほうはまだ学校か……

「おかえりなさいませ、お祖父様」

 

「ああ、ただいま。」

 

「ちゃんとやってくれましたか?」

 

「ああ、予定通りだよ」

 

─────────────────────────────────────────

 

東藤 春華

20XY年7月XX日

G県YY市 ホテル

 

お祖父様が帰ってきた。ホテルは嫌いではないがいささか飽きてきたところだ。

 

事件があった為か、早めに学校から帰され、そしてお稽古ごとも全てしばらくはお休みだ。

出かけることができないし、テレビは面白くなく、自室であればあれこれあるのだが、突然連れてこられたので何も無い。

お父様もお母様も病院で話し相手も居ない。お祖父様は楔をうちに、お祖母様はお父様とお母様が抜けた穴を塞ぐため挨拶まわりに。

宿題などのやることが終われば、ボケーっとするしかない。

 

だがお祖父様が帰ってきたのであれば話は別だ。

「おかえりなさいませ、お祖父様」

 

「ああ、ただいま」

 

「ちゃんとやってくれましたか?」

 

「ああ、予定通りだよ」

 

「ああ、良かった……」

私は感極まった。そう、彼との婚約は私の意思でもある。

 

 

あの日は、珍しくお父様が早く帰ってこられ、私も早かったので、お母様と一緒にお茶をしていた。

何時頃か…午後2時から3時前くらいだったと思うけれども、突然窓の外の色が変わった。

実際には空に膜状の何かが覆ったのだと思う。後からの話では結界が当家を覆っていのだとか。

その時はお祖父様も帰路だったらしく、15分程度事件の発生が遅れれば巻き込まれていたかもしれない。

 

膜に覆われたのを見て、お父様が少し確認してくると言って席を立ち、吹き飛ばされる形で戻ってくるまで数分しか立っていなかったと思う。

 

奇妙な出で立ちの武者?が入って来て、お父様を踏みつけ蹴り飛ばしているのを見せられ、お母様が悲鳴をあげた。

自分の夫が為す術もなく傷つけられればそうもなろうというもの。

お母様は私を掻き抱き部屋の隅へ逃れる。だがそこから動けなくなってしまった。恐怖で腰が抜けてしまったのか。

 

お母様によって掻き抱かれた私はなぜか冷静だった。死に瀕したからか?それとも現実と捉えられなかったからか?……わからない。

ただ、あんなのにも力強かったお父様を簡単に蹂躙できる存在に……心の一部がすごい!面白い!と思ってしまった。

恥ずべきことではある。自分を殺せそうな存在をそう思ってしまうなんて。

 

その後お父様を嬲り続けていた武者は、飼い犬である小次郎が飛びかかったきたのを一刀のもと切り捨てた。

かわいそうな小次郎。お父様の危地に駆けつけたのに……

 

その後も何故かお父様を殺さず、嬲っていたのだろう。もしかしたら恐怖が欲しかったのかもしれない。

小次郎を一撃で殺せるのであれば、私達親子なんて造作もなく殺せるはずだから。

 

そうして30分から1時間くらいたっただろうか。

お父様はもはや動けず、ボロ雑巾とでもいうべき状態に成り果ててしまった。

 

武者は飽きたのか、嬲るのを止めこちらを見る。次の獲物は私達なのか。

お母様の掻き抱く力が増し、ある種の覚悟を決めた時、武者の後ろから斬りかかるものが居た。

 

錯覚なのだろうけど、私には光り輝いて見えた。

動悸の高まりを感じ、彼の姿に目が行ってしまう。

 

それからの死闘はすごいものだった。

お互い見えないほどの速度で武器をふりあっていた。

お祖父様が見ている時代劇の殺陣よりアニメの表現みたい。

離れているはずの私にすら空気の動きを感じるほど。

 

死闘が終わり武者が霧のように消えていく。

 

彼が振り向き声をかけてくる。

「あっ大丈夫でした?」

 

気が抜ける。殺し合いをしたはずなのに道端であったような声色だ。

粗相した匂いがする。お母様は気絶してしまったようだ。

 

「え、ええ…大丈夫だったけど

 

あっお父様が!」

 

ひどい有様のお父様見える。生きているのだろうか。

彼が近寄り体に手を当てる。

 

「あー こりゃひどい」

 

彼の手から淡い光が漏れる。

 

「ディア」

 

お父様の体に光が吸い込まれ……

先程のひどい有様の体が治っている。これが奇跡なの?

