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「思考が深い」とは何かを言語化してみた
「あの人は思考が深い」と言われる人が、職場に一人くらいいると思います。
会議の冒頭10分くらいは沈黙しているのに、急に口を開いたかと思いきや、鋭い発言をして会議の主導権を握ってしまう。 後輩が相談すると「ちょっと待って、そもそもさ」と返してきて、相談した側が「あ、自分が何に悩んでたか今わかりました」となる。
うらやましき、思考が深い人。
一方で、「思考が深い」とは具体的に何をやっているのか言語化できる人は、驚くほど少ないです。 「頭の回転が速い」とは違う。 「知識が多い」とも違う。 「ロジカル」という言葉は近いけど、それだけでは説明しきれない。 もっと手前の、もっと地味な何かがある。
※ちなみに「頭の回転が速い」は、以前こちらに整理いたしました。
もとやま
@ysk_motoyama
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「頭の回転が速い」とはどんな状態か?
話の理解がやたらと早い。1を聞いて10わかっている、あの感じ。 何を質問しても「あ、それは、こういうことです」と即答してくる、あの感じ。 いわゆる、頭の回転が速い、あの感じ。...
でも、ある日ふと気になったことがあって。
ChatGPTで「Thinking」を選んだときに出る、左下のやつ。
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ほら、見てみて。 「深い思考」って書いてある。
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てことは、この「深い思考」を選んだときにどんな処理を行っているのか、処理している張本人であるChatGPT Thinkingさんに聞けばいい。 「深い思考って、なんすか?」
そしたら、いろいろ小難しいことを言ってきたわけですが、僕なりに整理すると次の5つの手順が「深い思考」の手順だとわかりました。
  1. 問いを正しく捉えなおす
  2. 何をどの順番で考えるか、解き方を組み立てる
  3. 決め打ちせず「仮の答え」の候補を並べて比べる
  4. 仮の答えが合っているか、妥当性チェックを繰り返す
  5. 分かる範囲と分からない範囲を分けて示す
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全部「当たり前じゃん」と思ったでしょう。 僕もそう思います。 でも「当たり前のことを当たり前にやる」が一番難しいという話は、たぶん皆さんが一番よくご存じのはず。
ここからは、5つそれぞれについて「深い人」と「浅い人」が何をやっているかを、職場で実際に起きているであろう生々しい場面とともに書いていきます。 自分の胸に手を当てて読んでいただけると、たぶん一番心に刺さって、学びが刻み込まれるはず。 僕も書きながら何度か胸が痛くなりました。

①問いを正しく捉えなおす

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思考が浅い人は「脊髄反射」で問いに答えようとする

上司から「競合A社の最新サービスを調べてまとめて」と言われます。
真面目な人ほど、ここで即座に動き始めます。A社のプレスリリースを読み、サービス概要・料金・機能をきれいな比較表にまとめ、出典まで丁寧に記載して提出する。 所要時間4時間。なかなかの力作です。
上司はそれを受け取って、3秒スライドを眺めた後、こう言います。
「…で、うちはどうすればいいの?」
この瞬間の絶望、経験したことがある人は少なくないはずです。
本人としては「調べろって言われたから調べたんですけど」と思う。 でも上司が知りたかったのは「A社の動きを踏まえて、うちの戦略をどう修正すべきか」だった。 依頼の文面を100%正確に実行した結果、0%求められていないものが出てきた。 もちろん上司の指示が曖昧だったから、こうなってしまったとも言えます。 ただ、上司の指示力はコントロール不能なので、己の「問いの受け取り方」を変えるしか、現実的にはあまりやりようがありません。

思考が深い人は「そもそも何を解くべきか」を疑う

思考が深い人は、さっきと同じ「競合A社を調べて」を受けたとして、そのまま「わかりました」と受け取ることはしません。
「これ、何の判断に使いますか?次の企画会議でうちの価格を見直すかどうかの材料ですか?それとも営業トークの差別化ポイントを整理したい話ですか?」
上司は「あ、来月の価格改定の議論に使いたい」と返す。
この数十秒のやりとりで、調べるべきことが「A社のサービス概要」から「A社の価格体系と、うちとの差分が顧客の意思決定にどう影響するか」に変わります。 作業に同じ4時間を使っても、出てくるものがまるで違う。
安宅和人さんは『イシューからはじめよ』で、知的生産の出発点は「解くべき問いの質を上げること」だと書いています。
これは割と昨今では常識とされている話ですが、常識とされているわりに実践している人は体感で2割くらいです。 残りの8割は「とりあえず手を動かす」をやっている。 手を動かすこと自体は悪くないんですが、方向が間違っていると「頑張ったのに成果が出ない」という最も報われない結果になります。
問いの設定が雑なまま走ると、どれだけ精緻に分析しても的を外す。 逆に、問いさえ正しく置ければ答えの半分は見えている。
残酷なことに、仕事の出来不出来は、作業を始める前にほぼ決まっています。

②何をどの順番で考えるか、解き方を組み立てる

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思考が浅い人は「場当たり的」に手を動かす

例えば「来期の採用計画を考えてほしい」と言われたとしましょう。
まずリクナビの市場レポートを読む。 次にたまたま目に入った他社の採用ページを見る。 面白そうな記事を見つけて「最近はリファラル採用がいいらしい」と知る。 さらに調べる。 「ダイレクトリクルーティングも良さそうだな」。 YouTubeで採用コンサルの動画も見てみる。 なるほどなるほど。
3日後、上司に報告します。
「リファラル採用を強化すべきだと思います」
上司は言います。 「で、何人必要で、いつまでに、どの職種を、どのチャネルで採るの?」
沈黙。
「えっと…まずはリファラルがいいっていう話をしたかったんですけど…」
3日間、何をしていたのか。 何もしていなかったわけじゃない。 むしろずっと「調べて」いた。 でも、「何を調べれば採用計画が完成するか」を決めないまま走ったので、情報の海でサーフィンしていただけだった。 本人は「インプットが足りない」と思っていたけれど、実際に足りなかったのはインプットではなく「問いの解き方」です。
この現象、心当たりがある人は正直に手を挙げてください。僕は挙げます。 何なら両手を挙げます。

