トランプ政権、アフリカの新生児でB型肝炎ワクチンの実験を計画 WHOが「非倫理的」と非難
反ワクチン政策を進める米トランプ政権が、西アフリカのギニアビサウで新生児を使いB型肝炎ワクチンの人への影響を調べる実験に乗り出そうとしている。計画は地元からの反対で中断されているが、世界保健機関(WHO)は13日、同計画は「非倫理的」などと強く批判する声明を出した。ギニアビサウ国内からも「われわれはモルモットではない」と反対の声が上がっている。トランプ政権の人権意識が改めて問われそうだ。
米政府が助成金を拠出
報道によると、実験は新生児1万4000人を7000人ずつの2グループに分け、1つのグループには出生時に、別のグループには生後6週間の時にB型肝炎ワクチンを接種し、健康への影響を調べるというもの。今年スタートする予定だった。
研究費は主に米保健福祉省が所管する疾病対策センター(CDC)からの助成金で賄われ、研究自体はデンマークの研究者が進める。英BBCニュースによると、保健福祉省はこの研究を利用し、ワクチン接種が人体にどんな影響を及ぼすのか調べようとしているという。
トランプ政権は従来の米政府のワクチン政策を抜本的に見直している。昨年2月には、児童や生徒に新型コロナワクチンの接種を義務付けている教育機関への連邦政府補助金を停止する大統領令に署名。今年1月には、CDCが小児ワクチン接種ガイドラインの大幅見直しを発表し、従来、すべての子どもに接種が推奨されていたB型肝炎ワクチンは、高リスクグループの子どもにのみ推奨、に変更された。
ギニアビサウと米政府で異なる認識
ギニアビサウでの実験計画は昨年11月、ギニアビサウ政府の倫理委員会がいったん承認したものの、1月22日の記者会見でキンヒン・ナントテ保健大臣が「研究の中断」を明言した。国内から激しい反対が起きたためとみられている。
同国のマグダ・ロバロ元保健大臣は英ネイチャー誌の取材に「ギニアビサウ人はモルモットではない」と計画を批判した。
これに対し、米保健福祉省の担当者はネイチャーや英ガーディアン紙の取材に対し、「研究は計画通りに進んでいる」との認識を示した。
新生児が実験の犠牲になる可能性を示唆
こうした中、世界保健機関(WHO)は13日、「ギニアビサウにおけるB型肝炎の出生時投与ワクチン試験計画に関する声明」を発表。「WHOは、ギニアビサウにおけるB型肝炎出生時投与ワクチンに関するランダム化比較試験(RCT)の実施が提案されていることを認識している」とした上で、「この研究の科学的正当性、倫理的保護措置、そして人を対象とする研究に関する確立された原則との全体的な整合性について重大な懸念を抱いている」と述べた。
非倫理的と考える理由を「B型肝炎出生時投与ワクチンは、数十年にわたる使用で安全性が実証されており、母子感染の70~95%を予防する効果があることが知られている。命を救う効果が実証されているB型肝炎出生時投与ワクチンを接種しながら、一部の被験者には接種を差し控えるという研究では、新生児が慢性感染症、肝硬変、肝臓がんなど、深刻で回復不能な可能性のある害にさらされる可能性がある」などと説明している。
WHOによると、ギニアビサウは成人の推定12%超が慢性B型肝炎に罹患。2020年時点の5歳未満児の感染率は約2%で、世界目標の0.1%以下を大幅に上回っている。政府は2024年、B型肝炎ワクチンの出生時接種を正式決定し、2028年までに導入する予定という。
トランプ政権は1月22日、WHOからの正式脱退を発表している。
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