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「公益通報」を問う

警笛を鳴らし、組織の不正を暴く公益通報。通報者が「裏切り者」として報復されるケースが相次いでいます。その実態に迫り、制度のあり方を考えます。

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「家族も巻き込むのか」 通報後に巨額の賠償請求、よぎった後悔

 
 

 裁判所から届いた訴状を見て、埼玉県に住む青木智義さん(51)は目を疑った。

 「4130万円を支払え」

 退職したばかりの勤務先が巨額の損害賠償を請求する裁判を起こしてきたのだ。社内の不正を疑い、行政へ通報してから5カ月後のことだった。

 4人の子どものうち、上の2人は社会人になって家を出ているが、下の2人はまだ中高生。家のローンはまだ残っているし、教育費もまだまだかかる。

 子どもに進学を諦めさせるのは絶対に避けたい。

 専業主婦として家庭を支える妻は「こんな額、払えるわけがない」と絶句した。

 妻の姿を見て、通報を後悔する気持ちが一瞬、胸をよぎった。

 「大金を失うかもしれず、家族も巻き込まれるなんて……。通報なんてしなければよかった」

ヘッドハントされた職場での違和感

 社会福祉士の青木さんは2024年4月、障害者が共同生活を送るグループホームなどを運営する「日本リメイク」(さいたま市)にヘッドハンティングされ、役員に就任した。

 四半世紀以上、社会福祉法人で障害者福祉に携わってきた現場経験を評価され、グループホームの現場統括を任された。

 会計処理に違和感を覚えたのは、その会社に移ってすぐだった。

 帳簿類がなく、請求に関する書類は十分に整理されていなかった。

 ちょうど同じ頃、グループホームの運営大手である「恵(めぐみ)」(東京都)で利用者からの食材費過大徴収などが発覚し、大きな問題となっていた。

 埼玉県も、県内の施設を対象に自主的な調査を求める通知を出してきた。

過大徴収額を試算

 青木さんが会計書類を調べたところ、食材料費や日用品費、光熱水費の収支が合わない。利用者から徴収した額が実際の支出を上回った。

 22、23年度の2年間で過大徴収が疑われる金額が1000万円を超えると試算されたが、その差額の使途は分からなかった。

 返還が必要になるとみられる利用者には、すでに退所したり亡くなったりした人も含まれていた。

 さらに、夜間の見守り体制に人員を配置した事業者に支払われる「夜間支援等体制加算」についても、必要な職員配置を満たさないまま自治体から報酬を受け取っている疑いが浮上した。

 長年、障害者福祉の現場で働いてきた青木さんには見過ごせなかった。

 「障害のある人は自分の不利益を訴えることが難しい。そんな人たちの大切なお金は正しく使われていないといけない」

 前任者に代わって経理を担当するようになり、利用者への請求金額を適切にすることで負担を減らしてほしいと取締役会で提案した。

通報後、動いた行政

 ところが、青木さんによると、その場で社長は「なぜ売り上げが落ちるようなことをするのか」と取り合わなかったという。

 この後、裁判で会社と闘うことになる青木さんは組織と個人の力の差を実感することになります。その支えとなったものは、記事の後半で。

 その…

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