組織の「隙間」を埋める人が強すぎる
真面目にスキルを磨いているのに、なぜか社内政治が上手いだけの「あいつ」が出世していく。 そんな理不尽を感じたことはないでしょうか。
多くの人はこれを「組織が腐っているからだ」と嘆きますが、社会学の視点で見ると少し違います。
単に攻略するゲームのルールを間違えているだけです。
ミシェル・クロジエとロナルド・バート。
この2人の社会学者の理論を借りれば、組織には明確な攻略ルートが存在します。
それは、真正面から成果を出すことではなく、組織の「隙間」をハックすること。
今日は、社畜として使い潰されずに、最小の労力で組織に重宝してもらえる「隙間の制し方」について書きます。
「スキル一本槍」だともったいない
まず前提として、「専門スキル」さえあれば安泰という考え方は、現代の組織では少し危険です。
もちろん、スキルは重要です。
プログラミングができる、
英語ができる、
財務がわかる。
これらはビジネスパーソンとしての参加チケット的なもので、なくてはならないものです。 しかし、参加チケットを持っている人は山ほどいます。
スキルが高い人は市場に溢れており、そこは常に競争が激しいレッドオーシャンです。
上には上がいますし、技術の陳腐化も早い。
つまり、スキルだけで組織内の優位性を保とうとするのは、維持コストがかかる割に、リターンが逓減しやすい「コスパの悪い戦い」になりがちです。
一方で、組織には「誰もやりたがらないが、誰かがやらないと組織が死ぬ仕事=隙間」が必ず存在します。
この隙間を埋める人材は、スキルの高さに関係なく、構造的に「代わりが効かない」状態になります。
正面突破ではなく、この隙間を狙うのが、賢い生存戦略ともいえます。
組織には2つの隙間がある
隙間にも2種類ありまして、
- タスクの隙間:誰もやりたがらない曖昧な仕事
- ヒトの隙間:部署と部署の間の断絶
この2つの隙間を埋めることができる人材って、すごく少ないんですよね。
役割定義からもマニュアルからもはみ出る仕事が多いので、気づきにくいし、埋めるのも難しい。
ってことで、この2つの隙間について、もう少し詳しく説明してみます。
タスクの隙間を埋める
フランスの社会学者クロジエは、官僚組織の研究から「不確実性を制御する奴が一番えらい」という真理を導き出しました。
たとえば組織社会学者のミシェル・クロジエは、合理性を意図して設計された官僚組織でさえもすべての状況をカバーする明確なルールを定めることは不可能であり、「例外」や「曖昧な状況」が必ず発生する、と述べました。そしてクロジエは、このような例外的状況や曖昧さが生じたときに、その「空白」を埋めるための判断や行動をする人が実質的な権力を持ちうる、と主張しました。 『社内政治の科学』より
組織は「マニュアル」と「ルーチン」で動きたがります。
しかし、現実には必ずマニュアル外のトラブル(=不確実性)が起きます。
- 原因不明のシステムエラー
- 部署間の押し付け合いで宙に浮いたボール
- 誰も正解を知らないクレーム対応
普通の人はここから逃げるんですよ。
「私の仕事じゃありません」
「指示をください」
とか言って、ルールの内側に引きこもろうとします。
だからこそ、ここが狙い目です。
みんなが「正解がない」と恐れる場所で、「あ、それ私がやっておきますよ」と手を挙げる。
あるいは、誰も直し方を知らない旧式の機械を、バンと叩いて直してしまう。
その瞬間、その領域においてあなたは「ルール」になります。
上司であっても、その「不確実なトラブル」を解決できるのがあなたしかいなければ、あなたに命令することはできず、逆に「頼む、なんとかしてくれ」と頭を下げるしかなくなる。
これがクロジエの言う「不確実性の制御による権力」です。
「でも、それってただの雑用係になりませんか?」 そう思うかもしれません。
これは違っていて。
雑用係は「誰でもできる仕事」を押し付けられている人です。
ここで言うタスクの隙間とは、「誰も対処法を知らない、あるいは責任を取りたくない問題」のこと。
解決策が不明確なカオスな状況で、暫定的にでも答えを出せる人。
このポジションを取ると、組織内でのあなたの依存度は跳ね上がります。
コスパよく「重宝される」ための第一歩は、綺麗な定型業務ではなく、泥臭い「グレーゾーン」を拾いに行くことです。
ヒトの隙間を埋める
二つ目は、「ヒトの隙間」です。
ここで登場するのがロナルド・バートの「構造的空隙」という概念。
直訳すると、構造的な穴なのですが、要はネットワークの隙間のことです。
会社には、営業部・開発部・経理部といった部署があります。
それぞれの部署は、効率を高めるために内部での結束を強めます。
専門用語を使い、阿吽の呼吸で仕事をするようになる。
すると何が起きるか?
隣の部署となのに、言葉が通じなくなるのです。
営業は「客が欲しいって言ってるんだから作れよ」と思い、開発は「技術的に無理なものを安請け合いしてくるな」と怒る。
この時、営業部という集団と、開発部という集団の間には、空隙が生まれています。
情報はここで分断されてしまう。
ロナルド・バート氏曰はく、この空隙をつなぐ位置にいる人間は、情報の流れをコントロールでき、より良いアイデアを生み出せるとのこと。
この概念を図示してみます。
↓のイメージで、「情報システム」「カスタマーサポート」「営業」の3チームがいたとします。
で、営業チームの中心にいるAさんと、隙間にポツンといるBさん、どっちのほうが有益な情報が集まる存在になりやすいでしょうか?
パット見ると、知り合いがたくさんいる(線がたくさんつながっている)Aさんのほうが情報通に見えます。
でも、Aさんには、営業チームの情報ばかりが入ってくる。
一方のBさんには、3チームの情報が集まってくる。
したがって、隙間を制する人材になるためには、Aさんではなく、Bさんを目指す必要があります。
例えば、あなたが営業部の飲み会にも、開発部のランチにも顔を出せる稀有な存在だとしましょう。
あなたは、営業部で聞いた「顧客の生の声」という情報を、そのまま開発部に持っていくだけで、開発部にとっては「革新的なインサイト」として歓迎されます。
逆もまた然りです。
情報は、同じ集団の中で回していても価値が増えません。
しかし、ある集団にとっては「当たり前」の情報を、別の集団(断絶した向こう側)に持ち込むと、突然「価値ある情報」に化けるのです。
これを情報の裁定取引と呼びます。
多くの人は、自分の所属する部署の中で、仲間と仲良くすることにリソースを使います。
これを「強い紐帯」と言います。
しかし、組織でコスパよく成功するのは、部署をまたいで「弱いつながり」をたくさん持っている人です。
「あいつ、なんか色んな部署の人と繋がってるよね」
「あいつを通すと、なぜか話が早いよね」
こうなれば勝ちです。
あなたは組織図上の役職に関係なく、情報のハブとして機能し始めます。
隙間を埋めるには、どうすればよいか?
さて、理論は分かりました。
「タスクの隙間」と「ヒトの隙間」。
この2つをどうやって日々の行動に落とし込むか?
続きはnoteに書いておりますので、よろしければ立ち寄っていただけると嬉しいです。
Want to publish your own Article?
Upgrade to Premium