 

「そ、そのありがとうございます。」

 

「あ、どうも。でも、まあ、仕事だから気にしないでください」

 

彼と頭を下げ合う。

なんとも力を持った人とは思えない普通の人に見える。

 

入り口の方から音が聞こえる。いつの間にか膜は無くなり。

警察の方々が飛び込んでくる。

 

その後は私達家族は保護され、救急車で病院へ。

彼はお祖父様となにかを話していたのが最後に見た姿だった。

 

 

また会いたいなってその時は思った。多分これは一目惚れ。

だから私はお祖父様に頼んだのだ。婚約させてくれないかと。

彼は高校2年で私は小学5年、6歳も離れているのだ。

放っておけばどこかで彼女ができてしまうだろう。そんなことは認められない。

 

彼と一緒になれば……詰まらなかった人生に色が付くだろう。

お父様とお母様のいい子でおり、誰かに嫁ぐ人生は、安定しているが面白くはない人生、そんなのはまっぴらごめん。

このチャンスを逃してはだめと自分を叱咤する。

 

何も言わない私にお祖父様は声をかける。

「本当に良かったのかい」

 

「ええ、お父様もお母様も反対するでしょう。当然よね、娘がよくわからない男と婚約だなんて反対するに決まってるわ」

 

「あの実力を見ても……確かに彼の家柄は褒められたものではないな」

 

「でしょう。でもお祖父様も賛成なされたじゃない。彼の力はこれから我が家に幸をもたらすだろうって」

 

「だが……」

 

「お祖父様らしくないわ。即断即決で鳴らしてきた方なのでしょう?」

 

「ふっ、まあそうだな。だが千代(祖母)草治(息子)小百合君(息子の嫁)に説明しなくてはならんが……気が重いな」

しかめっ面になるお祖父様。ある意味家族にだけ見せる顔だ。

 

「ご苦労をおかけしますお祖父様」

そう言って私は深々と頭を下げる。

 

 

─────────────────────────────────────────

 

???

20XY年7月XX日

東京

 

「県警は、一月ほど前から何度か萩原造園を訪れていた40代と見られる男性を殺人事件の容疑者として指名手配したとのことです。

 

では次のニュースです……」

 

自分が手配されているニュースを見ながら、セーフハウスから這い出るように出る。

陽の光が眩しい。ここに逃げてきてからあまり外出できていない。

 

体の節々が痛い。あの仕事が失敗に終わるとは思わなかった。

リンクした悪魔が消滅したときのフィードバックが体を蝕んでいる。

 

元の体調に戻るにはしばらくかかるだろうが……

ターゲットだったあの人物が俺に気づき、手を伸ばしてくるかは分からないが、しばらくは静かにするしかないだろう。

仕事を失敗したという評判がついて回るのも苦々しい。

気分は最悪だし、新しい顔にするにもずいぶん金が掛かった。

成功していれば気持ちよく高跳びできたかもしれんのにな。

 

自分で言うのもなんだが、あの仕事の流れは完璧だった。

態々出入りの業者を調べ、一時的な洗脳の上、呪物を運びこませた。

依頼人が用意した遺灰を芯として用い、式の4隅に埋めた、呪物と化した装備品達と共に悪魔と見立たてる事によって召喚。

俺の血を混ぜ込んでおいた遺灰によって操ることができた。

 

世界最強とは言わないが、相当に強かったはずだ。

俺の知ってる限り倒せるやつは数えるほどだし、あの根願寺ですらそうそう倒せやしない。

 

そういやあの依頼人は、なんで家族を嬲る依頼をしたのか。

旦那だけで時間切れしてしまったが……遊びすぎたかもしれん。

どうにもリンクしていたからか、人が放つ恐怖を美味く感じてしまったのがよくなかった。

ついつい時間をかけて嬲ってしまった。

 

突入してきた警官達は他の悪魔でどうとでもなった……

だが突入してきたあのガキのせいで何もかもパーだ。

 

少なくとも1~2時間で来れる所に、あんな手練がいるはずがねえ。

一応しらべた感じじゃ大したヤツはあの県に居ないはずだった。

偶然か……それとも依頼人の裏切りか?

 

まあいい、失敗は失敗だ。

 

この落とし前をつけ、俺のドン底になった評判を回復しなけりゃならねえ。

さて……どうするか。

 

 

 




変な奴に目をつけられた主人公の明日はどっちだ。
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