思考が深い人は「解き方」を先に設計する

同じ依頼を受けたとき、まずA4の紙を出して5行だけ書きます。
①来期の事業目標に対して必要な人員数は? ②現メンバーの退職見込みは? ③不足数(=純増必要数)はいくつ? ④職種ごとの採用難易度と使えるチャネルは? ⑤スケジュールの逆算
この5行が揃えば、採用計画と呼べる。 揃わなければ、どんなに調べても感想にしかならない。
この設計図があると、途中で「リファラル採用が良いらしい」という情報に出会っても、それは④の一要素として位置づけられます。 全体の骨格があるから個別の情報に振り回されない。同じ3日間で、意思決定可能な計画案が出てくる。
要するに「いきなり考えるな、考え方を先に考えろ」ということなんですが、これができない最大の理由は「考え方を考えている時間が、何も進んでいないように感じるから」です。上司の目の前でネットを開いて記事を読んでいれば「仕事してる感」が出る。 でもA4の紙に5行書いてじっと考えている姿は、傍から見ると「何もしていない人」に見える。 というか、そう見られるのが怖い。
でも、こうやって作業の引力に抗って、立ち止まって解き方を考えられる人が、何だかんだ成果を出してきます。
まずはPCではなく、紙とペンを持つところから。
これを基本動作にしてみてもよいんじゃないかと。

③決め打ちせず「仮の答え」の候補を並べて比べる

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思考が浅い人は「最初の案」に飛びつく

チームの定例会議が形骸化しています。毎週月曜10時に集まるけど、誰も特に話すことがない。 「何かありますか?」「特にないです」が3回続いて解散。
さすがにまずいね、という話になります。 そこで、誰かが言います。
「アジェンダを事前共有すればいいんじゃない?」
全員:「それだ!」
翌週からアジェンダ事前共有ルールが導入されます。 Googleドキュメントのテンプレートまで作る。 やる気に満ちている。
2週間後。誰もアジェンダを書いてこない。
「やっぱりみんな忙しいよね」で元に戻る。
…って出来事に、以前出くわしました。
この問題の根本は「最初に出た案がそれっぽかったので、他の選択肢を検討しなかった」ことにあります。 「会議が形骸化している」に対する打ち手は他にもあったはずです。
頻度を変える。 参加者を絞る。 会議自体をやめてSlackに移す。
でも最初の案で「解決した気分」になってしまった。
ダニエル・カーネマンが『ファスト&スロー』で示した確証バイアスそのものです。 人間は一つの仮説を思いつくと、それを正当化する情報ばかり集めて「やっぱりこれだ」と確信を深める。 しかも無自覚に。

思考が深い人は「ちゃんと選択肢」を並べる

思考が深い人は、同じ問題に対して、こう切り出します。
「いくつかやり方があると思うから、一回並べてみない?」
ホワイトボードに3行書く。
  • A案:アジェンダ事前共有を義務化する
  • B案:定例を隔週にして、1回の密度を上げる
  • C案:定例を廃止して、Slackの非同期レポートに切り替える
そしてそれぞれについて「運用コスト」「情報共有の質」「メンバーの負担感」で比較する。 この作業は10分で終わります。 たった10分。
すると議論がちゃんと前に進みます。 「うちリモート多いからC案が現実的かも」 「いや新人がいるから週1の同期は残したい、B案で試そう」 最終的にB案になったとして、「A案しか検討しなかったチーム」と「3案を比較したうえでB案を選んだチーム」では、納得感も修正力もまるで違います。
チップ・ハースとダン・ハースの『決定力!』でも、「意思決定の質を下げる最大の要因は、最初に思いついた一つの案に飛びつくこと」だと述べています。
ただですね、 会議で「他の案も考えてみませんか?」と言う人は、だいたい面倒くさがられます。 「もう決まりかけてたのに」 「話が長くなる」 という空気を肌で感じることになると思います。
でも、その10分を惜しんだ結果が「2週間後に元に戻る」なわけです。 どちらが本当の時間のムダかは、冷静に考えれば明らかです。

④仮の答えが合っているか、妥当性チェックを繰り返す

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思考が浅い人は「都合のいい根拠」が見つかったら思考を止める

新しい社内ツールの導入を検討しています。
担当者がベンダーのWebサイトを見ます。 導入事例を3つ読みます。 「売上30%アップ!」 「業務効率が2倍に!」 すごい。上司にこう報告します。
「他社でも成果が出ているので、導入すべきです」
上司が「うちの規模で使えるの?」と聞くと、「事例の会社も同規模です」と返す。
ここで一つ聞いていいですか。 ベンダーのWebサイトに「導入して失敗しました」という事例が載ると思いますか?
載るわけないんです。 ベンダーのサイトに載っている事例は、うまくいったケースを選別して、さらに数字を一番良く見える角度から切り取ったものです。 それを「根拠」と呼ぶのは、裁判で被告の証言だけ聞いて判決を出すようなものです。
で、半年後。 「思っていたのと違った」 「現場が使いこなせない」 「結局Excel に戻った」 あるあるすぎて笑えない。

思考が深い人は「都合の悪い情報」も照合して何度も検証する

では、思考が深い人は、どのようにして仮説が合っているかを確かめるのか。
続きは、こちらのnoteで解説していますので、よろしければ立ち寄っていただけますと嬉しいです。
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