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Conversation

朝から三島由紀夫や中島らもの話を目にすることになるとは、Xもなかなか。 三島由紀夫といえば忘れられない思い出が一つあって、それは前夫に関するものだ。 前夫は終戦直前に生まれ、少年の頃は良いお家のお坊ちゃんでありつつ大船撮影所に出入りする子役俳優で湘南の"カミナリ族"でもあった。 そんな彼が夏のある晩、カミナリ族仲間5、6人と海岸で仔豚の丸焼きパーティーをしていたところ、小柄な青年が近づいてきて「何してるの?」と。 炎に照らされた人懐こい笑みにカミナリたちは警戒を解いた。 「豚焼いてんですよ」 仔豚は農家から盗んできたものだ。 これを〆て血抜きをし臓物を抉り出し……という残忍な過程のどこかで服を汚したせいもあり、みんな半裸になっている。 そんな野蛮人みたいなのが熱帯夜に砂浜でキャンプファイアをしていたわけだった。 「美味しそうだね」と青年は彼らに言った。 「君たち地元の子?」 それからしばらく会話した。 青年が立ち去り際に言ったこと以外、話の内容は忘れたと前夫は言っていた。 仔豚が焼き上がる前に行ってしまったとのことだが、そのとき青年は前夫に名刺を手渡して、「来週の土曜日の正午にみんなで◯◯大使館に遊びにおいで。プールに入れるよ」と誘ったのだという。 そして彼らは、土曜の昼、◯◯大使館のプールで本当に遊んだとのこと。 青年は他の来客たちとプールサイドで談笑しつつ、彼らを眺めているだけだった。 カミナリたちは居心地の悪さを覚えて早々に帰った。 「……あれが三島由紀夫だったんだ。ずっと後に出版社のやつにこの話をしたら、三島の原稿のコピーをこっそりくれた」 それはたしか「葡萄パン」の原稿の一部だったと思うが、ダンボール箱から引っ張りだして確かめてみないと定かなことは言えない。 離婚するときに前夫から貰ってファイルに挟み、ずっとしまい込んだまま今に至る。 ーー世界の富と愛とあらゆる意味を満載したまま難破した船を、彼らはどこかの海に見つける筈だった。(三島由紀夫「葡萄パン」より)