総事業費90億円の『果てしなきスカーレット』爆死を「日本発の狂気」の欠如と断じる記事が出回っていますが、これ、少し冷静に考えたほうがいいと思います。
そもそも、ソニーが巨額のP&A費を積んでオスカーを狙いに行くビジネスの座組み自体は正しい。でも、エンタメにおける正しさなんて、観客にとっては最も退屈なスパイスでしかない。細田守という、本来はドロドロした内面を抱えていた才能を「世界仕様」という名の漂白剤で洗い落としてどうするのか?出来上がるのは、ポリコレ検閲を通った「栄養価は高いが味のしない病院食」です。
一方で、MAPPAの100%出資や『ハサウェイ』の執念を「狂気」と呼んで持ち上げるのも、生存バイアス全開の危うい議論です。270億稼げば「経営の勝利」ですが、一歩間違えればスタジオごと消し飛んでいた。この記事のように「狂気こそ正解」と一般化するのは、全ビジネスマンに「全財産をルーレットの赤に賭けろ」と言うに等しい暴論です。
結局、我々が見せられているのは、データを過信した「マーケティングという名の傲慢」と、再生産性を度外視した「博打という名の生存競争」の対比でしかありません。90億円ドブに捨てて学んだのが「ファンを大事にしよう」なんて道徳レベルの話なら、あまりに高すぎる授業料です。
世界をねじ伏せるのはロジックではなく説明不能な「執着」ですが、それを「戦略」として語る時点で、すでにその狂気は死んでいるのではないでしょうか。
総事業費90億円『果てしなきスカーレット』の誤算と『チェンソーマン』『閃光のハサウェイ』が証明した、世界をねじ伏せる「日本発の狂気」という正解
gendai.media/articles/-/163