二次創作ガイドラインが散らばりすぎているので、横断検索できるサイトを作った
ある日、ファンアートを描こうとして手が止まった
好きなゲームのファンアートを描こうとした。ラフまで描いて、色も塗って、あとは投稿するだけ。
……でもふと不安になった。「これ、公式的にOKなんだっけ?」
ガイドラインを探す。公式サイトのトップページには見当たらない。「利用規約」を開いてみるが、二次創作については何も書かれていない。サポートページのFAQを漁ると、PDFのリンクがひとつ見つかった。開いてみると、法律用語だらけの文書が3ページ。読み解くのに10分かかった。
結局、描いたイラストはその日投稿できなかった。
これが一作品だけならまだいい。でも、好きな作品が複数あると、その度にこの作業を繰り返すことになる。しかもガイドラインの書き方は企業によってバラバラだ。「二次創作ガイドライン」というタイトルで独立したページを設けているところもあれば、利用規約の第12条あたりにひっそり書いてあるところもある。
この状況をなんとかしたかった。
40作品のガイドラインを調べてわかった「現実」
サイトを作るにあたって、まずゲーム・VTuber・アニメ・マンガなど40の作品・IPのガイドラインを片っ端から調べた。
調査したのは「イラスト」「同人誌」「動画配信」「グッズ」「AI利用」など8つの権利タイプについて、それぞれ「OK」「条件付き」「禁止」「記載なし」のどれに該当するかだ。
地道な作業だったが、全体を俯瞰してみると、いくつかの意外な事実が浮かび上がってきた。
発見1:グッズ販売は「禁止」か「記載なし」がほとんど
BOOTHやSUZURIでファングッズを販売している人は多い。アクリルスタンド、ステッカー、缶バッジ。即売会でも当たり前のように並んでいる。
しかし、調べてみると、グッズ販売を明確に「OK」としている作品はかなり少なかった。多くは「条件付き(個人の範囲で、営利目的でなければ)」か、そもそも「記載なし」。そして一部の作品ははっきりと「禁止」と書いている。
ファンの間では「まあ大丈夫でしょ」という空気があるが、公式の文書を読むと温度差がある。これは知っておいたほうがいい事実だと思う。
発見2:動画配信のルールが企業によって全然違う
ゲーム実況・配信のガイドラインは、企業ごとに驚くほどルールが異なる。
ある企業は「個人の配信者に限りOK、法人はNG」。別の企業は「収益化OK、ただしストーリーのネタバレは発売後○日以降」。また別の企業は「配信ガイドラインはタイトルごとに個別に設定」としていて、ゲームを1本買うたびにガイドラインを確認する必要がある。
実況者にとってこの状況はかなりつらい。「うっかりガイドライン違反で動画を消された」という話はSNS上でも定期的に見かける。
発見3:AI利用について明記している企業はごくわずか
これが一番驚いた発見だった。
AI生成イラストの是非はSNSで毎日のように議論されている。しかし、企業側のガイドラインを見ると、AI利用について何らかの言及をしている作品は40件中ほんの数件しかなかった。
禁止しているわけでもなく、許可しているわけでもない。単に「触れていない」のだ。
AI技術の進化に対して、ガイドラインの整備がまったく追いついていない。ファンもクリエイターも、判断材料がないまま手探りで活動しているのが現状だ。
作ったもの:二次創作ガイドライン.com
こうした課題を少しでも解消するために、「二次創作ガイドライン.com」 というサイトを作った。
https://niji-guidelines.com/
できることはシンプルに3つ。
1. 横断検索 作品名や企業名を入力すれば、該当するガイドラインがすぐ見つかる。公式サイトを何ページもたどる必要はない。
2. 許可状況の比較 イラスト・同人誌・動画・グッズ・AIなど8つのカテゴリごとに、「○(許可)」「△(条件付き)」「×(禁止)」「−(記載なし)」を一覧で確認できる。自分が作りたいものが、推しの作品で認められているのかが一目でわかる。
3. 更新の追跡 ガイドラインはときどき改定される。各ページに「最終確認日」を表示しているので、情報の鮮度がわかる。
現在、ゲーム32件、VTuber4件、音楽・アニメ・キャラクター・マンガを含む計40件を掲載している。
なぜ「まとめサイト」ではなく「検索サイト」にしたのか
最初は、各ガイドラインの全文を転載して読みやすくまとめることも考えた。しかし、それはやめた。
理由は、ガイドラインの著作権は各権利者にあるからだ。全文を転載することは、まさにこのサイトが啓発したい「権利の尊重」に反してしまう。
だから、このサイトでは許可状況を「要約」として掲載し、詳細は必ず公式ガイドラインへのリンクから確認してもらう形にしている。あくまで「探す手間を省くツール」であって、公式の代替になることは目指していない。
技術的な話を少しだけ
興味がある方向けに、技術スタックを簡単に書いておく。
情報収集は基本的に手動だ。各社の公式サイトを巡回して、ガイドラインの内容を確認し、8つの権利タイプに分類する。法的な文書を「○△×」に要約するのが一番難しい部分で、原文のニュアンスを損なわないよう慎重に判断している。
更新確認も定期的に手動で行っている。将来的にはガイドラインページの変更検知を自動化したいが、各社のページ構造がバラバラなので、一筋縄ではいかない。
苦労しているのは「グレーゾーン」の扱いだ。明確に「許可」とも「禁止」とも書いていないケースが実は一番多い。そういう場合は「−(記載なし)」としているが、「記載なし=OK」と誤解されないよう、各ガイドラインの個別ページに注記を添えるようにしている。
これからやりたいこと
サイトはまだ始まったばかりで、やりたいことはたくさんある。
掲載作品の拡充: 現在40件だが、まだまだカバーできていない作品は多い。特にアニメ・マンガ・音楽系はこれから充実させたい。「この作品を追加してほしい」というリクエストは大歓迎。
ガイドライン変更の通知機能: ガイドラインが更新されたときにSNSやメールで通知する仕組み。
英語対応: 日本のIPの二次創作は海外のファンにも需要がある。英語版があれば、海外クリエイターの助けにもなるはず。
最後に
二次創作は、作品への愛から生まれる文化だ。
でも、その愛がときに権利者との摩擦を生んでしまうことがある。それはファンにとっても権利者にとっても不幸なことだと思う。
ガイドラインを読むのは面倒だ。でも、「確認してから描く・作る・配信する」という一手間が、好きな作品と好きな文化を守ることにつながる。
このサイトが、その一手間のハードルを少しでも下げられたらうれしい。
二次創作ガイドライン.com 🔗 https://niji-guidelines.com/ 🐦 X(Twitter): @niji_guidelines
掲載リクエスト・誤りの指摘・ご意見は、サイトのお問い合わせページまたはXのDMからお気軽にどうぞ。


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